なんでも奪っていく妹に、婚約者まで奪われました

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  剣の稽古のあとは、バラ園が見えるテラスでみんなでお茶を飲んだ。美しいバラの花は、私の心を癒してはくれなかった。

  私は、会話が全然入ってこなかったが、顔に笑顔を貼り付けて相づちを打った。

「リリアーナ様、このお菓子美味しいわよ」

  エレーナお姉様が、笑顔で話し掛けて来た。

「ありがとうございます。頂きます」

  私は、笑顔を取り繕って返事をする。

  エレーナお姉様が一番お辛いのに、私に気を使わせてしまって申し訳ないわ。

  それから、淡々と時間が過ぎて行き、帰ることになった。

  帰り際にクラウスが何がいいたそうな顔をしていたが、私はクラウスから視線を反らした。

  クラウスは、私に近づいて来て優しい声で話し掛けてきた。

「次は、三日後に会いたい。また、軽装をして来て」

  私は了承をした。
  私達は、クラウス達に挨拶をして公爵家を後にする。

  帰りの馬車の中は、重たい空気だった。
  そんな中でも、ジャック様はいつも通りに呑気に話をしていて、私は少し癒された。

  エレーナお姉様とジャック様をかわいいミーナちゃんが受付の宿屋に送り、私とお兄様はプラメル伯爵家に帰って行く。

  夕食後にお兄様が私の部屋に訪ねて来た。

「どうぞ」

  私の声を聞き、お兄様が室内に入って来る。

「リリアーナ……今日様子がおかしかったけど、どうしたの？」

  お兄様は、私を心配して来てくれたようだ。

「お兄様に質問があります」

「何？」

「お兄様は、好きな人と結婚出来なかったらどうしますか？」

  お兄様は少し考えてから、質問をしてきた。 

「それは、どのような状況の話？」

  お兄様の質問に、私は丁寧に答えていった。

「たとえば、お兄様に好きな女の子がいます。その女の子は男性にモテていて、お兄様には関心がありません。そんな中、お父様から縁談の話がありました。お兄様は、どうされますか」

  お兄様は考えこんでしまったが、しばらくしてから答えをくれた。

「僕は自分の気持ちを伝えて、振られてから縁談に向かうよ」

  お兄様は力のこもった目をしていて、私を真っ直ぐ見つめて言った。

「やっぱり、そうですよね。言う前に諦めてしまうなんて、もったいないですよね」

  私の独り言のような言葉にお兄様は、質問をしてきた。

「ところで誰の話をしていたの」


「エレーナお姉様です。五日後に子爵家の方と顔合わせなんですって」

  私が言うとお兄様は、一度固まってから目を見開き、何も言わずに部屋から飛び出して行く。

  相当急いでいるのか、ドタドタと階段の方から音が聞こえて来た。

「な、何なのよ。お兄様ったら、何も言わずにいきなり」

  少し怒ったように言った私に、サラは笑顔を見せた。

「お兄様の好きな人をこっそり探そう計画は、本日で終わりですね」

「ん？  サラ、それどういう事？」

「ルイス様は、何処へ向かわれたと思いますか？」

  そう言えば、エレーナお姉様の話をしていたわよね。まさか！

「その通りですよ、お嬢様」

  サラは私の表情を見て、私の求めていた答えをくれた。

「お兄様は、エレーナお姉様に会いに行ったのね」

  私の言葉を聞き、サラはにっこり笑ったのだった。