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2章 モンスターテイムと奴隷たち

20 プラントテイム

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「ミラシャ、だよな?」

 目の前にいるピンク色のスライムのプルプルがかなり増した。
 うん、しっかりミラシャだ。賢くて良い子だ。プニプニしよう。

 そういえば俺は普通のスライムしか見たことがなく、スライムの上位種に関しては考えたことがなかった。

 困ったときの魔物図鑑。
 早速メニューから開いてみよう。



ピンクスライム(3)
 スライムの上位種。粘液状のモンスター。
 カラースライムとは別種であり、その進化方法は突然変異だと考えられている。
 中級種であり、ステータスは並の冒険者と同程度。物理に耐性があるが、魔法耐性も非常に高く、耐久が高めである。攻撃能力もあるが、野生では攻撃しないため無害である。
 ドロップアイテムのピンクスライムゼリーは美容品や媚薬の原料になるため、貴族からの人気が非常に高く、価値も高い。
 性別の概念が無いものの、更に上位種の擬態種と呼ばれる種類は雌型モンスターになる例のみ確認されている。



 なるほど分からん。

 とりあえず強くなって耐久も上がったんだな。それならヨシだ。

 ただピンク色になっただけで、大きさもプルプル具合も変わらないからただ色がついただけじゃないか、と疑いたくなるけどな。

 良く考えたらなんだプルプル具合って。

 そういえば、ミラシャと他のスライムを並べてどれが本物のミラシャか当てる一人ボッチ遊びをジジイの修行の休憩中にやったなぁ。

 そのときプルプル具合を見て、ミラシャを判別できた。
 俺は立派なプルプルソムリエかもしれない。冗談だが。

【称号「プルプルソムリエ」を獲得しました】

 おいコラ、ちょっと待て。

 メニューのヘルプ欄が小刻みに点滅している。あいつ、笑ってやがるな?

 ルフエル、貴様今その称号を作っただろ。
 全く、神はそんなに暇なのか?

 いや、ルフエルは暇神ひまじんだったな。忘れてたよ。

 プルプルソムリエは置いといて、進化したのは素直に嬉しい。
 人を育てるよりも、魔物をテイムして育てる方が楽しいし手っ取り早いかもしれない。

 魔物図鑑には討伐率だけでなくモンスターテイム率があるし、どっちもコンプリートを目指すのはアリだな。

 ちなみに討伐率は正確に討伐率ではなく、仲間にしても計算されるようだ。
 倒したことはないが、仲間にしたピンクスライムも討伐した扱いになっている。

 ちょっと異世界での楽しみが増えたな。
 テイマーとして活動するのも悪くない。

 そうと決まればプラントも一から育ててみよう。

 テイム率をコンプリートするなら、なるべく進化前の最下位種から育てて進化させた方が効率的だからな。

 ピンク色になったミラシャを頭の上に乗せ、俺はメニューのエリアマップを開いてプラントがいる位置を確認した。

 プラントだけですぐ行けるくらい近くにざっと20体。かなりの数だ。

 そういえば今いる大陸は緑の大陸、通称植物大陸と呼ばれ、植物モンスターがメインに棲息している。
 この大陸のダンジョン内の敵も、植物モンスターがほとんどだ。

 スライムは全大陸どこにでもいるし、ゴブリンとか弱い魔物は比較的に住みやすいこの大陸にも結構いる。
 十大陸の中では一番敵が弱くて初心者向けの大陸として知られている。

 緑の大陸に次いで、黒の大陸と呼ばれるダンジョンの多い大陸が、人が過ごしやすい大陸として人種が沢山いる。

 勿論、獣人やエルフといった亜人種も多い。

 たまたま拠点にしている街ではそんなに見かけないが、緑や黒の大陸は多種多様な人種の坩堝るつぼだ。

 あっ、黒の大陸だからといって地面が全て黒いとかはない。
 普通にダンジョンが多いだけで自然や景色は緑の大陸と何ら変わりはないらしい。

 これが赤の大陸や黄の大陸、白の大陸とかになってくると、変わってくるが。
 赤は火山地帯が多く、黄は砂漠地帯が多い。白の大陸は氷雪地帯ばかりらしい。


 さて、ジジイに教えてもらったことを思い出していたらプラントを見つけた。

 見た目はキラープラントとあまり変わらず、少し小さめなくらい。大人しくて人を襲う気配もない。
 キラープラントになってからちょっと敵性が増す感じなんだろう。

 まあキラープラントも近づきさえしなければ、特に攻撃してこないので好戦的なモンスターではない。討伐は推奨されているがな。

「よし、テイムといくか」

 俺はプラントに近づき、頭なのかは分からないが芯の部分を撫でてみた。

 羨ましかったのか、頭の上にいるミラシャのプルプルが増している。
 いやつめ。後でいっぱい撫でよう。

【対象「プラント」が隷属化を申請。受諾しますか?】
[YES or NO]

 なんかこの感じ、久しぶりに感じるな。

 答えは勿論イエスで。

【対象「プラント」の隷属化を確認】
【職業「見習いテイマー」がレベル上限に到達】
【職業「テイマー」が解放されました】
【スキル「魔物意思疎通Ⅰ」を獲得】

 よしよし、順調だな。

 モンスターとの意思疎通か。どんな感じなのかな?

