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3.巷で流行っていたようだ

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 どうしたものかと頭を抱えるアレックス。この状況になってもクロヴィスを王太子にしようとしているアレックスは、がむしゃらに悪あがきをしていた。

 そして、クロヴィスにお互いの手首を手錠で繋がれた。

 さすがにこれには焦ったアレックス。
 婚約者のヨアンナだけにはこんな姿を見られたくないと思ったが、アレックスが気づかないうちに見られていたようだ。

「アレックス様……私、噂は面白おかしく嘘のものが出回っているのかと思っておりましたわ。ですが、本日見てしまったのです」

 何の事を言われているのかすぐに分かった。

「いや。あれは、何て言うのかな? 兄上の愛のムチってやつかな」

 挙動不審で話すアレックス。

「愛……私と言うものがありながら……浮気者!!」

 ヨアンナは令嬢らしからぬ足の速さで去って行った。
 どうやらヨアンナは、クロヴィスとアレックスが兄弟愛を超えた仲であると勘違いをしたようだ。

 それから急いでヨアンナを探したアレックス。
 幸い、まだ妃教育で王宮にいたヨアンナ。

「見つかって良かった。ヨアンナ! 探したよ」

「アレックス様、それ以上近づかないで下さいませ」

「なんで?」

「変態は半径二メートル以内に近づかないで欲しいですわ」

 首を振って、来ないで欲しいと訴えるヨアンナにアレックスは傷つく。

「誤解だ! 兄上とは何もない。僕が仕事をサボるから逃げ出さないように手錠で繋がれたんだよ」

「まあ。いつもの脱走でございますか」

「そう。いつもの脱走だ」

「分かったかい? 僕は変態ではないよ」

「では今、巷で流行っている男同士のあれやこれやな関係ではないのですね」

「当たり前だろう!」

 やはり、男同士のあれやこれやは流行っていたのか。
 やっと誤解が解けたアレックスは、二度と同じ事が起こらないように、真面目に戻ったのだった。



 ふとした瞬間、王妃が悲しげな表情を浮かべる事がある。
 アレックスが子ども頃は、国王の事を想っているのかと思っていたが、ヨアンナに恋をした今のアレックスは、それが間違えだった事に気づいた。

 王妃はジョージの事を想っている。
 王妃にとっては、義弟と言う微妙な立場で中々会えないジョージの事を想っているのだ。

 どうして王族は愛する者と結婚出来ないのだろうか。
 幸い、アレックスは愛するヨアンナと共に人生を歩める。

 たぶんクロヴィスは、ミレリアの事が今でも好きなのだろう。
 クロヴィスにも幸せになって欲しい。

 そんな思いから、アレックスは行動に移した。
 ミレリアはクロヴィスとの婚姻が無効になってしばらくしてから、社交の場に一切出席しなくなった。

 王家主催のものですら欠席で、この頻度だと失礼にあたるが、クロヴィスとの事があったので、ミレリアに対して何かを言う者はいなかった。

 どうやって、ミレリアとクロヴィスを引き合わせるのか考えた結果、ミレリアを王宮に呼ぶ事にしたのだった。

 久しぶりに再会をした二人。
 一度会うと、アレックスの思惑通りに事が運び結婚に至った。



 国王になって数十年。
 年をとったアレックスは、今だに思う事がある。

 身分制度は面倒だな。


(おわり)

 最後まで読んで頂きありがとうございました。
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