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第1部 護衛編
戸惑いと執着②:レインフォード視点
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リオンは傷は多いが重症ではない。
ランも言っていたが、もう大人のリオンにずっと傍にいる必要は無いのだ。
「でも、リオンが目覚めた時、一人だと寂しくないですか?誰か居た方が安心しますよね」
スカーは当たり前のようにそう言い切った。
(もしかして俺が怪我をして眠ったときにも傍にいてくれたのはそういう理由だったのかもしれないな)
いつ目を覚ますか分からない自分の傍で看護したり、リオンの時には徹夜で看護しようとする。
このような行動をしても、スカーにはメリットはない。
(そんな風に損得抜きに誰かに寄り添おうするから余計に心配になるし気になってしまう)
気になる…というのが、仲間としてだけではないことはこの時点でも薄々気づいていたが、あえて気づかないふりをした。
だけど、思ってしまう。
一人で頑張ろうとするスカーの力になりたいし、もっと頼って欲しい。
一人で苦労を背負わないで欲しい、と。
それはスカーの性別が分かった今でも変わらない。
スカー自分を性別を偽っていたことになるが、それ対して責める気持ちにはなれなかった。
これまでのことで、スカーには打算があったわけでもなく、純粋に自分を守るために付いて来ていたことが分かったからだ。
他にも、シャロルクで傷を負ったレインフォードを心配すぎるくらい心配してくれた。
普通ならば鬱陶しいと思うかもしれなかったが、スカーに心配されるのは悪い気はしなかった。
それは小気味よいテンポで話せて、気が楽だったからかもしれない。
一緒に居て心地よいとも思った。
だから、だろうか。
あれほど嫌悪していた女なのに、スカーに対しては不思議と嫌だとは思わなかった。
たしかに今、見れば見るほどスカーが女性にしか思えない。
柔らかな肢体。
小さな手。
つぶらな瞳。
少し照れて色ずく頬。
ぷっくりとしてピンクの唇。
意識したら急にドクンと心臓が高鳴った。
(そう言えば、このような感情を抱いたことは何度かあった)
確かに思い返せばスカーが女であることに納得できる出来事もあった。
グノックで風呂上がりのスカーに会った時もそうだ。
上気した頬、濡れた髪。
ただそれだけなはずなのに、スカーから何か色気のようなものを感じてしまい、鼓動が大きな音を立てた。
触れたいと思って、気づいたら緋色の髪に触れていた。
そんな自分に戸惑う
(相手は男だぞ!?)
それを誤魔化すように髪を拭いて、冷静さを保とうとした。
だが、逆効果だった。
上目遣いで怒る素振りを見せたかと思うと、次の瞬間には満面の笑みを浮かべて言ったきた。
「もう!ボクは犬じゃないですよ。でも、ありがとうございます」
(可愛すぎる…って、だから相手は男だ)
自分の感情が分からず混乱していると、アルベルトが慌てたようすで会話に入ってきて、2人は共に去って行った。
そのスカーの後ろ姿を見送って、レインフォードは安堵のため息をついた。
ある意味助かったかもしれない。
あのままスカーと2人でいたら、抱きしめるくらいはしていただろう。
(男に抱き着きたいだなんて、俺は変態か)
自分に生まれた感情に自己嫌悪してしまったものである。
まぁ、今思い返せば女性に対してなのだから、そんなよこしまな感情も仕方ないと言えば仕方ない…かもしれない。
それにルーダスで襲撃される少し前にも、スカーに意図せずドキリとしてしまったことがあった。
思いもよらず部屋へと来たスカーに手当を頼んだときだ。
服を脱いで傷を見せたら、何故かスカーは動揺したように声を上ずらせたうえ、その顔を赤くした。
そしておずおずとしながらもレインフォードの傷に薬を塗った。
だが予想よりも柔らかいスカーの指の感触に驚いてしまった。
男性の物とは思えない。
薬を塗った指先が離れるのが惜しいと思ってしまった。
もっと触れていて欲しい、などとぼんやりと思う。
手慣れた様子で包帯を巻くときに見えた手は、自分のものよりもずっと小さかった。
この小さな手が剣を握り、そして手練れの刺客と闘うのが不思議だ。
(女性のような手だな)
スカーの手を見つめながら思っているうちに、手当てが終わってしまった。
もっとスカーと触れていたい…などと、また変態のようなことを思ってしまい、レインフォードはまた自己嫌悪に陥る。
そうやってなんとなくスカーを意識しているうちに、とうとうドルンストまで来てしまった。
リオンが裏切っていることは分かっていたので、正直あまりショックではないが、むしろこのままスカーと離れることの方が辛い。
(やっぱり王都に連れて行きたい)
何故執着してしまうのか…
官僚として傍に置きたいからか、それとも…?
