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  私がロンを誰に押し付けようか考えていると、デュラン様が話し掛けて来た。

「ロンくんはアネモネ嬢にとても懐いているように見えます。アネモネ嬢と離れ離れになったら、悲しむと思いますよ」

「そう……ですよね。分かりました。けれど、ロンとの生活は楽しいけれど、大変で……」

「何かあるのですか?」

「私が夜会に行こうとすると、暴れたり……ドレスの隙間に忍び込んでお茶会についてきたり……着替えをのぞ……いえ、何でもありません」

「ほう。そんな事をしているのですか……」

  デュラン様の雰囲気が少し怖くなった。
  ロンも気づいたのか、私の後ろに隠れた。

「困ったネズミ様ですね。また、何かあれば相談に乗りますよ。それでも、ロンくんが言う事を聞かなければ、ロンくんは私が引き取りましょう。いいですね」

  よくわからないけれど、もしかしたらロンをデュラン様に押し付けられるかもしれない。
  やったー!  最後のいいですね。はロンに向けて言っていたような気がするけれど……気のせいよね。

「ありがとうございます。デュラン様」

  デュラン様は優しく微笑むと、挨拶をして去っていった。

「おい、酷いじゃないか。俺をデュランに押し付けようとしただろう?」

  うっ、バレている……。

「えっと、私思いましたの。ロンは真実の愛のキスで、もとの姿に戻るのでしたよね」

「ああ、そうだ」

「でしたら、デュラン様は適任者です。ずっと一緒に過ごされて来たのでしょう?  デュラン様のキスでもとに戻れますよ」

「やめてくれ、気持ち悪い」

「えー!  うまくいくと思ったんですけどね」

「とにかく、デュランじゃ無理だ」

「はーい。わっかりましたー」

  私達は屋敷に帰ってきた。
  夕食後にセシルお兄様の部屋に行った。

「セシルお兄様……お願いがあるのだけど……」

「何だい」

「ロンにキスをして欲しいの」

「はっ?」

「真実の愛のキスよ。ぶちゅーっとお願い」

「いや……嫌だよ」

「一回だけでいいから……ね?」

「嫌だ」

「はー。分かったわ。失礼します」

  セシルお兄様ったら、ケチね。ちょっとチュチュとしてくれたらいいのに。

「おい……頼むから、男とキスさせようとしないでくれ」

  部屋に戻ってすぐにロンが話し掛けて来た。

「まあ、人間に戻れるのなら、誰だっていいじゃない」

「いいか?  よく聞いておけよ。男とキスをしても戻れない」

「えっ……」

「男とキスをしても戻れない。分かったか?」

「分かりました」

「理解してくれたようで安心した」

「では、今からお母様の所に行きましょう」

「待て待て待て待て待て待て……」

  何回待てって言うのよ。あっ、六回だったわね。

「アネモネ嬢のお母様は結婚をしているだろう?」

「そうよ。だって私のお母様なのよ」

「だったら、アネモネ嬢のお母様のキスでは戻れない」

「何故ですか?」

「アネモネ嬢のお母様が真実の愛のキスを出来るのは、アネモネ嬢のお父様だけだからだ」

「あっ、なるほど」

「やっと分かってくれたか」

「ええ、そうしたら男性だともとには戻れませんね」

「良かった。分かってくれたようで」

  なるほど!  理解出来たわ。
  そうしたら、私に出来る事は一つしかないわね。

「分かりました!  では、明日は森に行きましょう!」

「森?  何故だ?」

「雌のネズミを探しましょう。出来れば毛並みが綺麗で瞳が大きい子とかいいですよね」

「違う!  違う!  そうじゃなーい!」

「えっ、せっかく人が親切にしようとしているのに……」

  全く……怒りんぼうだな。

「俺は人間だ。今はネズミの姿をしているが、心は人間なんだ」

「なるほど」

「だから、相手は人間の女の子。分かった?」

「分かりました……」

  はあ、という事はこれから、殿下が好きそうな女の子と会わせて、私が仲を取り持つと言う事ね!

  中々忙しくなりそうね。
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