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デュラン様とのダンスが終わった。
「ありがとうございました」
「こちらこそ」
私はデュラン様に軽く頭を下げて、その場を後にした。
しばらく歩くとミランダ様を見つけた。
「ミランダ様、今日もとても美しいです」
「まあ、アネモネ」
ミランダ様は私に気づくと笑顔を見せてくれた。
ミランダ様の周りには、アリスがいた。他にも私と仲良くしてくれている令嬢達も数名いた。
私は彼女達にも挨拶をすませて、おしゃべりに参加をした。
「今日はのんびりだったわね」
話し掛けてきたのはアリスだ。
「出掛ける前にロンが暴れてしまって……」
「ロン?」
「そうそう、今ネズミを飼っていてね、名前がロンって言うのよ」
「えっ、ネズミを飼っているの?」
「そうよ。賢くてかわいいの。今度会ってくれる? お茶会に参加させろって暴れるのよ」
「まあ。二人だけの時なら」
アリスは、少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を見せてくれた。
「ありがとう。今日も夜会に連れて行けって暴れて大変だったのよ」
「まあ、なんだか大変そうね……」
「ほんとにそうなの」
話が終わったので、他の令嬢達が何の話をしているのか耳を傾けた。
「そう言えば……デュラン様を先程お見かけしましたわ」
「ええ、私もです。デュラン様と言えば、従者をされていましたわね」
「ええ、そうですわ」
「では、見つかったのでしょうね」
「それか、事実を隠す為にあえて、いつも通りに振る舞っているのかもしれませんわよ」
「まあ!」
みなさん話が盛り上がっているが、誰が聞いているのか分からないので、小声で名前を出さずに話をしていた。
「私気になってしまって、先日アーロン殿下に聞きましたの。ロイアン殿下はすぐに見つかったと言っておりましたわ」
そう言ったのはミランダ公爵令嬢だ。
ミランダ様は第二王子のアーロン殿下の婚約者だから、ロイアン殿下の事を聞いたのだろう。
「まあ、そうでしたのね。私ったら早とちりを……」
「気になさらないで。ロイアン殿下があれから顔出さないのは事実ですもの。心配するのは当たり前だわ」
ミランダ様は優しく微笑んだので、他の令嬢達はほっとした顔をしていた。
私はアリスに会う約束をしてから、セシルお兄様と帰宅をした。
「ロン、ただいまー」
ロンは私が作ったふかふかの寝床で眠っていた。
出掛ける前は暴れて大変だったが、寝ているとかわいいわね。
私はロンの寝顔を少しだけ眺めてから寝床に入った。
次の日は、ロンを連れて王都の町に遊びに来た。
ロンは小さなかごに入り、ちょこんと顔を覗かせている。
「外の空気が気持ちいいわね」
「チュー」
公園では芝生の上でロンを放した。
ロンは短い足でチョロチョロ走っていてかわいい。
「ねえ、ロン。ベンチに居るのって、メリベーン侯爵家の長男と男爵令嬢じゃない。ルルードドル子爵令嬢とはもう終わったのかしら?」
要注意人物のメリベーン侯爵家の長男が見えた。しかも、メリベーン侯爵家の長男は男爵令嬢の頬に手を添えている。
ロンが私によじ登ろうとしたので、手のひらに乗せた。
ロンは話が分かるのか、じっとベンチの方を見つめていた。
「女の子をほいほいかえる男は嫌ね。弟さんの方は、優しそうで素敵な方なのに、残念ね」
この国の人は、身分に関わらず自分で結婚相手を探す人が多い。
だから、男女が町で二人で会っていても特に問題は無い。
しかし、メリベーン侯爵家の長男のように、ルルードドル子爵令嬢とお付き合いをしているのに、男爵令嬢と二人きりで会うのは如何なものだろうか。
それとも、ルルードドル子爵令嬢とはもう終わったのかしら?
