上 下
25 / 42

26

しおりを挟む
「いやー、アネモネ嬢、こちらにいらしたのですね」

  そう言って登場されたのは、アンドリュー様だった。

「まあ、本日はありがとうございます」

「こちらこそ、ご招待いただきありがとうございます」

  さて、挨拶も終わったので逃げましょうかね。

「では、失」

「よろしければ、踊りませんか」

  あー、逃げ損ねたわ。

「ええ、お願いします……」

  私はアンドリュー様の手に自分の手を重ねた。

「ダンスがお上手ですね」

「そうでしょうか。ありがとうございます」

  何かと話し掛けてくるアンドリュー様に相づちを打っていると、曲が終わった。

「ありがとうございました。では失礼しますわ」

  私がそう言うとアンドリュー様はすぐに私の手を掴んだ。

「アネモネ嬢、お待ち下さい。よろしければ、少しお話をしませんか?」

「お話……?」

「ええ、少し端の方で話ましょう」

  まずいわね。連れて行かれるわ。

「申し訳ありません。この後約束がありまして」

「約束?  誰とですか?」

「アリス様です!」

  アンドリュー様は私から視線外し少し離れた所を見た。

「アリス嬢はオーウェン様と楽しそうに過ごされていますが」

「ええ、そ、そうみたいですわね」

「今行ったらお邪魔ではないでしょうか」

「ええ……」

「では、アリス嬢の所には後で行きましょう」

  そう言って私の手を引こうとしたアンドリュー様に、何処から現れたのかデュラン様が話し掛けた。

「兄上!  ここに居たのですね。父上が探していましたよ」

「何?  父上が……分かった」

「すぐに行かれた方がいい」

「分かった。アネモネ嬢、次回ゆっくりお話でもしましょう」

「ええ……」

「失礼します」

  アリスにはオーウェン様がいるから、私に乗り換えようとしているのかしら?
  ルルードドル子爵令嬢と男爵令嬢とはどうなったのかしら。
  まあ、男爵令嬢とは、ご友人として話していただけかもしれないけれど……。

「大丈夫でしたか」

「ええ、ありがとうございました」

「兄は少し強引な所もありますので、気をつけて下さい」

「ありがとうございます」

  その後私は、ミランダ様の所に行った。
  ミランダ様の周りには、仲良くしている令嬢が何人か居て、私はその輪の中に入り、話を楽しんだ。

  今は自室に戻って来た。

「ロンー、起きている?」

  ロンは、机の上にある寝床の中にいたが、すぐに出てきてくれて机の上に移動した。

「ああ、やっと戻ってきたのか」

「ええ、御飯は食べた?」

「ああ。アリサが用意してくれたぞ」

「そう。良かったわ」

「それよりも、夜会はどうだった?」

  何か色々ありすぎて……あっ、まずは二人の報告よね。

「大変なのよ。アリスがねオーウェン様とお付き合いをしそうなのよ!」

「何?  オーウェン様とアリス嬢が……それはめでたいな」

「でしょう?  アンドリュー様の事で困っている時にオーウェン様に助けて頂いたみたいよ」

「ほう。それは、アリス嬢が惚れてしまうのも分かる気がするな」

「そうよね。困っている時にさっと現れて助けてくれる男性は素敵よね。それから、その後は……あっ、デュラン様と踊った後に噂を聞いたのよ!」

「ふむふむ。噂?」

「とあるご令嬢が話し掛けて来てね。私とデュラン様がお付き合いをしているのは本当だったのねーって」

「何?」

  ロンは鼻をひくひくさせて、身を乗り出してきた。

「ちゃんと否定をしておいたわよ」

「デュランと付き合うなんて許さん」

「なんでロンの許可が必要なのよ……」

  話が逸れてきたので、もとに戻す事にした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします

文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。 夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。 エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。 「ゲルハルトさま、愛しています」 ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。 「エレーヌ、俺はあなたが憎い」 エレーヌは凍り付いた。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

王子妃教育に疲れたので幼馴染の王子との婚約解消をしました

さこの
恋愛
新年のパーティーで婚約破棄?の話が出る。 王子妃教育にも疲れてきていたので、婚約の解消を望むミレイユ 頑張っていても落第令嬢と呼ばれるのにも疲れた。 ゆるい設定です

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

元侯爵令嬢は冷遇を満喫する

cyaru
恋愛
第三王子の不貞による婚約解消で王様に拝み倒され、渋々嫁いだ侯爵令嬢のエレイン。 しかし教会で結婚式を挙げた後、夫の口から開口一番に出た言葉は 「王命だから君を娶っただけだ。愛してもらえるとは思わないでくれ」 夫となったパトリックの側には長年の恋人であるリリシア。 自分もだけど、向こうだってわたくしの事は見たくも無いはず!っと早々の別居宣言。 お互いで交わす契約書にほっとするパトリックとエレイン。ほくそ笑む愛人リリシア。 本宅からは屋根すら見えない別邸に引きこもりお1人様生活を満喫する予定が・・。 ※専門用語は出来るだけ注釈をつけますが、作者が専門用語だと思ってない専門用語がある場合があります ※作者都合のご都合主義です。 ※リアルで似たようなものが出てくると思いますが気のせいです。 ※架空のお話です。現実世界の話ではありません。 ※爵位や言葉使いなど現実世界、他の作者さんの作品とは異なります(似てるモノ、同じものもあります) ※誤字脱字結構多い作者です(ごめんなさい)コメント欄より教えて頂けると非常に助かります。

処理中です...