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1章 異世界女神とアンデッドジジイ

09 レベルアップとアンデッド

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 プルプルとおびえたような感触が、足元から伝わってくる。

「大丈夫だよ、ミラシャ。俺が何とかしてみせるから」

 気休め程度の言葉をスライムのミラシャに投げかける。

 安心したのかは分からないが、少しプルプルするスピードがゆっくりになった。

 何とかすると言ったが、正直策は全くない。

 このままだとミラシャ共々ゾンビやスケルトンの餌食えじきになってしまう。

「くそっ、どうしたら」

 こうしている間にもモンスターを表す赤点は増え続けている。

 今にも地中からアンデッドが飛び出して来そうなほどだ。

「まだ陽は完全に落ちてはない。何かできないか探そう」

 メニューをいじっていたら、いつの間にかレベルが上がっていることに気がついた。

 ゴブリンを倒したことで、レベルが1から2に上がったみたいだ。

「ん? スキルポイントが8千!? 何故に?!」

 レベルが上がったことでスキルポイントが1もらえるというのがこの異世界の仕様だ。

 この8千ものスキルポイントは、余剰分の経験値がスキルポイントに変換されたものである。

 この世界ではレベルは1ずつしか上がらない。
 その際レベルアップ時に余った経験値が、スキルポイントに変換されることになる。

 それがとんでもない成長チートの二つが掛け合わさったおかげで、莫大なスキルポイントに変化していた。

 必要経験値超激減の128分の1。
 獲得経験値超激増の128倍。

 これらが作用して、通常の16384倍の経験値を得たシンヤは、余った経験値がスキルポイントに変換されていたのだ。

「スキルポイント8192。これを使えば何とかなるか? 時間がない!」

 チートスキル『メニュー』はスキルポイントを使用することで、新たにスキルを獲得することが可能である。

 シンヤは咄嗟とっさに『気配遮断』のスキルをレベルマックスで取得した。
 かかったスキルポイントは全部で500。
 安くはないが、今はケチっている場合ではない。

「気配遮断、アクティブ」

 スライムのミラシャを服の中に隠し、息を殺すように気配遮断を使用する。

 その瞬間、わずか数センチ隣の地中から、骨だけの手が突き出てきた。

「ッッッ」

 驚いて声が漏れそうになるが、必死にこらえるシンヤ。
 ミラシャはシンヤの服の中で心配そうに、けれどもどこか嬉しそうにプルプル震えていた。

 それから次々と地面からゾンビやスケルトンなどのアンデッドたちが現れ始めた。

 もうすっかり陽の光はなくなり、青い月明かりがぼんやりと辺りを照らすだけ。

 月が青いことなど気にも留めず、シンヤは急いで『夜目』のスキルを取得し、レベルマックスに上げた。これはパッシブスキルだから自動発動だ。
 使用スキルポイントは同じく500ポイントであった。

 続いて移動するために『忍び足』のスキルを取得。同じくレベルマックスに。アクティブにする。
 使用スキルポイントは500ポイント。

 マップを確認しながら、アンデッドたちの群れをうように避け進む。

 だがこのアンデッドがウジャウジャいる状態で森の外に出るのは厳しいと判断し、森の中でやり過ごせる場所を探すことにした。

 しばらくエリアマップとにらめっこをしていたら、地下にかなりの大きさの空洞があることが分かった。

 そこにはアンデッドの姿がほとんど無いようで、身を隠して朝までやり過ごすだけなら最適であった。


「ふぅ、なんとかなったか」

 マップで空洞への入り口まで無事に辿り着き、ミラシャを服の中から取り出して頭に乗せた。

 ミラシャもホッとしているのか、嬉しそうにプルプル震えている。

 どうやらこの空洞の中にはモンスターが一体しかいないらしい。

 それも知性のあるモンスターらしいので、話が通じるかもしれないと思い、ここまで足を運んだ。

 そう、ここにいるモンスターの正体や性格は既にエリアマップで確認済みだ。


「すみませーん。朝までアンデッドからかくまって欲しいんです。お願いします!」

「ひぃぃぃぃぃぃぃっっっ、わ、儂を殺しに来おったのかぁぁぁぁ」


 この洞窟で出会ったのは、元人間のビビリなアンデッドじいさんであった。



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