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「お兄様とエレーナお姉様が、お付き合いするこになったのよ」
私は満面の笑みでクラウスに伝えた。
「そうか、良かったよ」
嬉しそうに言うクラウス。
「クラウス……なぜ、驚かないの?」
「ハーヴェス領に行った時に、ルイス様とエレーナ嬢の様子を見たら分かったよ」
「まあ、そうだったのね。教えてくれたら良かったのに」
「言おうとした時に、ルイス様が宿屋の部屋に入って来ただろ。それで、言いそびれたよ」
私は、はっとした。
「まあ! あの時ね。そうか、あの時だったのね」
「二人が、無事に結ばれて良かったな」
嬉しそうに言ったクラウスに私も笑顔になった。
「そういえば、会えなかった一ヶ月間は、お仕事のお手伝いをしていたの?」
「そうだよ。父上とリーベル領の各地を回っていたよ。全て回ったし、滞在した町もあったから、時間が掛かってしまったよ」
少し拗ねたように言ったクラウスに、私は答えた。
「そうだったのね。クラウスは、頑張っていたのね。私は少しだけ頑張ったわ。お兄様もこの時期はいつもより忙しそうだったけれど、時々時間を作ってもらって、ダンスの練習をしたわ。先生にぎりぎりだけど、合格をもらったのよ。それから、勉強と刺繍と孤児院を見て回ったりもしたわ」
クラウスは何かを思いついた顔をしてから、提案をしてきた。
「リリアーナはダンスが苦手なの? 俺もだから、今度一緒に練習をしよう」
「ごめんなさい。ダンスは、社交界デビューをしてからね。だって恥ずかしいもの」
クラウスは、少し拗ねた顔をする。
「分かった」
そう言うと、私のおでこにキスをした。
私は一瞬驚いたが、自然とボードを漕ぎ始めたクラウスを見ていたら、心が穏やかになっていった。
クラウスが漕いだボートは岸に付き、私達は湖の周りを手を繋いで少し歩いてから、リーベル公爵家に帰って行った。
「今日も楽しかったわ。ありがとう」
「俺もだよ。気を付けて帰ってね」
私は馬車に乗ってプラメル伯爵家に戻る。いつもより少し早い時間だったので、私は夕食前に散歩をすることにした。
夕日が綺麗で夕方の散歩も気持ちがいいわ。
私は裏庭からぐるっと周り、庭園手前を歩いている時に、大きめの話し声が聞こえてきた。
エルーシアとルシアン様だった。
「どうしてよ! 二ヶ月も会えないなんて!」
エルーシアが、怒ったように言った。
「仕方がないだろ、父上の仕事を手伝うんだから」
「でも、二ヶ月なんて長過ぎるわ」
「二ヶ月なんてすぐだよ」
「うそ、そんなことない! 長過ぎるわ。ルシアン様は、私の事が好きでないのよ」
「たった、二ヶ月でそんなこと言われると困るよ。ごめん……今日は帰る」
いきなり帰ろうとしたルシアン様に、エルーシアが追いかけて行く。
「ごめんなさい。私が悪かったわ。だから帰らないで」
エルーシアの声にルシアン様が何かを言っていたが、離れた所で見ていた私の耳には届かなかった。
そのまま、ルシアン様は帰って行ったようだ。
エルーシアとルシアン様は、うまくいっていないのかもしれないわね。
私は満面の笑みでクラウスに伝えた。
「そうか、良かったよ」
嬉しそうに言うクラウス。
「クラウス……なぜ、驚かないの?」
「ハーヴェス領に行った時に、ルイス様とエレーナ嬢の様子を見たら分かったよ」
「まあ、そうだったのね。教えてくれたら良かったのに」
「言おうとした時に、ルイス様が宿屋の部屋に入って来ただろ。それで、言いそびれたよ」
私は、はっとした。
「まあ! あの時ね。そうか、あの時だったのね」
「二人が、無事に結ばれて良かったな」
嬉しそうに言ったクラウスに私も笑顔になった。
「そういえば、会えなかった一ヶ月間は、お仕事のお手伝いをしていたの?」
「そうだよ。父上とリーベル領の各地を回っていたよ。全て回ったし、滞在した町もあったから、時間が掛かってしまったよ」
少し拗ねたように言ったクラウスに、私は答えた。
「そうだったのね。クラウスは、頑張っていたのね。私は少しだけ頑張ったわ。お兄様もこの時期はいつもより忙しそうだったけれど、時々時間を作ってもらって、ダンスの練習をしたわ。先生にぎりぎりだけど、合格をもらったのよ。それから、勉強と刺繍と孤児院を見て回ったりもしたわ」
クラウスは何かを思いついた顔をしてから、提案をしてきた。
「リリアーナはダンスが苦手なの? 俺もだから、今度一緒に練習をしよう」
「ごめんなさい。ダンスは、社交界デビューをしてからね。だって恥ずかしいもの」
クラウスは、少し拗ねた顔をする。
「分かった」
そう言うと、私のおでこにキスをした。
私は一瞬驚いたが、自然とボードを漕ぎ始めたクラウスを見ていたら、心が穏やかになっていった。
クラウスが漕いだボートは岸に付き、私達は湖の周りを手を繋いで少し歩いてから、リーベル公爵家に帰って行った。
「今日も楽しかったわ。ありがとう」
「俺もだよ。気を付けて帰ってね」
私は馬車に乗ってプラメル伯爵家に戻る。いつもより少し早い時間だったので、私は夕食前に散歩をすることにした。
夕日が綺麗で夕方の散歩も気持ちがいいわ。
私は裏庭からぐるっと周り、庭園手前を歩いている時に、大きめの話し声が聞こえてきた。
エルーシアとルシアン様だった。
「どうしてよ! 二ヶ月も会えないなんて!」
エルーシアが、怒ったように言った。
「仕方がないだろ、父上の仕事を手伝うんだから」
「でも、二ヶ月なんて長過ぎるわ」
「二ヶ月なんてすぐだよ」
「うそ、そんなことない! 長過ぎるわ。ルシアン様は、私の事が好きでないのよ」
「たった、二ヶ月でそんなこと言われると困るよ。ごめん……今日は帰る」
いきなり帰ろうとしたルシアン様に、エルーシアが追いかけて行く。
「ごめんなさい。私が悪かったわ。だから帰らないで」
エルーシアの声にルシアン様が何かを言っていたが、離れた所で見ていた私の耳には届かなかった。
そのまま、ルシアン様は帰って行ったようだ。
エルーシアとルシアン様は、うまくいっていないのかもしれないわね。
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