悪魔は知らぬ間に身近に居た

ねむ太朗

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  ローズマリー達は小さい子達と鬼ごっこをしていた。
  私もそれに混ざって一緒に遊んだ。

  その日の夜……
  私は焦げ臭い匂いで目を覚ました。

  何この匂い……

「ねえ!  ローズマリー、リナリア起きて!  何か変よ!」

  二人はすぐに起きてくれた。

「火事よ!」

  リナリアは状況を見て、すぐに何が起こっているのかを教えてくれた。

「みんな!  起きて!  外に逃げるのよ!」

  私達は小さい子ども達の部屋を手分けして回った。
  そこに先生達が来てくれた。

「早く逃げるのよ!」

  焦っている先生の声が聞こえた。
  部屋には誰も残って居なさそうなので、私達も外に出る事にした。

  先生達は恐怖で足がすくんでしまった子どもを抱き抱え、私達の前を歩いて行く。

  廊下は所々火が回っていた。
  身体が暑い。息も苦しい。
  この場所から出口に向かって行く。

  歩いている途中で、ドン!!  と、ものすごい音と一緒に地面が揺れた。

「きゃーー!!」

  私が後ろを振り返ると、ローズマリーの足が何かに挟まれていた。

「ローズマリー!」

  ローズマリーの足が棚に挟まれていた。
  私とリナリアはローズマリーの腕を引いたり、棚を退かそうとしたが無理だった。

  この棚……私の腰くらいの高さなのに、なんて重さなのよ。

「行って!  私は大丈夫だから」

「嫌!  ローズマリーを置いて行けないわ」

「ここに居たらみんな死ぬわ」

  煙が回ってきていてだいぶ苦しい。
  ローズマリーの言っている事は理解出来た。

「フィーナ、リナリア早く!」

「い、院長先生達を連れてすぐに戻るから。みんなで力を合わせればすぐに退かせるから」

「帰って来ないで!  早く行くのよ!」

「ローズマリー……ごめん」

  横からリナリアの声が聞こえた。
  ローズマリーから離れられなかった私の腕を、リナリアが引っ張った。
  私はローズマリーを見た。
  彼女は優しく微笑んでいた。

  出口が見えて来た。
  小さい子どもを外に連れ出した先生達が戻って来てくれたみたいだ。

「早く外に出るのよ!」

「先生……ローズマリーが……」

「ローズマリーが中にいるの?」

「棚に足が……」

「なんですって!」

  先生が奥に進もうとした時に大きな爆発が起こった。
  扉が開いていた玄関に居た私達は、外に放り出された。

  ドサッッ……

  私が後ろを振り返ると、建物が半壊をして、ごうごうと燃えていた。
  先程私達が立って居た玄関は、まだ燃えていなかったが、中に入るのは難しそうだ。

「ロ、ローズマリー!」

  誰もがその場に立ち尽くした。
  正気に戻った人達が水を掛けていった。
  町の人達も手伝ってくれた。
  私もふらつく足で建物に水を掛けた。

  火は朝方に消えた。
  建物はほとんど焼けてしまって形を留めていない。
  私達は町の空き家に避難をして一日過ごした。

  次の日には、建物の温度が下がり、瓦礫の撤去を行う。
  ローズマリーは孤児院の敷地内に埋葬をした。
  みんなで祈りを捧げた。
  私は涙が止まらなかった。 

  今回の火災で亡くなったのはローズマリーだけ。もしあの場に残って居れば、私達も助からなかったかもしれない。
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