なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

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  私が近くにいた侍女にエルーシアを託すと、侍女とメイドでエルーシアを屋敷の中に連れて行ってくれた。

  クラウスが、私にそっと近づき耳元で言った。

「精霊エミリア様だ」

  エミリア様が助けてくれたのね。まさか部屋にある護身用の短剣を使って、自ら命を絶とうとするなんて……
  私があの子をここまで追い込んでしまったのね。ごめんなさい。
  それから、今の出来事を見た人全員、口止めしなくてはいけないわね。

  丁度騒ぎを聞き付けて、お父様とお母様とお兄様が外に出てきた。

  私はお父様にエルーシアが自ら命を絶とうとしたことを伝えて、この事が外に漏れないように口止めをお願いした。お父様は、すぐに動いてくれた。

  お兄様とお母様は、顔を真っ青にして私の話を聞いていた。
  お母様がエルーシアの所に付き添いに行ってくれた。

  伯爵家、公爵家の人間は大丈夫。
  問題は、グリデーラ侯爵家ね。
  エルーシアがしようとしたことが広まってしまったら、思い詰めてあの子はまた同じ事をするかもしれないわ。
  あの子の名誉の為にも、絶対に口外しないように、ここにいる人全員に口止めをしなくは。
  つるに関しては、知らぬ存ぜぬで通しましょう。

  私達は、客間に移動をした。私、クラウス、お父様、お兄様、グリデーラ侯爵、ルシアン様がいる。

  お父様がグリデーラ侯爵に話掛けた。

「先程はお騒がせをしてしまい、申し訳ございません。娘のエルーシアがしたことは、他言無用でお願いいたします」

「はい。承知しました。使用人にも、言い聞かせますのでご安心下さい。こちらこそ、申し訳ございませんでした」

  お父様は頭を下げていた。
  私はルシアン様を見る。返事をしているが信用出来ないな。
  私が、どうしてくれようか。と考えていると、私の隣からクラウスの声が聞こえて来た。

「ルシアン様。エルーシア嬢との婚約解消でグリデーラ侯爵家から賠償金を支払う事となったと伺ったのですが、リリアーナ嬢の時には慰謝料を支払われたのですか」

  クラウスの質問にルシアン様が答えた。

「リリアーナ嬢の時には、話し合いで穏便に解決をしました」

「穏便に……ほう。ルイス様に質問があるのですが、ルシアン様と婚約解消された直後の、リリアーナ嬢の様子を伺ってもよろしいでしょうか」

  クラウスの質問にお兄様が答えた。

「最初は、すごく落ち込んでいました。日が経つうちに少しずつ元気が戻ってきましたが……」

  クラウスが、ルシアン様に向かって鋭い視線を向けた。

「だそうですが。本当に穏便だったのでしょうか？」

  ルシアン様は黙ってしまった。そのまま、クラウスが話を続ける。

「私はプラメル伯爵家の人間ではないのでこれ以上、口を出す事は出来ませんが、もしエルーシア嬢の事を、誰かに話すような事があれば、ルシアン様個人にその時の慰謝料を請求させていただきます」

  クラウスは、目付きを鋭くしたまま話を続けた。

「ルシアン様がうっかりこの事を漏らしてしまった時には、リリアーナ嬢は、リーベル公爵家の人間になっているかもしれません。堂々と私がルシアン様個人に慰謝料請求させていただきます。所で、ルシアン様は廃嫡されたと伺ったのですが」

  クラウスの質問に顔を青くしたルシアン様が答える事が出来ずにいると、代わりにグリデーラ侯爵が答えた。

「一緒に駆け落ちをした男爵令嬢の家が一人娘だった為、ルシアンは責任を取って婿入りをする事になりました」

「そうだったのですね。では、何かあれば男爵家の方に連絡をさせていただきますね。今日あったことを誰にも話さなければ、何も不都合はないでしょう」

  クラウスが吹っ掛けた、無茶苦茶な脅しは、かなりルシアン様に効いているようだ。

  クラウスの話が終わると、グリデーラ侯爵と顔を青くしたルシアン様が挨拶をしてから退出をした。