「チュー、チュー!」
「あら、ロンもそう思うのね」
「チュー、チュー、チュー、チュー、チュー!」
「ごめんなさい。ネズミ語は私分からないの」
ロンは諦めた様子だった。
芝生の上でもう一度ロンを放してから屋敷に帰った。
「ありがとうございました」
「こちらこそ」
私はデュラン様に軽く頭を下げて、その場を後にした。
しばらく歩くとミランダ様を見つけた。
「ミランダ様、今日もとても美しいです」
「まあ、アネモネ」
ミランダ様は私に気づくと笑顔を見せてくれた。
ミランダ様の周りには、アリスがいた。他にも私と仲良くしてくれている令嬢達も数名いた。
私は彼女達にも挨拶をすませて、おしゃべりに参加をした。
「今日はのんびりだったわね」
話し掛けてきたのはアリスだ。
「出掛ける前にロンが暴れてしまって……」
「ロン?」
「そうそう、今ネズミを飼っていてね、名前がロンって言うのよ」
「えっ、ネズミを飼っているの?」
「そうよ。賢くてかわいいの。今度会ってくれる? お茶会に参加させろって暴れるのよ」
「まあ。二人だけの時なら」
アリスは、少し驚いた顔をしたが、すぐに笑顔を見せてくれた。
「ありがとう。今日も夜会に連れて行けって暴れて大変だったのよ」
「まあ、なんだか大変そうね……」
「ほんとにそうなの」
話が終わったので、他の令嬢達が何の話をしているのか耳を傾けた。
「そう言えば……デュラン様を先程お見かけしましたわ」
「ええ、私もです。デュラン様と言えば、従者をされていましたわね」
「ええ、そうですわ」
「では、見つかったのでしょうね」
「それか、事実を隠す為にあえて、いつも通りに振る舞っているのかもしれませんわよ」
「まあ!」
みなさん話が盛り上がっているが、誰が聞いているのか分からないので、小声で名前を出さずに話をしていた。
「私気になってしまって、先日アーロン殿下に聞きましたの。ロイアン殿下はすぐに見つかったと言っておりましたわ」
そう言ったのはミランダ公爵令嬢だ。
ミランダ様は第二王子のアーロン殿下の婚約者だから、ロイアン殿下の事を聞いたのだろう。
「まあ、そうでしたのね。私ったら早とちりを……」
「気になさらないで。ロイアン殿下があれから顔出さないのは事実ですもの。心配するのは当たり前だわ」
ミランダ様は優しく微笑んだので、他の令嬢達はほっとした顔をしていた。
私はアリスに会う約束をしてから、セシルお兄様と帰宅をした。
「ロン、ただいまー」
ロンは私が作ったふかふかの寝床で眠っていた。
出掛ける前は暴れて大変だったが、寝ているとかわいいわね。
私はロンの寝顔を少しだけ眺めてから寝床に入った。
次の日は、ロンを連れて王都の町に遊びに来た。
ロンは小さなかごに入り、ちょこんと顔を覗かせている。
「外の空気が気持ちいいわね」
「チュー」
公園では芝生の上でロンを放した。
ロンは短い足でチョロチョロ走っていてかわいい。
「ねえ、ロン。ベンチに居るのって、メリベーン侯爵家の長男と男爵令嬢じゃない。ルルードドル子爵令嬢とはもう終わったのかしら?」
要注意人物のメリベーン侯爵家の長男が見えた。しかも、メリベーン侯爵家の長男は男爵令嬢の頬に手を添えている。
ロンが私によじ登ろうとしたので、手のひらに乗せた。
ロンは話が分かるのか、じっとベンチの方を見つめていた。
「女の子をほいほいかえる男は嫌ね。弟さんの方は、優しそうで素敵な方なのに、残念ね」
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だから、男女が町で二人で会っていても特に問題は無い。
しかし、メリベーン侯爵家の長男のように、ルルードドル子爵令嬢とお付き合いをしているのに、男爵令嬢と二人きりで会うのは如何なものだろうか。
それとも、ルルードドル子爵令嬢とはもう終わったのかしら?
「チュー、チュー!」
「あら、ロンもそう思うのね」
「チュー、チュー、チュー、チュー、チュー!」
「ごめんなさい。ネズミ語は私分からないの」
ロンは諦めた様子だった。
芝生の上でもう一度ロンを放してから屋敷に帰った。
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