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第1部 護衛編
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「ねぇリオン。この粉末ってウコン?」
「ウコン?いいえ、ウコンというものではないですが…」
「そうなんだ。何の薬?」
「それは…、痛み止めです」
「じゃあ、リオンも傷が痛かったら飲んだ方がいいかもね」
痛み止めがあるならば安心だ。
一応スカーレットもバルサー家で使用している傷薬と痛み止めは持ってきているものの、量は多くない。
最悪はリオンのを貰うことにしよう。
「僕の傷は耐えられない痛さじゃないので」
「そっか」
そんな話をしているうちに薬湯が完成し、アルベルト達に飲ませると、ようやく青かった顔色が通常の肌色に戻った。
「はぁ…生き返る」
痛み止めがあるならば安心だ。
一応スカーレットもバルサー家で使用している傷薬と痛み止めは持ってきているものの、量は多くない。
最悪はリオンのを貰うことにしよう。
「僕のは耐えられない痛さじゃないので」
「そっか」
そんな話をしている内に薬湯が完成し、アルベルト達に飲ませると、ようやく青かった顔色が通常の肌色に戻った。
「はぁ…生き返る」
「もう、ラン。当分禁酒だから」
「えっ!?そ、そんな!もちろんルイとアルベルトもだよな?」
「ランだけだよ」
スカーレットの言葉にランが慌てて詰め寄った。
「ちょっと待ってくれよ!だって飲んだのは3人でだろ?なんで俺だけなんだよ!」
「そんなの諸悪の根源だからに決まってるだろ」
スカーレットの言葉に今回巻き込まれたルイとアルベルトは勝ち誇った顔をした。
「ま、当然と言えば当然だ」
「本当だよ。僕達は巻き込まれただけだからね。でも僕はスカーに言われなくても酒は当面飲みたくないけどさ」
「ひでー。こういうのは連帯責任だろ!」
焦るランにルイとアルベルトはどこ吹く風で他人事の様子でランを見た。
ルイに至ってはその態度から「ザマァ」と言っているような雰囲気が伝わって来る。
「ちっ…でも部屋で飲めば分からないんじゃ…」
ぽそりと言ったランの言葉がスカーレットの耳に入って来る。
これは灸を据えないとだめだろう。
「もし、一滴でも飲んだら…」
「…飲んだら?」
「バルサー家の地獄の特訓合宿に強制参加させるからね」
「ひいいい、わ、分かった…飲まない」
折角戻った顔色が再び青くなっているランを見たレインフォードは、隣に座るアルベルトに耳打ちして尋ねた。
「地獄の特訓合宿ってなんなんだ?」
「あぁ、父がバルサー家に仕える騎士を鍛えるために定期的に行う合宿です。百戦錬磨の騎士でさえ吐きながら倒れる特訓メニューをこなすんですよ」
そうしてアルベルトは特訓内容をレインフォードに小声で伝えたが、それを聞いたレインフォードは眉間に皺を寄せて口元を覆った。
「いや、もういい。聞いているだけで辛い」
そうしてスカーレットはランにそう言い渡した後、レインフォードに向かって行った。
「レインフォード様、失礼しました。それでこれからの確認ですが、このままリエノスヴートに向かうことでよかったでしょうか?」
「ああ、そうだな。時間的には今日はそこに泊ることでいいだろう。このままなら日暮れまでには着けるだろうし」
「それなのですけど、リオンから聞いた話だとこの辺りは先日雨が降ったらしいのです。加えて下り坂が続くようです」
スカーレットがそう言うと、リオンも頷く。それを見てスカーレットは話を続けた。
「それで少し道のコンディションは悪いと推測されますし、馬に乗って移動というのは難しいと思います。だから基本は徒歩で進むことを考えると、日暮れにリエノスヴートに着くのはぎりぎりかもしれないです。まぁ、可能性の問題なのですが一応ご報告しておきます」
「なるほどな。じゃあ、できる限りリエノスヴートに着くようにしたいが無理はしないでおこう。リエノスヴートまで行けなかった場合は野宿…は、この天気なら厳しいかもしれないな」
レインフォードは空を見上げたので、スカーレットもつられるように空を見上げた。
上空は先ほどよりも更に雲が厚く立ち込めている。多分、このままだと雨が降る可能性があるとレインフォードは示唆したのだろう。
「確か、リエノスヴートの前に街があったはずだな」
レインフォードの言葉に、アルベルトが持っていた地図を出した。
ここから先に大きな川があり、それを越えた先にルーダスという小さな町があるようだ。
「リエノスヴートまで行けなかったらこの町に泊まろう。リオンの傷もあるし、あまり無理はしたくない」
「僕は大丈夫です!」
「それにうちにはもう一匹怪我人がいるしな」
そう言ってレインフォードはスカーレットが下げている袋に入ったライザック・ド・リストレアンを見て、くすりと笑った。
「ということで、俺も急ぎたい気持ちはあるが皆に無理はさせたくない。無理のない範囲でリエノスヴートを目指そう。どうせリエノスヴートを越えれば、王都まではすぐだ」
「分かりました」
こうして再び歩き出したスカーレット達だったが、残念ながら悪い想定が当たってしまい、山道は悪路だった。
ぬかるみが多く、傾斜がきつい場所がいつくもあり、馬に乗っての移動はできなかった。
