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2章 表と裏
14 第1の試練を
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> ダンジョンボス「ゴブリンクイーン」を攻略した!
> レベル1→9に上がった!
> メインミッション「第1試練」をクリアした!
> ステータスタブ「マップ」が解放された!
> ステータスタブ「履歴」が解放された!
> 「追憶の記録その1」が解放された!
> 【夜の帝王】の効果で「パッシブスキルスイッチ」が解放された!
> スキル【槍術】を習得した!
> スキル【テクニシャン】を習得した!
◇
「オミズドーゾ」
「ふぅ、ありがとう」
ゴブリン娘から受け取った水袋で、ゴクリと喉を潤す。体が水分を欲していたのか、生き返るようで心地良い。
一息吐き、思考がクリアになってきたな。
先程、頭の中にアナウンスのようなものが流れていたのは何だったんだろうか。と思いながらステータスボードを確認してみる。
ステータスボードにはタブが表示されていて、タブを切り替えることで別の項目が表示されるみたいだ。
履歴タブを開くと、アナウンスで聞こえていた内容をログとして見ることができた。
「何から触れたら良いか分からないが……とりあえず【槍術】と【テクニシャン】は、やかましいわ!」
明らかに狙ったかのようなスキルだ。こんなの下ネタにしか思えないぞ。
「【槍術】の効果は、突き刺す動作に補正がかかる。【テクニシャン】は弱点を狙いやすくなる、と。どちらもパッシブか」
絶妙に戦闘スキルとして使えそうなところがツッコミに困る。
あとはゴブリンクイーンを倒したわけでもないのに、攻略してることになってるな。押し倒すという意味なら間違っちゃいない気もするが。
マップはめちゃくちゃ便利な機能を発見したが、一旦置いておこう。
パッシブスキルスイッチは、常に発動してしまうパッシブスキルをオフにできる機能か。
これを使えばダンジョンに強制転移されることはなくなりそうだ。
「主おつかれー!」
「お、スイ、大丈夫だったか?」
従魔のスイランが労いの言葉をかけてくれる。スイランとは俺が連れ去られるときにはぐれてしまっていた。
いつの間にゴブリンたちの巣穴まで来ていたんだと心配になったが、特に怪我もなさそうで、元気いっぱいという様子で安心した。
「うん! ずっとついてったよー!」
「そっかー。ずっといたのかー」
全部見られていたようだ。
さっきまで周りに気を配る余裕が無く、気付けていなかったな。
「ほう、その子は従魔なのか。主人によぅ懐いておるのじゃな」
「お、リンカ。復活したのか」
「まだその名で呼ばれるのは慣れんの。主人殿」
ゴブリンクイーンには名前が無かったので、リンカと名付けることにした。
慣れないと言いながらも、少し照れ臭そうに微笑むリンカは、名前を気に入ってくれているみたいだ。
リンカの方も途中から俺の呼称が変わり、主人殿と呼ぶようになった。と言っても従魔にはできないので、正式に主人になった訳ではないがな。本人曰く、気持ちの問題だそうだ。
「体の方は大丈夫そうか?」
「ゴブリンの精力を舐めてもらっては困るのじゃ。妾の精力よりも、主人殿の精力の方が異常であったがの……」
リンカは結構早めにダウンしていたような気もするが、ここは突っ込まないでおこう。
「主ー、仲間どうするのー?」
「おっと、そうだったなー。スイ、ありがとう」
仲間の件をすっかり忘れてたな。
当初の目的はダンジョンから脱出するために攻略したい。攻略したいから戦力を増やしたいということで、ゴブリン娘を従魔にしたかったんだよな。
ところがリンカがダンジョンボスで、リンカを攻略することしたら、そのままダンジョン攻略ができてしまった。
脱出もマップから選択できるようになっていたし、いつでも帰ることができる。
すぐに従魔が必要というわけではなくなったので、この件は保留ってことでもいいかな。
「ふむ。その件じゃが、妾に考えがある。主人殿、少しばかり待ってはくれぬだろうか?」
「俺は構わないよ。どうしてかは聞いても良いか?」
「ふっふっふっ。それは後のお楽しみというやつじゃ。主人殿の従魔になる子は、妾が見繕っておこうぞ」
「アタイ!」
「ナリタイ!」
「エラバレタイナー」
途端に立候補の声が鳴り止まなくなったが、リンカの考えというやつに乗っておこうか。
「それじゃあ、ゴブリンの従魔の件はリンカに任せてまた来るよ。1回攻略したダンジョンでもまた来られるよな?」
「うむ、任せてくれ。何度でも来られるから心配は無用じゃ。また遊びに来て欲しい」
であれば、問題はない。
名残惜しい気持ちもあるが、そろそろ帰らないとな。キョウカちゃんたちも心配しているかもしれないし。
「またな、リンカ。それにゴブリン娘たちも」
「気をつけて帰るんじゃぞ。主人殿」
「マタキテ!」
「イッテラー!」
「サビシクナルナー」
リンカやゴブリンたちに見送られ、手を振りかえしながらもう片方の手で帰還ボタンをタップした。
俺の背中にぺとっとくっついているスイランと一緒に、俺の体は光に包まれた。
◇
「菅井様!」
「お、キョウカちゃん、心配かけてごめ……おわっ」
視界が自室に切り替わったと思ったら、ものすごい勢いでキョウカちゃんに抱きつかれた。
「うぅ、ご無事で良かったです。良かったですぅぅぅ!」
子どものように泣き崩れるキョウカちゃんを抱きとめ、よしよしと頭を撫でて宥める。
「って、スライム!? 菅井様、私の後ろに下がってください!」
「ちょちょっと待ってキョウカちゃん。この子は俺の従魔だから。危険じゃないから!」
「スイいい子にするー」
両手を挙げて降伏するポーズのスイラン。
癒されるなぁ。
「はっ、失礼致しました。菅井様の従魔ですね。取り乱してしまい申し訳ありません………………え、従魔?」
泣き顔から焦り顔、澄まし顔からキョトン顔に次々と表情が変わっていくキョウカちゃん。
そしてそのままフリーズしてしまった。
口をぽかーんと開いたままのだらしない感じが何とも言えない可愛さである。
「キョウカちゃん落ち着いた?」
「あ、はい。従魔。従魔ですね。モンスターを仲間にするのは世界初でしょうけど、菅井様ですからね。えぇ」
なるほど、モンスターは仲間にできないのが常識なのか。
仲間にできないのはリンカのようなボスモンスターだけかと思っていたが、普通だとできないんだな。
「【男聖】に、モンスターの従魔。ダンジョンに直接転移したことや、試練のダンジョンへの入ダンも世界初。もう私は何も驚きません。菅井様ですから」
「おーい、キョウカちゃーん。目が死んでるよー」
「主ですからー」
こら、スイラン変な言葉覚えるんじゃありません。
それからキョウカちゃんやダンジョン付近に向かっていたアカネとマロンに今日の出来事を説明し、何度も驚かれたり謝罪したりする羽目になるのであった。
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