 アクティブスキルなので、試しにミラシャに使ってみた。

『スキー、スキー、スキー』

 まだスキルレベルが低いからか、あんまり意思疎通ができないみたいだな。
 何かが好きだと言っているのは分かるが、全く分からん。

 検証には必要経費だと思い、スキルポイントを499ポイント使って「魔物意思疎通Ⅹ」にまでレベルを上げてみた。これでレベルマックスだ。

 さて、ミラシャの考えていることがしっかり分かるだろうか。

 ミラシャに意識を集中してみる。


『ご主人様にナデナデされるの好きです。ご主人様にツンツンされるの好きです。ご主人様と一緒に食べることが好きです。ご主人様に食べられたいです。ご主人様の笑ったお顔好きです。ご主人様のナデナデ好きなのにあの子ずるいです。ご主人様に話しかけて貰うの好きです。ご主人様に……』

 うん、そっと意思疎通をオフにした。

 世の中には知らなくて良いこともあるよな。

 プラントはどうだろうか?

『水が欲しー。光気持ちいいー。ご主人様ができたー。ご主人様は強そうー。ご主人様に守ってもらえそー。スライムは仲間かなー?』

 おぉ、かなりまともだ。

 いやこれが普通か。ちょっとばかしミラシャが変な子だっただけだ。

 ただ意思疎通というよりかは、こっちが一方的に考えを読んでる感じになっちゃうな。

 話しかけたらちゃんと会話できるのだろうか?

「プラント。水、あげようか?」

『ご主人様、お水欲しー』
『ご主人様はあの子に夢中でずるい。ご主人様にお水貰いたい。ご主人様に……』

 よし、ミラシャにも水をあげることにしよう。

 水魔法で二人いや、二匹に水をあげた。

『お水おいしー。うれしー』
『ご主人様の魔法好きです。ご主人様のお水好きです。ご主人様の……』

 二匹からの評価は良かったみたいだ。

 しかし課題が残っている。そう、プラントの名前である。
 何も考えず思いつきでテイムしてしまったから、名前を決めていなかった。あらかじめ考えておいた方が良かったな。

 名前をどうしようかと悩んでいたら、ちょっと遠くから俺を呼ぶ声が聞こえてきた。

「ご主人様~!」
「シンヤ様!」

 凄い勢いでマシュとエクルが走ってきた。

 まだ待ち合わせ時間には余裕があり集合場所からもちょっと距離があるが、遠くから俺を見つけたから駆け寄って来たんだな。

 もっと遠くに一応グランとバルティンの姿が見える。
 彼らはゆっくり向かってくるのだろう。マシュとエクルの行動に苦笑いとかしていそうだ。

 依頼のこともあるし、早めに合流できたのは良しとしよう。

「シンヤ様ご無事でしたか?! ここはお任せ下さい!」
「やっぱりモンスターだよ!」

 そして駆け寄ったと同時に、俺とミラシャ&プラントの間に割って入る二人。

 一体何が起きてるのか理解が遅れたが、近くにモンスターがいて俺が襲われていると勘違いしたのだろう。

「マシュ、エクル、そいつらは俺のな」

 仲間、と言う前にミラシャのプルプルが増して少し光ったと思ったらエクルに魔法を撃ち込んでいた。

 俺はそのまま口をポカンと開いてしまう。

「くっ、このスライムは強い。マシュ、シンヤ様を連れて一旦戻れ! 私がグランとバルティンが来るまで時間を稼ぐ!」

「分かったよ! 死なないでねエクル!」

 ミラシャが魔法を使ったことでびっくりしてる俺をマシュが引っ張る。

 進化したミラシャちょっと強すぎないか? という考えで頭がいっぱいになり、考えが追いつかない。

「ご主人様、逃げないと!」

「あ、いや、仲間」

「命をしてでも、シンヤ様は必ずお守りする!」

 それからエクルはミラシャに魔法で倒されてしまい、異常を察知して急いでやってきたグランとバルティンも、ミラシャの体当たりで気絶させられてしまった。

 ちなみにマシュは俺の腕に掴まってプルプルとスライムみたいに震えていた。

 プルプルソムリエの俺からするとマシュのプルプルは80点だった。


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