悪魔は知らぬ間に身近に居た

ねむ太朗

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「隣町でね、私達と同じくらいの年齢の女の子が、おかしくなってしまったらしいわ」

「おかしく?」

「そうよ。全く笑わないし、怒らないし……まるで感情が無くなってしまったみたいなの」

「なにそれ、病気?」

  最初は興味が無さそうに聞いていたローズマリーだったが、いきなり会話に参加をしてきた。

「それが、病気ではないみたいなのよ。会話は成り立つし、昔の話を振ると返事がきちんと返ってくるんですって」

「じゃあ何がおかしいのよ」

  ローズマリーさん……さっき感情が無いと言っていたでしょうが。

「だから、感情が無いのよ。喜怒哀楽が全く無くなってしまったのよ」

「なにそれ!  気持ち悪いじゃない」

  ローズマリーはやっと話についてこれたようだ。

「そうなの。それもね、ほとんど同じ時期に三人の女の子が急にらしいわ」

「その女の子達は仲が良かったとか?」

  私はリナリアに質問をした。

「それが、二人は町の女の子で、一人は私と同じように孤児院育ちの女の子らしいわ。三人の共通点は、年齢が近い事と女の子である事と同じ町に住んでいる事みたい」

「そうなの……それで女の子達はどうなったの?」

「どうにもよ……普通に生活をしているらしいわ。本人達は自分達がおかしくなっている事に、気づかずに生活をしているみたい。言葉で伝えても、感情に関しては理解してもらえないみたいよ」

「なんだか気味が悪いわね」

  私はローズマリーと同じ事を思っていた。

「けれど、これはあくまでも噂だから。誰かがふざけて話を大げさにしたのかもしれないわ」

「なんだ、作り話かー」

「違うわよ。三人の女の子が隣町で、様子がおかしくなったのは本当みたいよ。それも原因不明」

「けれど今、大げさにしたって言ったじゃない」

  そう言ったローズマリーにリナリアがすぐに答えた。

「大げさに話が広まったのかも。という意味よ」

「なるほど」

  話が一段落した所で、リナリアがローズマリーに話し掛けた。

「ローズマリー、そろそろ行くわよ」

「行くってどこに?」

「私達、夕食当番でしょう?」

「ぁあ!  そうだったわね」

  そう言うとローズマリーとリナリアは、私に声を掛けて行ってしまった。

  一人になった私は木登りをした。
  上まで登ると見える景色が広がり楽しかった。

「おーい。フィーナ」

  下から声が聞こえてきた。ゲジェだった。隣にベアルも居る。

「何?」

「俺達もそっちに行っていいか?」

「どうぞ」

  ゲジェとベアルも登ってきた。
  ゲジェは登るのに時間が掛かり、ベアルの方が先に私の隣についた。

「頑張れゲジェ!」

「す、すぐに行くし!」

  優しさで応援をしたのに、可愛くない男だな。

「フィーナはいつからここにいたの?」

  急ににベアルに話し掛けられて私は首を傾げた。
  ん?  いつ頃木に登ったのか?  と言う質問かな。

「少し前よ」

「そうなんだ。もう少し早くこっちの方に来れば良かったな」

  ベアルはそう言うと優しく微笑んだ。
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