上 下
13 / 42

13

しおりを挟む
  私の視線に気づいたのか、デュラン様が話し掛けてきた。

「あれは……兄ですね」

「まあ、アリスと踊っているのは、デュラン様のお兄様ですのね」

「はい」

  曲が丁度終わった。
  アリスとデュラン様のお兄様が何か話をしている。
  デュラン様のお兄様はアリスの腰に手を回し、歩き始めた。

  あっちは……庭園の方ね。
  アリス……大丈夫かしら。

「アネモネ嬢、アリス嬢の所に行きますか?」

「ええ、よろしいのですか」

「はい。一緒に行きましょう」

  私達はアリス達がいる方に歩いて行く。

「兄上!  今日は兄上も来ていたのですね」

「ああ、デュラン」

  アリスは私の顔を見て、ほっとした顔をしていた。

「そちらの女性は?」

「レイラール家のアネモネ嬢です」

「ああ。セシル様の妹さんか」

「アネモネ・レイラールと申します」

「アンドリュー・メリベーンだ」

  アリスとデュラン様も挨拶をしていた。

「アリス。セシルお兄様の所に行きたいのだけれど、一緒に来てくれる?」

「ええ、もちろ」

  アリスが言い掛けた時に、アンドリュー様が遮った。

「申し訳ありません。アリス嬢は私と約束をしています」

「えっと……そうだったのですね」

  まずい。アリスが連れて行かれる。
   どうしよう。どうしよう。

  デュラン様が話に入って来た。

「そう言えば、確かセシル様がアネモネ嬢とアリス嬢を探していましたよ。アネモネ嬢は今日は早めに帰るのでしたよね。急がれた方がいい」

「ええ、デュラン様そうなんです」

「まあ、だったら私もセシル様に挨拶に行きたいわ」

「では、私がアネモネ嬢とアリス嬢をセシル様の所までお連れしましょう。そう言えば先程、ルルードドル子爵令嬢が、兄上の事を探しておられましたよ」

「何、彼女が来ているのか」

  急に顔色が悪くなった要注意人物アンドリュー様は、去って行った。

「デュラン様、セシルお兄様の所まで連れ行ってくれると言う事でありがとうございます」

「いえいえ。では行きましょう」

  その日はアリスも私も早めに会場を後にした。
  帰宅後、ロンは起きていた。

「ただいまロン」

「おかえり、夜会はどうだった?」

「うーん、なんか疲れたわ。アリスがね、アンドリュー様に連れて行かれそうで大変だったのよ」

「……アンドリュー様?」

「アンドリュー・メリベーン様よ」

「何……やつと知り合ったのか」

「アリスを助ける為にね。アリスが無事で良かったわ」

「アネモネ……アンドリュー様には気を付けろよ」

「分かっているわよー。要注意人物だもね」

  ロンは首を傾げた。

「要注意人物……?」

「あっ、えっと、何でもないわ」

  危ない危ない。女の子だけの秘密だったわね。

「アネモネ、寝るぞ」

  なんか最近のロンは偉そうね。まあ、王子様だから偉いのかもしれないけど。それに、いつから私の事をアネモネと呼ぶようになったのかしら。

「はい、はーい」

  私が寝具に入るとロンも何故か、入って来た。

「ロンの寝床はあっちよ」

「今日はアネモネと寝る」

「えー!  ロンの事を潰しちゃうかも」

「一生根にもってやる」

「こわーい!」

「寝るぞ」

「はーい」

  うっかり潰したら本当に根にもちそうよね。
  それに取り憑かれそう……。

  そんな事を考えていたら、すぐに眠りについた。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

敵国王子に一目惚れされてしまった

伊川有子
恋愛
グレスデンの王女シンシアは民の怒りを収めるため“棄教宣言”を行いに宗教の総本山であるドローシア王国へと向かう。ところが、今まさに両国の対立が決定的となろうという時、なぜかドローシアの王子ルイスがシンシアに一目惚れしたと言い出して―――。一筋縄じゃいかないトンデモ王子との訳アリ恋愛コメディ

王妃の仕事なんて知りません、今から逃げます!

gacchi
恋愛
側妃を迎えるって、え?聞いてないよ? 王妃の仕事が大変でも頑張ってたのは、レオルドが好きだから。 国への責任感?そんなの無いよ。もういい。私、逃げるから! 12/16加筆修正したものをカクヨムに投稿しました。

5年も苦しんだのだから、もうスッキリ幸せになってもいいですよね?

gacchi
恋愛
13歳の学園入学時から5年、第一王子と婚約しているミレーヌは王子妃教育に疲れていた。好きでもない王子のために苦労する意味ってあるんでしょうか。 そんなミレーヌに王子は新しい恋人を連れて 「婚約解消してくれる?優しいミレーヌなら許してくれるよね?」 もう私、こんな婚約者忘れてスッキリ幸せになってもいいですよね? 3/5 1章完結しました。おまけの後、2章になります。 4/4 完結しました。奨励賞受賞ありがとうございました。 1章が書籍になりました。

婚約破棄されなかった者たち

ましゅぺちーの
恋愛
とある学園にて、高位貴族の令息五人を虜にした一人の男爵令嬢がいた。 令息たちは全員が男爵令嬢に本気だったが、結局彼女が選んだのはその中で最も地位の高い第一王子だった。 第一王子は許嫁であった公爵令嬢との婚約を破棄し、男爵令嬢と結婚。 公爵令嬢は嫌がらせの罪を追及され修道院送りとなった。 一方、選ばれなかった四人は当然それぞれの婚約者と結婚することとなった。 その中の一人、侯爵令嬢のシェリルは早々に夫であるアーノルドから「愛することは無い」と宣言されてしまい……。 ヒロインがハッピーエンドを迎えたその後の話。

【1/21取り下げ予定】悲しみは続いても、また明日会えるから

gacchi
恋愛
愛人が身ごもったからと伯爵家を追い出されたお母様と私マリエル。お母様が幼馴染の辺境伯と再婚することになり、同じ年の弟ギルバードができた。それなりに仲良く暮らしていたけれど、倒れたお母様のために薬草を取りに行き、魔狼に襲われて死んでしまった。目を開けたら、なぜか五歳の侯爵令嬢リディアーヌになっていた。あの時、ギルバードは無事だったのだろうか。心配しながら連絡することもできず、時は流れ十五歳になったリディアーヌは学園に入学することに。そこには変わってしまったギルバードがいた。電子書籍化のため1/21取り下げ予定です。

殿下が恋をしたいと言うのでさせてみる事にしました。婚約者候補からは外れますね

さこの
恋愛
恋がしたい。 ウィルフレッド殿下が言った… それではどうぞ、美しい恋をしてください。 婚約者候補から外れるようにと同じく婚約者候補のマドレーヌ様が話をつけてくださりました! 話の視点が回毎に変わることがあります。 緩い設定です。二十話程です。 本編+番外編の別視点

断る――――前にもそう言ったはずだ

鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」  結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。  周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。  けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。  他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。 (わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)  そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。  ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。  そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?

不倫をしている私ですが、妻を愛しています。

ふまさ
恋愛
「──それをあなたが言うの?」

処理中です...