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1章 始まりの一日
09 間話1ー2 ホマレとアンナ
しおりを挟む「杏奈も野守さんも羨ましすぎるよ~」
「サイズ凄かったって看護部長が言ってたんだけど、どのくらいだったの?」
「ねぇねぇ、結局見たんだよね。まさか補助って、触っちゃったりしたの?」
「どこまでしちゃったか気になる!」
「交換した連絡先いくら払えば売ってくれる?!」
「はいはい、皆さん落ち着いて下さいね。アンナも私も一度には答えられませんからね。あと連絡先は勝手に渡しません。ダメです」
「えへへ~。凄かったな~」
アンナのニコニコした愛らしい顔が目に入ってきますが、かく言う私も先ほどから頬が緩みっぱなしですね。いけないいけない。
それから私たちは、同僚たちからの質問を捌いていきました。
大きさですか?
平均の倍以上ありましたね。
触ったりしたのか?
触る以上のこともしてしまいましたね。
どこまでしちゃったか?
それは内緒ですよ。
質問に答えていく度にアンナが思い出しているのか、顔を赤くしてしまうのが可愛いです。
え、私の顔も赤くなってる?
そんなことはないと否定できないくらいは、顔が熱くなってしまっていますね。
なんだか恥ずかしいですが、それ以上に幸せな気持ちでいっぱいなので問題ありません。
正直、初めは選ばれるわけがないと思っていました。
私はアンナのような男性ウケするタイプとは正反対な気がしていましたから。
大きな胸やお尻は男性に嫌悪されてしまいますし、背も平均より高いです。
おまけに多くの男性に嫌われる相が出ていると、良く当たる占い師の人に言われるくらいでした。
対してアンナは、ペットのような可愛らしさがあり、男性ウケするタイプです。明るい性格なのに、男性にガツガツしないのは女性としては珍しいですね。
もし私のようなタイプが好きな変わった男性なら、私に近い別の看護師を選んだでしょうし、アンナのようなタイプが好きなら、また別の子だったでしょう。
私とアンナが一緒に選ばれたのは、不思議でしたね。
「そうかなぁ。私が選ばれたのはね、ホマレさんのお陰だと思うよ」
「え?」
私の心を見透かしたように、アンナが話しかけてきました。
「きっとね、ホマレさんがタイプだったんじゃないかな。私を選んだのは、ホマレさんとタイプが違う子を探したときに、目に止まったくらいかもね」
それは、どういう意味なんでしょうか。
彼女は人の機微に聡い子ですからね。そう思うだけの何かがあったということでしょう。
「あ、だからありがとうって言いたかっただけだよ。変な意味はないから安心してねっ」
彼女は嘘をつくのが苦手なので、本当に感謝しているものと思って大丈夫ですね。
感謝される意味はあんまり理解できませんでしたが、にぱっと笑いかけてくるアンナちゃんが可愛いので良しとしましょう。
アンナは仁軌様に一緒に選ばれた仲間です。
いつか2人揃って第2種の結婚をしていただくことを目指し、これから頑張ってアプローチしていかないといけませんね。
◇
とうっ!
仕事を終えて、ベッドに気持ちよくダイブ!
ホントに今日は、ラッキーでハッピーな1日だったなぁ。
ピロリンと、スマホが鳴った。
RINRINの通知音だと思って手に取ると、メッセージの差出人ところに『愛しのダーリン』の文字が出た。
こ、これは違くて、だって登録した名前は相手には分からないから、私の自由だし大丈夫大丈夫。って、誰かがこの画面を見てるわけじゃないのに、思わず言い訳をしてしまうくらいには焦っちゃった。
急いでメッセージを確認する。
今日のことでの感謝や、また会おうねという旨の内容だった。
男性に、しかも大好きな人から送られてくるメッセージがこんなに嬉しいなんて。私は枕に顔を埋めながら、ベッドの上で足をジタバタとさせてしまった。
って、いけない、いけない。
早く返信しないと既読無視ってやつになっちゃうよね。
「『こちらこそ、ありがと!』っと。『私もまた会いたいなっ』うーん、これで良いのかな? 男の人にメッセージなんて送ったことないから分かんないなぁ」
送信ボタンを押すか迷っていたら、ピロリンっとホマレさんからもメッセージが飛んできた。
このタイミングで私にメッセージって、内容がなんとなく予想できるね。
『大変です! 仁軌様から連絡がきました! アンナちゃん、どうしたら良いんでしょう!?』
プハッ、やっぱりだった。ホマレさんがスマホを両手で持ってアセアセしてる姿が浮かんできちゃったよ。
いつもは頼れる先輩って感じだけど、仁軌君のことになると、こんなに乙女になっちゃうなんて可愛くていいなぁ。
『ホマレさん。一緒に送る文面考えてあげるから、一回落ち着こっか』
ニヤニヤしながらホマレさんにメッセージを返す。
ホマレさんのお陰でなんだか冷静になれたよ。
これから仁軌君は、たくさんの女の子に囲まれて、色んな子に好かれていくはずだ。
私が仁軌君のことを忘れることは決してないけど、彼は私のことなんて忘れちゃうかもしれない。
ちょっとでも思い出してほしい。
ちょっとでも構ってもらいたい。
ちょっとでも長く一緒にいたい。
そんなわがままを叶えるためには、私1人の力じゃムリだ。
『一旦冷静にならないとですね。アンナちゃん、ありがとう。何か困ったことがあったらいつでも私に協力させてね』
「うん、ホマレさん。私たち助け合おうね」
ちょっと抜けてるところがあるホマレさんを、私が全力でサポートする。
私にない魅力は、ホマレさんに補ってもらう。
2人の力を合わせれば、私もちょっとくらいは可愛がってもらえるよね!
「よしっ、ホマレさんと協力していっぱい仁軌君にアピールしていくよ!」
そして一緒に彼を支えていこう!
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