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  私達を乗せた馬車は、ハーヴェス伯爵家に着いた。

  私達は、ジャック様とユリアス様を探しに行く。
  裏庭にいた。ユリアス様は、ジャック様を独り占め出来て嬉しかったのか、いつも以上に機嫌が良かった。

「お兄様、帰ってきましたわ」

  エレーナお姉様がジャック様に声を掛ける。

「早かったね」

  ジャック様の言葉にエレーナお姉様がすぐに返事をする。

「早くありませんわ。もうすぐ、日が暮れますわよ」

  エレーナお姉様は、呆れている様子だった。

  私達は、今から宿屋に帰ることになった。
  明日の朝は、ハーヴェス伯爵家に寄らずに帰る予定なので、エレーナお姉様達とはここでお別れだ。

「エレーナお姉様。もう、お別れなんて寂しいです」

  私の言葉にエレーナお姉様は答えた。

「私もよ。また、近いうちに会いましょう」

「もちろんです。エレーナお姉様」

  私がエレーナお姉様と泣く泣く別れの挨拶をしていた頃、お兄様達四人も各々挨拶をしていた。

  私とお兄様とクラウスとユリアス様を乗せた馬車は、ハーヴェス伯爵家を後にした。

  夕食後、宿にて。

「クラウスの所に行ってくるわ」

  そう言った私に、サラが答えた。

「お嬢様、明日にされた方がよろしいかと」

「明日では、お兄様がいるわ。クラウスと会議を開くには今しか無理なのよ。サラ、お願い。少しだけだから」

「……かしこまりました。お嬢様」

  私は、クラウスの部屋をノックをして声を掛けた。顔を出したクラウスが、驚いた顔をした。

「クラウス、話があるの入れて欲しいの」

  私のお願いにクラウスは、少し焦ったように言った。

「いや、それは、まずいよ」

「あら?  クラウスの部屋がいけないのなら、私の部屋でもいいわ」

「いや、それは、もっと……」

「ねえクラウス。サラも一緒だから、ね。お願いよ」

  私はかわいく見えるように、はかなげに。上目遣いでクラウスを見て言った。

「分かった。中へどうぞ」

  クラウスは、ちょろかった。

  部屋の中に入り、私は会議を始めた。

「二日間の私の成果を報告します。お兄様は、また失恋して落ち込んでいるようです」

「えっ、隊長は本当にそう思われたのですか。私には、落ち込んでいるように見えませんでしたが」

  早速意見が割れた。

「では、クラウス隊長補佐は、どう思われたのですか?」

「私には……」

  クラウスが言いかけた時にノックが聞こえた。クラウスが、返事をして中に入ってくる。

  お兄様が入室をした。お兄様は入って来てすぐに、私に向かって話し掛けてきた。

「やっぱりここにいた。いけないじゃないか、こんな時間に」

「どうして、ここが分かったのですか?」

「リリアーナの部屋を尋ねたら、いなかったからここだと思った。それより、こんな時間に未婚の女性が男性の部屋を尋ねたらいけないだろ」

  お兄様は、諭すように言った。

「大丈夫よ!  クラウスは、婚約者ですもの」

「相手が婚約者だろうが、いけないよ。誰が見てるか分からないんだぞ」

  お兄様は、私に向かって言った後に、クラウスに向けて言った。

「クラウス様、申し訳ありません。妹が、お騒がせを致しました。ご覧の通り、リリアーナは少し鈍感な所もありますので、よろしくお願いいたしますね」

「あ、ああ。分かりました。こちらこそ、止められなくて申し訳ありません」

  お兄様の勢いに呑まれ、クラウスは少し、つっかえながらも返事をした。

「お兄様!  クラウス様は、悪くないです」

「分かっている。今回は、リリアーナだ」

「少し話をしていただけですもの」

「少し話していただけでも、リリアーナがクラウス様の部屋から出てきたのを見た人は、何を思うか分からないんだぞ」

  お兄様の口調は、いつもより強かった。

「サラだって、いました。だって、私……少し、お話していただけですもの。分からないです。そんなこと言われたって」

  私の言葉を聞いたお兄様は、言った。

「分からないなら、これだけは守って」

『たとえ、婚約者でも夜に異性の部屋を訪ねては、いけません』

「リリアーナ、分かったね?」

  私は、小さい声で返事をした。

「分かりましたわ」

  お兄様は私の言葉に満足をした顔をしていた。

「クラウス様、お兄様。申し訳ありませんでした」

  その後お兄様は、クラウスに挨拶をしてから、私の手を引いてクラウスの部屋から連れ出した。

「ごめんなさい、クラウス様。おやすみなさい」

「おやすみリリアーナ」

  私の最後の声は、クラウスに届いた。

  宿屋の自室に戻り。

  お兄様ったら、そんなに怒ることないじゃない。

  私は、反省もそこそこに眠りについた。
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