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  ドレスを仕立てに公爵家に行ってから、十五日程経った。

  今日は、クラウスと公爵領でデートをする。私は、黄緑色のワンピースを着て馬車に乗っていた。

  くまさんの刺繍のハンカチ喜んでくれるかしら。

「おはよう、クラウス」

「おはよう、リリアーナ」

  公爵家に着いたので挨拶をしてから、一緒の馬車に乗って町に向かう。

  町は人で賑わっていた。
  クラウスが私に話し掛けてきた。

「今日は、久しぶりに食べ歩きをしないか?」

「ええ、いいわ。何から食べる?」

「そうだな、魚の塩焼きはどうだ」

「いいわね」

  串に刺さった魚にかぶり付いて食べた。クラウスは、二匹も食べていた。

「美味しかったわね」

「次は、肉を食べよう」

  クラウスは、食べ歩きが好きなようだ。いつもよりも、生き生きしていた。

  いくつか食べてお腹が満たされた私達は、噴水公園の中を手を繋いで散歩をする。

  クラウスが、私に話し掛けてきた。

「そういえば、この間久しぶりにジャック様が遊びに来たよ」

「ジャック様が?」

「そう。ユリアスに会いにね。騎士になってからは、忙しいみたいだけど。時々ユリアスに会いに来てくれるんだよ」

「ジャック様は、優しいわね」

  私は、ジャックの近況が聞けて嬉しくなった。

「そうだな。それから、オリヴィアさんとまだ続いているらしくてね、幸せそうに語って帰られたよ」

「ジャック様は、騎士になってもジャック様ね」

  二人で顔を見合わせて笑い合った。

「リリアーナ姫、そろそろ食後のデザートはいかがでしょうか?」

  いきなりふざけ出したクラウスに乗ってあげた。

「まあ!  クラウス王子、ぜひ食べたいわ」

「では、私の腕におつかまり下さい」

  私は少し笑ってから、クラウスの腕に手を添えた。

  クラウスのエスコートで、噴水公園の近くのしゃれたカフェに向かう。

  中に入るとトーマスじいさんが案内をしてくれた。

「クラウスお坊っちゃま、お待ちしておりました。いつもの部屋に案内致しますので、ごゆっくりお過ごし下さい」

  私は噴水公園が窓から見える部屋に通された。

  クラウスが紅茶とケーキを注文してから人払いをする。

「ここのカフェ店に来たのは、久しぶりね」

「そうだな。プラメル領に行ったり湖に行ったりしていたからな」

  ノックがありトーマスじいさんが入室した。みかんぽいものが乗ったケーキが出てきた。

  トーマスじいさんが退出してから食べ始める。

「やっぱり、いつ食べても美味しいわね。ここのケーキは」

  私の言葉にクラウスは笑顔で答えてくれた。

「リリアーナが喜んでくれて、良かったよ。甘いものが好きだね」

「甘いものは、大好きよ!」

  クラウスは、優しい笑顔を見せてくれた。クラウスの柔らかい笑みを見て、久しぶりに胸がときめいた。

  クラウスって、こんなに格好良かったかしら……?
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