かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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  今日は、アリスの家に遊びに行った。

「失礼します」

「どうぞ」

  アリスの部屋は女の子らしい部屋でかわいい。
  メイドが私達の目の前に、お茶とお茶菓子を置いて退出していった。

「うちの子を紹介するわね」

  鳥籠みたいな小屋から出て来たのは、白くて小さなネズミだった。

「シロンって名前にしたの」

「シロンちゃん、かわいいわね。ロンに名前が似ているわ」

  アリスも私もネズミをテーブルの上に下ろした。
  シロンちゃんはメイドが用意した、チーズを両手で持ってかじっている。

  ロンはシロンちゃんに近づいて、鼻をひくひくとさせているが、シロンちゃんはチーズに夢中だった。

「シロンは、ロンくんみたいにずっとテーブルの上に居られないのよ」

「そうなの」

「そう。だから、食べ終わったら籠に戻すわ」

「そうなのね。けれど、籠をテーブルの上に置けばロンとお話出来るかも」

「いいの?」

「もちろんよ!」

  シロンちゃんはチーズを食べ終わるとちょこちょこテーブルの上を走り、落っこちそうになった所でアリスが捕まえ、籠の中に戻した。

「ふふ。シロンちゃん可愛いわね」

「落ち着きがなくて……」

  ロンはシロンちゃんの籠の周りをうろちょろしていたが、シロンちゃんはロンに興味を示さず寝てしまった。

  ネズミと恋をするのは難しいかもしれないわね……
  次の作戦を考えないと、ロンはいつまで経ってもネズミのままよね。
  けれど、シロンちゃんとロンの恋も同時進行で応援をした方が、ロンの戻れる確率は上がるわね。

「アネモネ……怖い顔をしてどうしたの?」

「少し考え事を……」

「何、何?」

「ロンとシロンちゃんの間に愛が芽生え無さそうだなって」

「確かにそうね」

  アリスは首を傾げてから、質問をしてきた。

「ロンくんとシロンの間に愛が芽生え無いと困る事でもあるの?」

「えっ?」

「だって、悩んでいるように見えたから」

  アリスに真実の愛のキスが……なんて言ったら、私はただの変な人よね。
  とにかく、誤魔化さなくては。

「えっ、えっとね。恋についてお勉強中なのよ。今日はロンとシロンちゃんの間に愛が芽生えたら、恋愛について学ばせて貰おうと思っていたのよ」

  我ながら苦しい言い訳ね。

「はい?  どういう事?  ネズミから恋を学ぶの?」

「そ、そうよ!  私、今大変なのよ。この間、私の夢が叶わなくなったの」

「アネモネの夢って?」

「実家でお気楽、楽々生活よ」

「何よそれ」

  アリスが訝しげに私の顔を見てきた。

「ずっと実家に住み着いて、セシルお兄様にお世話になる夢」

「あはは。何よそれー。アネモネらしいわ。ちょっとそれ、私以外には話していないでしょうね」

  アリスはお腹を抱えて、笑っていた。

「えっと、お母様とお父様とセシルお兄様とロンよ」

「あー良かった。私以外の友人には言わない方がいいわよ」

「どうして」

「あまり印象が良くないわ」

「それは……困るはね」

「まあ、ライバルが減ってラッキーって思う令嬢もいるかもしれないけれど、蹴落とす為にアネモネの夢を誰彼構わず話されたら嫌でしょう?」

「それは……困るわ。だって、私実家から追い出されるのよ。今大変なのよ」

  私がそう言うとアリスは驚いた顔をして、私の事を見て来た。

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