かわいがっているネズミが王子様だと知ったとたんに可愛くなくなりました

ねむ太朗

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  今日は、ラベンダー公爵家のお茶会の日。
  今、私の目の前では楽しそうに話す、ご令嬢方のおしゃべりが聞こえている。

  私の名前は、アネモネ・レイラール。レイラール伯爵家の長女だ。

  話題はメリベーン侯爵家の長男の話にかわっていた。ルルードドル子爵令嬢とどこかの夜会でキスをしていたらしい。

「まあ、あのお方は気を付けた方がよくってよ。私も先日、暗がりに誘われましたわ」

「まあ。気を付けなくてはいけないわね」

  ご令嬢達の間では、メリベーン侯爵家の長男は要注意人物になったようだ。

「そう言えば……あまり大きな声では言えないのだけれども……」

  話始めたのは、ミランダ・ラベンダー公爵令嬢だ。
  私はミランダ様に可愛がってもらっている令嬢の一人だ。
  ちなみに私はミランダ様の取り巻きではない。ファンだ!
  今日のミランダ様も美しい。
  皆、ミランダ様の話の続きを待った。

「第三王子のロイアン殿下が……行方不明って噂があるのだけれども……」

「ええ、知っていますわ。たしか、三日前に陛下が大騒ぎをして、そのすぐ後にロイアン殿下が見つかったと公表していましたわよね」

「そうなの。けれども、ロイアン殿下をあれから一度も見た人がいないのよね」

  皆、考え込んでしまったので、私が話し掛ける事にした。

「やはり何かあったのかもしれませんね。近いうちに何か公表があるかもしれませんね」

「ええ、そうね。今は様子を見ましょう」

  それから、みんなでおしゃべりを楽しみ、私はレイラール伯爵家の屋敷に帰ってきた。

  馬車から降りた私は、屋敷の玄関に向かって歩く。
  すると、足下にささっと動く何かが居た。

「えっ、えっ、何?」

  私は、踏み潰しそうになったそれを見た。

「ネズミ……?」

  よく見るとネズミが私の顔をじっと見ていた。

「まあ、金色のネズミなんて珍しいわ!」

  私は金色のネズミを両手で掬い上げた。

「お嬢様、手が汚れてしまいます」

「そんな事ないわ、とても綺麗なネズミさんよ」

  メイドは、納得していない様子だったが、私は無視をしてネズミに顔を近づけて観察した。金色の毛並みに茶色の瞳でとても美しいネズミだった。

「この子を綺麗にしてあげるわ。お風呂に入れてちょうだい」

「えっ、ネズミをお風呂にですか?」

「ええ、そうよ。溺れないように桶か何かで丁寧にね」

「かしこまりました」

  部屋で待っているとすぐにネズミが届けられた。

「ふふふ。やっぱり綺麗なネズミさんね。ねえ、お腹は空いている?  チーズを用意したのだけれど」

  金色のネズミを皿の上に下ろすと、金色のネズミはちらっと私の顔を見てから、チーズを食べ始めた。

  本当にかわいいネズミね。後でお母様に飼っていいか聞いてみよっと。

  金色のネズミはペロリとチーズを完食した。

「もう、お腹は満たされたかしら?」

「チュー」

「ふふ。良かったわ。ネズミさん、今からお母様に会いに行きましょうねー」

  私は金色のネズミを手のひらに乗せて、お母様を探しに行った。
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