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お父様とセシルお兄様は朝から、町長達と村長達とほうれん草祭の話し合いに出かけてしまった。
私は今お母様とメイド長とお茶会の話し合いをしている。
近いうちに、町長の奥様や村長の奥様、レイラール領の商会の会長の奥様や商家の奥様などを誘うらしい。
「ふふ。やっと終わったわね。今から出掛けましょう」
私は部屋でロンに話し掛けた。
「今から行くのか」
「そうよ」
私はロンを籠にうつし、機嫌良く部屋を出た。
「お嬢様どちらへ?」
「ちょっとそこら辺を散歩するのよ」
「馬車の用意をしましょう」
「馬車は、いらないの。ちょっとした散歩よ」
「では、私もご一緒します」
「ロンと二人で行ってくるわねー」
私はそう言うと屋敷の玄関に向かった。
メイドのアリサが慌てて追いかけて来たが、気にせずに歩く。
「レイラール領の空気は気持ちいいわね」
「チュー!」
「ふふ。ロン、少し走るからしっかり掴まっていてね」
「チュー」
私は、屋敷から出てすぐにある森に入ったとたん、全力で走った。
「お嬢様お待ち下さい!」
「嫌よ。待ったら捕まってしまうでしょ」
「お嬢様、お一人では危ないです」
「大丈夫よ。ロンも一緒だし、レイラール領は王都より安全だもの」
「ぉ……ぉじょう様……」
だんだんアリサが遠くなってきた。
ふふ。あと少しで撒けるわね。
アリサが完全に見えなくなった。
「はぁ……はぁ……」
息が少し切れてしまった。
「おい、いいのか」
「いいの、よ。はぁ……いつもの事だから」
私はロンを肩に乗せた。
「さあ、お散歩に行きましょう」
「どこに行くのだ」
「町よ!」
森を抜けるとすぐに町に出た。
町の中をロンと歩く。
「アネモネ様お帰りで」
「まあ、アネモネ様!」
「皆さんお久しぶりです」
町の人に挨拶をして進んで行く。
坂を登って行くと高台についた。
「ほらほら、見てロン! 夕日が綺麗でしょう?」
私はロンを籠から出して、肩に乗せた。
「綺麗だな。これを見に来たのか?」
「そうよ。アリサが居たらロンは話せないでしょう?」
「アネモネ……ありがとう」
表情は分からないが、ロンは喜んでいるようだ。
「ふふふ。お礼は人間に戻ってからたっぷりいただきまーす」
「美味しいものをご馳走しよう。それから、大きな宝石がついたアクセサリーをプレゼントしよう」
「宝石はいらないわ」
「何?」
「宝石は未来の素敵な旦那様からもらうの」
「ああ、そうか。では、頑張らなければならないな」
「何を?」
「今は秘密だ」
「そう」
それから、二人でしばらく夕日を眺めた。
「お嬢様! 探しましたよ!」
後ろを振り向くと、ぷりぷりと怒ったメイドのアリサが居た。
アリサにも怒られ、帰ってからお母様にも怒られた。
夕食の時間は、アリサを短時間で撒けるようになって凄いじゃないか。と、喜んだお父様は……もちろんお母様に怒られていた。
セシルお兄様は巻き込まれないように、無言で食事をしていた。
私は今お母様とメイド長とお茶会の話し合いをしている。
近いうちに、町長の奥様や村長の奥様、レイラール領の商会の会長の奥様や商家の奥様などを誘うらしい。
「ふふ。やっと終わったわね。今から出掛けましょう」
私は部屋でロンに話し掛けた。
「今から行くのか」
「そうよ」
私はロンを籠にうつし、機嫌良く部屋を出た。
「お嬢様どちらへ?」
「ちょっとそこら辺を散歩するのよ」
「馬車の用意をしましょう」
「馬車は、いらないの。ちょっとした散歩よ」
「では、私もご一緒します」
「ロンと二人で行ってくるわねー」
私はそう言うと屋敷の玄関に向かった。
メイドのアリサが慌てて追いかけて来たが、気にせずに歩く。
「レイラール領の空気は気持ちいいわね」
「チュー!」
「ふふ。ロン、少し走るからしっかり掴まっていてね」
「チュー」
私は、屋敷から出てすぐにある森に入ったとたん、全力で走った。
「お嬢様お待ち下さい!」
「嫌よ。待ったら捕まってしまうでしょ」
「お嬢様、お一人では危ないです」
「大丈夫よ。ロンも一緒だし、レイラール領は王都より安全だもの」
「ぉ……ぉじょう様……」
だんだんアリサが遠くなってきた。
ふふ。あと少しで撒けるわね。
アリサが完全に見えなくなった。
「はぁ……はぁ……」
息が少し切れてしまった。
「おい、いいのか」
「いいの、よ。はぁ……いつもの事だから」
私はロンを肩に乗せた。
「さあ、お散歩に行きましょう」
「どこに行くのだ」
「町よ!」
森を抜けるとすぐに町に出た。
町の中をロンと歩く。
「アネモネ様お帰りで」
「まあ、アネモネ様!」
「皆さんお久しぶりです」
町の人に挨拶をして進んで行く。
坂を登って行くと高台についた。
「ほらほら、見てロン! 夕日が綺麗でしょう?」
私はロンを籠から出して、肩に乗せた。
「綺麗だな。これを見に来たのか?」
「そうよ。アリサが居たらロンは話せないでしょう?」
「アネモネ……ありがとう」
表情は分からないが、ロンは喜んでいるようだ。
「ふふふ。お礼は人間に戻ってからたっぷりいただきまーす」
「美味しいものをご馳走しよう。それから、大きな宝石がついたアクセサリーをプレゼントしよう」
「宝石はいらないわ」
「何?」
「宝石は未来の素敵な旦那様からもらうの」
「ああ、そうか。では、頑張らなければならないな」
「何を?」
「今は秘密だ」
「そう」
それから、二人でしばらく夕日を眺めた。
「お嬢様! 探しましたよ!」
後ろを振り向くと、ぷりぷりと怒ったメイドのアリサが居た。
アリサにも怒られ、帰ってからお母様にも怒られた。
夕食の時間は、アリサを短時間で撒けるようになって凄いじゃないか。と、喜んだお父様は……もちろんお母様に怒られていた。
セシルお兄様は巻き込まれないように、無言で食事をしていた。
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