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1章 異世界女神とアンデッドジジイ
08 決意と逢魔時
しおりを挟む「ありがとな。本当にありがとう。お前のお陰で、まだ何とか立ち上がれそうだよ」
プルプルと可愛らしく震える友人は、とても嬉しそうに体を擦り寄せて来た。
スライムに助けられるとは思わなかったが、廃人になりかけていた俺を救ってくれたのは、間違いなくこの小さな友人だ。
助けてもらったお礼をしないといけない。
そうだ、いつまでもスライムとかお前とか呼ぶわけにはいかないよな。
名前で呼んであげよう。
「その、お前に名前をつけたいんだが、俺はあんまりネーミングセンスに自信が無いんだ。だから気に入ったらいっぱいプルプルして、嫌だったらプルプルしないで教えて欲しい。いいかな?」
プルプル、プルプル。
言葉は通じないかもしれないが、やってみるだけやってみよう。
「そうだな『ミラシャ』とかどうかな? 嫌だったらプルプルしないでくれ」
プルプルプルプル!
「お、おぅ。ミラシャでいいかな? 本当に大丈夫?」
スライム、いや、ミラシャは俺の足元にくっついて盛大にプルプルしてくれた。
ちょっと女の子っぽい名前を付けてしまったが、スライムは性別が無いし大丈夫だろう。
「よし。じゃあミラシャ、これからもよろしく頼む!」
プルプル!
あーもう、何というか言葉にできないくらい可愛い。
なんか初孫ができたおじいちゃんの気分だ。
さて、そろそろ覚悟を決めないとな。
これでミラシャは友人、いや、家族みたいなものだ。
家族ができた以上、守ってあげたいし、できる限りのことはしてあげたい。
薄っぺらい覚悟でゴブリンの命を奪ったが、正直最低最悪な気分だった。
だが、これからはもっと敵を倒さなければならなくなるだろう。
自分の為だけではない。
ミラシャと俺の二人の為に、俺は敵を倒す。
何故だろうか。
自分の為というだけならペラペラな覚悟だったが、誰かの為にならしっかりとした覚悟になった気がする。
気休めなのかもしれない。
ただの勘違いかもしれない。
だが、今はそれでいい。
それで家族が守れるなら、俺は自分の身を擲つ覚悟さえ湧いてくる。
ははっ、我ながら単純なものだ。
だが、男ならこのくらい単純な方が良いのかもな。
もうカッコ悪いとこは見せられない。
腹くくって、命を奪う。
責任から逃げず、やったことに向き合う。
よし、覚悟は出来た!
ゆっくりと、前に進むとしよう。
心の中で決意表明終わったところで、気が付きたくはないあることに気がついてしまった。
いや、向き合うと決めたんだ。
この問題にも逃げずに向き合うべきだろう。
「うん、もう陽が落ちてきてる。つまり……」
気絶している間にかなりの時間が経過してしまったようだ。
そう、この森は不死者の森。
夜になれば、アンデッドが闊歩する恐ろしい森へと姿を変える。
そして現在逢魔時。
マップを開けば、今まで無かった赤点が次々に増えていく。
嫌な冷や汗が背中を伝う。
気がつけば、周りは赤点だらけ。
しかしアンデッドの姿は見えない。
「ッ、まさか」
赤い点を調べると、スケルトンやゾンビの文字が並ぶ。
急いでエリアマップからインフォメーションを開き、不死者の森を調べる。
不死者の森。
その地中には、夥しい数のアンデッドが眠る。
夜の帳が下りるとアンデッドたちは地中より這い出でて、生者を求め彷徨い歩く。
生ける者は絶対に夜に近付いてはならない。
もしも夜中に踏み入れたならば、その日から寝床はベッドから土に変わるであろう。
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