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  次の日になった。
  今は、お母様とメイド長と今度開く夜会の打ち合わせをしている。
  ロンはテーブルの上に居て、私と一緒に話を聞いていた。
  メイド達は話し合いには参加をしないが、メモをとって聞いている。
  最終決定はお父様だが、ここで決まった事はほぼ確定だろう。

「テーブルはここら辺に固めてちょうだい」

「かしこまりました」

「テーブルクロスの色は……」

  どうやら私は全く必要無さそうだ。
  お母様がぽんぽんと決めていくし、右耳から入った音が左耳から抜けていく。

「ちょっと、アネモネ聞いているの?」

「えっ、あっ、はい」

「やはり聞いていなかったわね」

  お母様はむすっとした顔をしていた。

「だって、私必要無いもの。お母様がどんどん決めていくじゃない」

「必要あるに決まっているでしょう。聞くのも勉強なのよ。嫁いだら、いつかアネモネが仕切ってやっていくのよ」

  嫁いだら……ん?  嫁ぐ?

「お父様がずっとこの家に居ていいって言っていたもの!」

「そんなの、冗談に決まっているでしょう。十八歳になったら縁談相手を探すって言っていたわよ」

  なんと!  そんなの、初耳よ。

「えっ、やだ」

「結婚は強制では無いけれど、相手の方に会う事はしなさいね。それが嫌なら素敵な男性を自分で探す事。分かった?」

「……分かりましたわ」

  困ったわ……実家でお気楽、楽々生活の夢が叶わないじゃない。

  打ち合わせは無事に終わって、私は部屋に戻った。

「どうしよう。どうしよう」

  私はロンを机の上に下ろしてから、部屋の中をぐるぐる回って歩いた。

「おい、落ちつけ。どうしたんだ?」

「大変よ!  大変なのよ。私の夢のお気楽、楽々実家生活が叶わないかもしれないのよ」

「なんだそれは」

「ずっと実家に住み着いて、セシルお兄様にお世話になる生活よ」

  私は胸を張って答えた。

「恐ろしい夢だな。セシル様が可哀想だ」

「まあ、ロンったら失礼ね!」

「で、アネモネはどうするんだ?  結婚相手ならいい人が目のま」

「セシルお兄様に紹介してもらうわ!」

「何?」

「だから、セシルお兄様に素敵な男性を紹介してもらうのよ」

  お父様よりセシルお兄様の方が期待出来るわよね。 

「ちょっと待て、素敵な男性なら知り合いの中にもいるだろう」

  知り合いの中に?
  まず、私が思う素敵な男性とは、なんだろうか。

  爵位を継がない。これ一番大事ね。将来〇〇夫人になったらお母様みたいに大変じゃない。
  だから、伯爵家を継ぐねっとり(オーウェン)様はダメね。

  それから、実家がそこそこお金があるといいわね。
  我が家と相手の家でお金を出しあって、王都に家を買いましょう。

  それから、旦那様の職場はやっぱり王都がいいわね。
  レイラール領とかに住んでもいいけれど、王都の方が生活が楽よね。
  王宮で働いている方とか、かっこいいわよね。

  それから、メイドを一人くらい雇える収入があるといいわね。

  うん!  さっそくセシルお兄様が帰ってきたら聞いて見ましょう。

「ロン、素敵男性は世の中たくさん居るけれど、私が思う素敵な男性は探さないと無理かもしれないわ」

「アネモネが思う素敵な男性とは」

  ロンが聞いてきたので、今思いついた条件を伝えた。

「うーむ」

  ロンは考え込んでしまった。
  私の条件はそんなに厳しいものなのだろうか……?
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