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1章 始まりの一日

03 検査結果と1級冒険者

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「本日は大変お疲れ様でした。検査結果は1時間ほどお待ちいただければ、今日中にお伝えできますが如何いかがなさいますか?」

 ふぅ、ひかえめに言って最高だったな。

 何故か指名していない合法ロリこと上辺うわべ芦葉あしば看護部長まで部屋にいてせわしなく動いていたが、アンナちゃんとホマレさんは丁寧な仕事をしてくれた。

 途中「うわぁ、教本よりもスゴイですぅ」とか「これ以上スゴクなっちゃうんですか!?」と驚きの声がどこかから聞こえてきたが完璧な無視を決め込んだ。

 一度でおさまらずに「ウソウソ、まだスゴイんですか!?」とか、「量もスゴすぎて普通の容器じゃムリです!」とか外野の1名がとにかく騒いでいた。

 アンナちゃんとホマレさんは最初ロリのことなど頭に入らないくらい緊張していたものの、流石の騒ぎっぷりに少し苦笑いを浮かべてしまった。逆に緊張がほぐれて良かったかもしれない。

 頭も体もスッキリしたことだし、検査結果を待つ時間くらいは心に余裕がある。
 というより、もうしばらくアンナちゃんとホマレさんとのイチャイチャタイムを享受きょうじゅしていたい。

「早めに結果を知りたいので、このまま2人と一緒に待ってても良いですかね?」

 検査中に親睦しんぼくを深め、2人を名前で呼ぶ仲まで発展した。
 今日出会ったばかりで共に過ごした時間は短いけれど、そんなことが関係なくなるほど濃密な時間を一緒に過ごせたと思う。

 今でも2人は俺の腕に抱きつきながら隣に腰かけている。
 俗に言う、両手に花という状況を経験することになるとは。
 右腕のポヨポヨが最高です。これがIの狂喜……違った胸器だ。

「はい、勿論構いません。良かったわね、杏奈あんなさん、ほまれさん」

「うぅ、すっごく幸せです」
二条にじょう先生、有難うございます」

 抱き着いてくる力が強くなる2人に思わずほおがゆるんでしまう。

 アンナちゃんはそのまま俺の胸板に顔を押しつけてスンスンしていた。やっぱり犬っぽいな、この子。ナデナデしとこう。

 それから3人でイチャイチャすること1時間。

 院内がザワザワと騒がしくなり始めた。

 テクテクと小走りでやってきた合法ロリが、近くで待機している男性警護官のキョウカちゃんに何やら耳打ちをしていた。
 何かを聞いたキョウカちゃんは驚いた表情でこちらを一瞥いちべつしたのち、警戒を強めるように顔がけわしくなった。

「キョウカちゃん、何かあった?」

「すぐに二条にじょう先生から説明があります」

 気になった俺は素直に聞いてみることにしたが、何とも言えない表情で答えるキョウカちゃん。

 俺とずっと一緒に居て事情を知らないアンナちゃんとホマレさんはかなり心配そうな表情だ。

菅井すがい様、お待たせ致しました。既に検査結果は出ているのですが、想定外と申しますか、想定以上の結果が出てしまいまして、騒がしくなってしまいました。申し訳ありませんでした」

 深く頭を下げて謝罪する二条にじょう先生。

 まさかこれはひょっとして、ひょっとしちゃうやつなんじゃないか?

「検査の結果、菅井すがい様の精子ランクはAランク基準を遥かに超える数値を記録致しました」

「よしっ! Aランクだ!」

 当初の目論見もくろみ通り、最高ランクを叩き出した。

 まぁここまではテンプレ。
 加えてここからの展開もテンプレというやつだ。

「すぐに男性省に検査結果を報告したところ、特Aランクを新設した方が良いのではないかと提案がなされるくらいの影響がありました。近日中に議員の連名によって、内閣が招集する臨時国会が開かれ、議題になる模様です。わたくし知己ちきの議員に確認を取りましたが、ものの30分程度でとんでもない騒ぎになってしまったと嬉しい悲鳴をあげておりました」

 特Aランクの新設。

 大事おおごとになりつつあるが、ランクが高ければ特典も良くなるという制度上、悪いことにはならないだろうと内心で高をくくっている。

「ちなみにAランクはどれくらい特典があるんですか?」

 俺の問いに対して、二条にじょう先生はおもだった特典を教えてくれた。


「Aランクには配偶者の上限がなく、婚姻の義務も発生しません」

 何人でもめとって良いとか、やばいな。

 Fランク~Bランクは最低でも5人と結婚しなければならないが、Aランクは別に結婚しなくても大丈夫だそうだ。
 こっちは俺にはあんまり関係ないな。せっかくならハーレム作りたいし。


「自宅に配置する警護官の人数の制限もありません。費用も国から出ますのでご安心下さい」

 人件費は国が負担してくれる上に、雇う警護官も最優先で融通してくれるらしい。

 国から希望者のリストをもらい、こちらが面接官となって選んでいくスタイルのようだ。

 キョウカちゃんの鼻息が荒くなっている。募集したら希望する気だな?

 
「住居も国が用意してくれますし、新たに建ててもらうことも可能です」

 ついでに家賃や光熱費だけでなく家具の代金なども国が支払ってくれる。

 税金面でも免除免除免除。
 稼いだお金は全部自分で使えちゃうとか素晴らしいな。


「大きな収入になるのは任意の精子提供、献精です。匿名だと、一律100万円もらえます。オークションに出すと、落札価格の9割が銀行口座に振り込まれます」

 オークションに出すと提供者の顔写真と簡単なプロフィールが参加者に公開される。
 それが嫌なら匿名だが、オークションに出した方が値段は釣り上がるので、俺は後者でがっぽり稼いでみせよう。


 まとめるとAランクはハーレム上限なし。警護官選んで雇い放題。新しい家ももらえて、税金免除で収入もがっぽり。

 あ、でも、外を1人で出歩くとかはできない感じかな?

