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  クラウスと丘に行ってから、一ヶ月が経った。婚約をしてから九ヶ月。

  私達は何回ものデートをした。今日もクラウスとデートの日。
  場所はプラメル領だ。町に出る為、軽装をしている。

  私は屋敷の正面でクラウスが来るのを、今か今かと待っている。

  今日はサラが選んでくれた、ピンク色のワンピースにした。
  朝からかなり冷え込んでいたので、厚めのものを上から羽織った。

  クラウスが乗った馬車がプラメル伯爵家に到着した。クラウスが馬車から降りてきた。

「おはよう。クラウス」

「おはよう、リリアーナ。あれ?  髪飾りは?」

  クラウスに言われて気付いた。付け忘れたことに……

「やだ私ったら、町に出掛ける用の服装の時にはいつもつけていたのに。ごめんなさい。すぐに取って来るわ」

「お嬢様、私が代わりに行きますね」

  サラが代わりに行ってくれたので、クラウスと待っていると、エルーシアが現れた。

「まあ!  お姉様。おはようございます」

「おはようございます。エルーシア」

  あれ?  クラウスに挨拶は?

「お姉様ったら、そんなにクラウス様と結婚をされたくないのね。隣にいる格好いい方はお姉様の浮気相手かしら?  さすがに公爵家の方に知られたら大変よ」

  エルーシアは、馬鹿にしたように笑った。

  私は驚いて固まり、すぐに返事を返せなかった。また、隣にいたクラウスも何も言わない。

「ちょっとお姉様……何よ、変な顔をして」

  私は、やっと口から言葉が出た。

「エルーシア。このお方はクラウス様よ。良くお顔を見て」

  私の言葉にエルーシアが目を見開いた。そしてエルーシアは、呟いた。

「うそよ。うそよ。うそよ。うそよ。うそよ……そんなのあり得ない、あり得ないわ……」

  エルーシアの目が見開ききっていてた。

  相当ショックだったのだろうか、そのままエルーシアは、ふらふらと屋敷の中に入って行った。

  私は、クラウスにすぐに謝罪をする。

「妹が大変失礼を、申し訳ありませんでした」

  クラウスは、特に怒った様子もなく言った。

「気にしてないから、大丈夫だ。それよりも……」

  たぶんクラウスが続けて言おうとした言葉は、エルーシアの様子がおかしいから追いかけた方がいいかもしれない。だろう。クラウスは、優しい人だから。

  エルーシアも昔の私のように、落ち込んでしまったのかもしれない。
  それとも、悔しかったのかしら。
  ルシアン様と最近うまくいってなさそうだもの。

  昔私の心が暗い沼に完全に沈みかけた時、お兄様が私の手を掴んでくれた。そして、クラウスが私を沼の中から救い出してくれた。

  エルーシア、あなたにはいるの?  助けてくれる人は。

  ルシアン様は、エルーシアが落ち込んでいたら励ましてくれるの?
  クラウスが私にしてくれたように。

  エルーシアが落ち込んだり取り乱したら、面倒になって逃げてしまうかもしれないわね。

  それから、エルーシアがルシアン様とうまくいっていなくても、私は優しい言葉を掛けないわよ。だって、あなたに怒っているもの。

  エルーシア、これからあなたが不幸になっていく姿に期待をして、特等席で見ていてあげるわ。

「お嬢様、お待たせしました」

  サラが帰って来た。

「ありがとう、サラ」

  私は何もなかったのように笑顔で答えた。

「クラウス、行きましょう」

「ああ」
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