その感情はまだはっきりとは分からないが、一つだけ分かっているのは、王都に行けばスカーが自分の元から去ってしまうということだ。
(ともかくスカーの正体を知ったことは当面は伏せておくことにしよう)
下手に言って逃れられたら目も当てられない。
スカーのことだから、他の女のように自分を誘惑しようとか、レインフォードを亡き者にしようとか、すり寄って権力を得ようなどということはないだろう。
だからレインフォードはスカーの秘密を知ったことは告げないことにした。
それよりもまずは、自分の元にスカーを留める方法を考えなくては。
(そう言えば、そろそろ時期だな)
一つ妙案が浮かんだ。王都に着いたらすぐにでも行動しよう。
絶対に逃がさない。
そう思ってレインフォードは優しくスカーの頬を撫でた。
ランも言っていたが、もう大人のリオンにずっと傍にいる必要は無いのだ。
「でも、リオンが目覚めた時、一人だと寂しくないですか?誰か居た方が安心しますよね」
スカーは当たり前のようにそう言い切った。
(もしかして俺が怪我をして眠ったときにも傍にいてくれたのはそういう理由だったのかもしれないな)
いつ目を覚ますか分からない自分の傍で看護したり、リオンの時には徹夜で看護しようとする。
このような行動をしても、スカーにはメリットはない。
(そんな風に損得抜きに誰かに寄り添おうするから余計に心配になるし気になってしまう)
気になる…というのが、仲間としてだけではないことはこの時点でも薄々気づいていたが、あえて気づかないふりをした。
だけど、思ってしまう。
一人で頑張ろうとするスカーの力になりたいし、もっと頼って欲しい。
一人で苦労を背負わないで欲しい、と。
それはスカーの性別が分かった今でも変わらない。
スカー自分を性別を偽っていたことになるが、それ対して責める気持ちにはなれなかった。
これまでのことで、スカーには打算があったわけでもなく、純粋に自分を守るために付いて来ていたことが分かったからだ。
他にも、シャロルクで傷を負ったレインフォードを心配すぎるくらい心配してくれた。
普通ならば鬱陶しいと思うかもしれなかったが、スカーに心配されるのは悪い気はしなかった。
それは小気味よいテンポで話せて、気が楽だったからかもしれない。
一緒に居て心地よいとも思った。
だから、だろうか。
あれほど嫌悪していた女なのに、スカーに対しては不思議と嫌だとは思わなかった。
たしかに今、見れば見るほどスカーが女性にしか思えない。
柔らかな肢体。
小さな手。
つぶらな瞳。
少し照れて色ずく頬。
ぷっくりとしてピンクの唇。
意識したら急にドクンと心臓が高鳴った。
(そう言えば、このような感情を抱いたことは何度かあった)
確かに思い返せばスカーが女であることに納得できる出来事もあった。
グノックで風呂上がりのスカーに会った時もそうだ。
上気した頬、濡れた髪。
ただそれだけなはずなのに、スカーから何か色気のようなものを感じてしまい、鼓動が大きな音を立てた。
触れたいと思って、気づいたら緋色の髪に触れていた。
そんな自分に戸惑う
(相手は男だぞ!?)
それを誤魔化すように髪を拭いて、冷静さを保とうとした。
だが、逆効果だった。
上目遣いで怒る素振りを見せたかと思うと、次の瞬間には満面の笑みを浮かべて言ったきた。
「もう!ボクは犬じゃないですよ。でも、ありがとうございます」
(可愛すぎる…って、だから相手は男だ)
自分の感情が分からず混乱していると、アルベルトが慌てたようすで会話に入ってきて、2人は共に去って行った。
そのスカーの後ろ姿を見送って、レインフォードは安堵のため息をついた。
ある意味助かったかもしれない。
あのままスカーと2人でいたら、抱きしめるくらいはしていただろう。
(男に抱き着きたいだなんて、俺は変態か)
自分に生まれた感情に自己嫌悪してしまったものである。
まぁ、今思い返せば女性に対してなのだから、そんなよこしまな感情も仕方ないと言えば仕方ない…かもしれない。
それにルーダスで襲撃される少し前にも、スカーに意図せずドキリとしてしまったことがあった。
思いもよらず部屋へと来たスカーに手当を頼んだときだ。
服を脱いで傷を見せたら、何故かスカーは動揺したように声を上ずらせたうえ、その顔を赤くした。
そしておずおずとしながらもレインフォードの傷に薬を塗った。
だが予想よりも柔らかいスカーの指の感触に驚いてしまった。
男性の物とは思えない。
薬を塗った指先が離れるのが惜しいと思ってしまった。
もっと触れていて欲しい、などとぼんやりと思う。
手慣れた様子で包帯を巻くときに見えた手は、自分のものよりもずっと小さかった。
この小さな手が剣を握り、そして手練れの刺客と闘うのが不思議だ。
(女性のような手だな)
スカーの手を見つめながら思っているうちに、手当てが終わってしまった。
もっとスカーと触れていたい…などと、また変態のようなことを思ってしまい、レインフォードはまた自己嫌悪に陥る。
そうやってなんとなくスカーを意識しているうちに、とうとうドルンストまで来てしまった。
リオンが裏切っていることは分かっていたので、正直あまりショックではないが、むしろこのままスカーと離れることの方が辛い。
(やっぱり王都に連れて行きたい)
何故執着してしまうのか…
官僚として傍に置きたいからか、それとも…?
その感情はまだはっきりとは分からないが、一つだけ分かっているのは、王都に行けばスカーが自分の元から去ってしまうということだ。
(ともかくスカーの正体を知ったことは当面は伏せておくことにしよう)
下手に言って逃れられたら目も当てられない。
スカーのことだから、他の女のように自分を誘惑しようとか、レインフォードを亡き者にしようとか、すり寄って権力を得ようなどということはないだろう。
だからレインフォードはスカーの秘密を知ったことは告げないことにした。
それよりもまずは、自分の元にスカーを留める方法を考えなくては。
(そう言えば、そろそろ時期だな)
一つ妙案が浮かんだ。王都に着いたらすぐにでも行動しよう。
絶対に逃がさない。
そう思ってレインフォードは優しくスカーの頬を撫でた。
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