 貞操逆転世界で男性専用車両は使わず満員電車に乗り込んでもみくちゃになる、というテンプレができなくなりそうだ。

「出かけるときの警備ってどうなるんですかね?」

「在宅中も外出時も警備は影ながら行います。警護官に【隠密おんみつ】系スキルは必須技能ですのでご安心下さい」

 監視かんしの目はつくものの、自由までは制限されないと。
 隠密はスキルと言っていたがスキルはダンジョンで手に入れるのだろうか。疑問が尽きない。

「ん? キョウカちゃんどうしたの?」

 いつの間にかキョウカちゃんが挙手しながらこちらをチラチラ見ていたので指名する。
 何か伝えたいことでもあるのか?

「はぅ、また名前で……ん、んんっ。発言失礼致します。警護官目線で話しますと、外出されたいときは事前にご相談いただけますと対応がスムーズです。勿論急な外出にもすぐに対応しますが、行き先を教えていただいた方が助かります」

「なるほど、了解」

 まるで自分が警護官になる前提のような発言だったが、既にキョウカちゃんのことを気に入ってしまっている自分がいる。
 彼女が面接に来てくれるなら是非とも採用したいところだ。

菅井すがい様は暫定ざんていでA級となりますので最低でも3名以上の警護官は必須です」

「ご安心下さい。病院側で応援を要請しました。そろそろ到着する頃かと思います」

 二条にじょう先生の言葉に安心した様子のキョウカちゃん。
 流石にAランクの男性を護衛するのは1人じゃ荷が重いようだ。

「ひぃっ」
「噂をすれば、ですね」

 隣にいるアンナちゃんが悲鳴を上げた瞬間、背筋が凍りつくような感覚におちいる。
 ホマレさんは冷や汗をかきながらも冷静さを崩さずにトントンと俺の肩を叩き、威圧感のある方向に視線を向けた。

 威圧を感じたキョウカちゃんはすぐに俺をかばうように立ち位置を変えたが、その足はガクガクと震えていた。

「おぅ、めっちゃカッコいいじゃねぇか! A級って見た目はブサイクなやつが多いって聞いてたけど、噂なんかあてになんねぇな!」
赤根あかね、失礼。【威圧】めて」
「あっすまねぇ、マロン。驚き過ぎて【手加減】切れてたわ。病院の人たちにも悪いことしちまったな」
「謝れて偉い。脳筋」

 視界に映ったのは、大柄で筋肉質な赤髪の女性と、小柄でひ弱そうな水色髪の少女。

「アタシは1級冒険者の山部やまべ赤根あかねだ。臨時の警護官だけどしっかり守ってやるからな!」
柿本かきもとマロン。よろしく」

 柿なのかくりなのか分かりづらい名前だ。
 そんなことよりも1級冒険者とは、とんでもない人物が出てきたなぁ。

 この人たちに守ってもらえるのは心強い。

「マロンの弱点はお察しだな!」
「黙って。旦那様の前で失礼」
「ちょっと待て、旦那様ってなんだよ?」
「私は旦那様の手付きになる。子供を産む。決定事項」
「はぁ、そんなの勝手に決めてるお前の方が失礼だろうが。アタシらは正式な警護官が決まるまでのつなぎだ。アタシもマロンも、実力的には問題ねぇけど他が問題だらけだからなぁ。選ばれるわけないって」
「チッ、脳筋にしては賢い」
「うぉい! 舌打ちすんなって。Aランクの男性の前だぞ! って、アタシら急に呼び出されたから警護対象の名前も聞いてなかったな」
「名前を知らずとも、旦那様と呼ぶから大丈夫」
「それが大丈夫じゃないんだよ! ったくもう」

 豪快に下ネタを言ってカラカラと笑うアカネに、勝手な妄想を当然のように語るマロン。

 そして2人の無駄に息の合った軽妙けいみょうな掛け合いに、俺を含めみんなポカーンとながめることしかできなかった。

山部やまべ様、柿本かきもと様。こちらはAランクの男性菅井すがい仁軌じんき様です」

 一足先にポカーン状態から復帰した二条にじょう先生が、俺のことを紹介してくれた。

「あぁ、えっと山部やまべさんに柿本かきもとさんですね。お二方ふたかたともよろしくお願いします」

「ジンキさん、男なのに随分ずいぶん丁寧ていねいだな。アタシに敬語は必要ねぇよ。逆に敬語とか使えないガサツな女で悪いがちょっとの間は辛抱してくれ。あと、気楽にアカネでいいぞ」
「マロン。貴方の未来の妻。うん、旦那様、凄いスキル。夜が楽しみ」
「バッカ! お前【ステータス鑑定】使いやがったな!? 許可なしで警護対象に使ったら、しょっかれるぞっ!」
迂闊うかつだった。逮捕たいほされる。結婚できない。無念。ガクッ」

 え、スキル?

 まだダンジョンに潜ってない俺にスキルがあるのか?

「あの、マロンさん。俺、自分がどんなスキルを持っているのか知らないので、教えてもらっても良いですか? 勝手にスキルを見たことは全然構わないんで」

「旦那様優しい。好き。旦那様の初期スキルは【女難じょなん】、【夜の帝王】、【男聖だんせい】、の3つ。まさかの聖級スキル所有者ホルダー。驚きを禁じえない」

「はぁっ?! 聖級ってマジかよ。【男精】スキルが覚聖かくせいしてんのか。ってことは、ジンキさんって……」





「「「「世界一の男性!」」」」


 

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