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2章 モンスターテイムと奴隷たち
17 宿で話し合い
しおりを挟む「いらっしゃいませ~! ようこそ、宿屋ハーフ&ハーフへ!」
宿屋に行くと、元気な店員さんに対応してもらった。
名前はノコラちゃん。
見た目は10~12歳くらいだが、宿のお手伝いをこなすしっかりもの。
お父さんが兎人族と人間のハーフ。お母さんがエルフと人間のハーフみたいだ。
ノコラちゃんは耳は兎、肌はすべすべのエルフより。
ぴょこぴょこと動く兎耳に自然と目が奪われる。
もふりたい欲望を抑えながら、二人部屋と三人部屋をお願いした。
部屋割りは後で決めることに。
とりあえずは仲間となった奴隷たちと今後の話し合いだな。
みんなで三人部屋に集まる。かなり広めだったので、五人が集まってもさほど窮屈ではなかった。
「俺の自己紹介はしてなかったな。俺はシンヤ。一応主人になったが、気楽に接してくれていい。特にグラン。敬語がきつかったら使わなくていいぞ」
「マジか、それは助かる。ありがとよ、ご主人!」
ニカッといい笑顔で返してくれた。
主人と奴隷とはいえ、堅苦しいと息が詰まるだろうからな。
それぞれもう一度軽く自己紹介する運びになり、互いに名前を確かめ合った。
「さて、まずは俺の目的について話そう」
俺が来年、魔法学園に入学するつもりだということ。
そのために入学金や生活費を冒険者として稼ごうと思っていること。
四人を買ったのは、冒険者になってそれの協力をして欲しいことなどをざっくり伝えた。
学園在学中は所得がないからな。入学までに彼らを鍛えられれば、勝手にお金が入ってくる、はず。
俺がいない間にバックられたらそれまでだが。そうならないようにしっかり雇用形態も考えねばなるまい。
「しかし俺たちはモンスターと戦ったことはないです。まとまったお金を稼ぐのは厳しいと思います」
バルティンが述べると、他の皆も一様に頷いた。
「武器を振り回すくらいは俺にもできそうだが、モンスターは倒せねぇかもな」
「申し訳ありません。戦闘面ではシンヤ様のお役に立てるようなことは難しいと思われます」
「僕、魔法は使えるけど攻撃魔法って言える威力なのはできないかな。ごめんなさい、ご主人様」
「安心してくれ。みんなすぐに戦えるようにはなる。ただそのために俺の秘密を打ち明けるが、それを言いふらさないように命令させてもらう。いいか?」
命令すればそれは無理なものでなければ、絶対的に遵守される。それが奴隷だ。
「俺はどうなっても構わねぇ」
「俺も、大丈夫です」
「シンヤ様のご命令のままに」
「いいよ!」
「分かった。じゃあ話そう」
俺は自分の能力の一部、経験値を多く獲得ができること。
超過した分がスキルポイントになり、それを仲間でも自由に割り振れることなどを教えた。
流石に異世界から来ました云々までは伝えていない。
「えーっ!? 経験値っていっぱいゲットしたらスキルポイントになるの!?」
俺のスキルではなく、情報にマシュが一番驚いていた。
どうやら経験値を人より多めに獲得できるスキルはあるらしい。
それにスキルポイントをある程度選んで割り振れるスキルも珍しいが存在するらしく、一番驚かれたのがルフエルに教えてもらった情報になった。
なんか俺のチート、ショボいのを選び過ぎてしまったか?
攻撃系のチートもないし、選ぶセンス無かったかもしれない。
「勿論秘密にするけど、ご主人様の情報って世界規模の大発見だよ?! 発表しただけで白金貨とかいっぱい貰えちゃうレベルだよ!」
白金貨、確か金貨の100倍の価値だったか。
マシュはちょっと大袈裟な子だな。
可愛いから許しちゃうけど。
「そうだ言っておかないとな。俺は面倒事に巻き込まれないためにも、あまり目立たずに過ごしたいと思ってる。下手に目立って権力がある者に目をつけられたら、振り回されそうだからな。自由気ままに行動したいんだ」
流石の俺も困ってる人がいたら助けようとは思うが、面倒事に自分から首を突っ込むのは控えたい。俺は臆病だからなぁ。
「シンヤ様の意思、しかと胸に留めさせていただきました。この情報、誰にも悟られないよう全力で秘匿いたします」
あらやだカッコいい。
俺の足元に跪いて誓いを立てるエクル。何をしても絵になるイケメンはずるいぞ。
奴隷は秘密にしろと命令されたことは自分から誰かに伝えることはできないが、何かの拍子に勘付かれることはあるだろう。
それを危惧して、エクルは気をつけると言ってくれているようだ。
エクルは優秀な部下になりそうだ。優秀過ぎて上司より早く出世して追い抜きそうなタイプだけどな。俺もいつか追い抜かれそうでちょっと怖い。
「なぁ主人、俺たちはそのスキルポイントで強くしてもらえるのか?」
「ああ、やってみないと分からないが恐らく可能だ。明日はみんなに弱いモンスターを倒してもらって検証してみる。なので明日の予定は軽く装備を整えてから、門の外でモンスター退治だな」
「俺らがモンスターを倒せなくても、見捨てねぇでくれるか?」
心配そうに質問するグラン。それはみんなの気持ちを代弁しているかのようだった。
他の三人も同様にこちらの返答を心配そうに待っている。
「一度主人になったからには見捨てないよ。俺もモンスターを倒すのはまだ苦手なんだ。強要はしないさ」
モンスターを倒す、命を奪う感覚は最悪だったからな。
魔法で倒せば幾分かマシだ。感触がないから。
「お、おう。主人は苦手なんだな。俺らはレベル1だから、勝てなかったら助けて欲しい、頼む」
どうやら思ってた反応と違った。
レベル1だからモンスターが倒せるか不安だっただけのようだ。
なんか俺が怖がりみたいでちょっと恥ずかしい。いや、実際あってるけど。
「勿論だ。みんなの命を預かってるからな。しっかり守るから安心して欲しい」
「良かったぁ~、僕の攻撃魔法じゃ倒せなさそうだから不安だったよ」
マシュが胸に手を当ててホッとしている。
バルティンも少し頬が緩んだ。彼は必要なこと以外は、基本無口なようだ。
エクルは何故か決意したような顔になっている。追い詰めてしまうようなことは言ってないんだがな。イケメンがキリッとするのはかっこよすぎて嫉妬するぞ。
「よし、今日はいっぱい美味いもの食って明日に備えるからな! 遠慮なく食べてくれ!」
美味しいと評判(ローアさん情報)の宿屋の晩飯を食べにいき、自分たちも同じものを食べていいのかとテンプレの一幕もあったが、お互い少しは打ち解けられたと思う。
「お、おやすみなさいご主人様!」
俺とじゃんけんで勝った者が二人部屋で寝ることになり、結果勝者はマシュだった。
反応がいちいち可愛いが、男の娘ということを忘れてはならない。
先に眠ってしまったマシュの可愛らしい寝息を意識しないよう、俺は無心になって自分のベッドに潜り少し無理やりめに就寝した。
翌朝マシュがベッドから落ちていたことは、見なかったことにした。
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