結果、徒歩で進むことになっため、この調子ではやはりリエノスヴートに日暮れまで辿り着くのは難しい状況になった。
「無理すればリエノスヴートに行けなくないけど…微妙なラインだね」
隣に馬をつけたアルベルトがスカーレットに話してきたので、頷いて言葉を返した。
「そうね。でももし行くのであれば雨が降る前に辿り着ければいいんだけど」
「まぁ、この山道を抜ければ平地だから馬を走らせれば余裕でつけると思うよ」
そう、この山道が一番の問題なのだ。
だから、ここさえ抜ければ後は楽に進めるはずだ。
そう思っていたスカーレットだったが、まったく予想していなかった事態に直面した。
ようやく山を抜け、平坦な道に出たスカーレット達は予定通り馬を走らせた。
この先には大きな川があり、リエノスヴートへ行くためにはその川を越える必要がある。
だが、その川を前にしてスカーレット達は立ち尽くした。
「うそ…橋が…ない?」
そう、リエノスヴートへ続く橋が無くなっていたのだった。
「ウコン?いいえ、ウコンというものではないですが…」
「そうなんだ。何の薬?」
「それは…、痛み止めです」
「じゃあ、リオンも傷が痛かったら飲んだ方がいいかもね」
痛み止めがあるならば安心だ。
一応スカーレットもバルサー家で使用している傷薬と痛み止めは持ってきているものの、量は多くない。
最悪はリオンのを貰うことにしよう。
「僕の傷は耐えられない痛さじゃないので」
「そっか」
そんな話をしているうちに薬湯が完成し、アルベルト達に飲ませると、ようやく青かった顔色が通常の肌色に戻った。
「はぁ…生き返る」
痛み止めがあるならば安心だ。
一応スカーレットもバルサー家で使用している傷薬と痛み止めは持ってきているものの、量は多くない。
最悪はリオンのを貰うことにしよう。
「僕のは耐えられない痛さじゃないので」
「そっか」
そんな話をしている内に薬湯が完成し、アルベルト達に飲ませると、ようやく青かった顔色が通常の肌色に戻った。
「はぁ…生き返る」
「もう、ラン。当分禁酒だから」
「えっ!?そ、そんな!もちろんルイとアルベルトもだよな?」
「ランだけだよ」
スカーレットの言葉にランが慌てて詰め寄った。
「ちょっと待ってくれよ!だって飲んだのは3人でだろ?なんで俺だけなんだよ!」
「そんなの諸悪の根源だからに決まってるだろ」
スカーレットの言葉に今回巻き込まれたルイとアルベルトは勝ち誇った顔をした。
「ま、当然と言えば当然だ」
「本当だよ。僕達は巻き込まれただけだからね。でも僕はスカーに言われなくても酒は当面飲みたくないけどさ」
「ひでー。こういうのは連帯責任だろ!」
焦るランにルイとアルベルトはどこ吹く風で他人事の様子でランを見た。
ルイに至ってはその態度から「ザマァ」と言っているような雰囲気が伝わって来る。
「ちっ…でも部屋で飲めば分からないんじゃ…」
ぽそりと言ったランの言葉がスカーレットの耳に入って来る。
これは灸を据えないとだめだろう。
「もし、一滴でも飲んだら…」
「…飲んだら?」
「バルサー家の地獄の特訓合宿に強制参加させるからね」
「ひいいい、わ、分かった…飲まない」
折角戻った顔色が再び青くなっているランを見たレインフォードは、隣に座るアルベルトに耳打ちして尋ねた。
「地獄の特訓合宿ってなんなんだ?」
「あぁ、父がバルサー家に仕える騎士を鍛えるために定期的に行う合宿です。百戦錬磨の騎士でさえ吐きながら倒れる特訓メニューをこなすんですよ」
そうしてアルベルトは特訓内容をレインフォードに小声で伝えたが、それを聞いたレインフォードは眉間に皺を寄せて口元を覆った。
「いや、もういい。聞いているだけで辛い」
そうしてスカーレットはランにそう言い渡した後、レインフォードに向かって行った。
「レインフォード様、失礼しました。それでこれからの確認ですが、このままリエノスヴートに向かうことでよかったでしょうか?」
「ああ、そうだな。時間的には今日はそこに泊ることでいいだろう。このままなら日暮れまでには着けるだろうし」
「それなのですけど、リオンから聞いた話だとこの辺りは先日雨が降ったらしいのです。加えて下り坂が続くようです」
スカーレットがそう言うと、リオンも頷く。それを見てスカーレットは話を続けた。
「それで少し道のコンディションは悪いと推測されますし、馬に乗って移動というのは難しいと思います。だから基本は徒歩で進むことを考えると、日暮れにリエノスヴートに着くのはぎりぎりかもしれないです。まぁ、可能性の問題なのですが一応ご報告しておきます」
「なるほどな。じゃあ、できる限りリエノスヴートに着くようにしたいが無理はしないでおこう。リエノスヴートまで行けなかった場合は野宿…は、この天気なら厳しいかもしれないな」
レインフォードは空を見上げたので、スカーレットもつられるように空を見上げた。
上空は先ほどよりも更に雲が厚く立ち込めている。多分、このままだと雨が降る可能性があるとレインフォードは示唆したのだろう。
「確か、リエノスヴートの前に街があったはずだな」
レインフォードの言葉に、アルベルトが持っていた地図を出した。
ここから先に大きな川があり、それを越えた先にルーダスという小さな町があるようだ。
「リエノスヴートまで行けなかったらこの町に泊まろう。リオンの傷もあるし、あまり無理はしたくない」
「僕は大丈夫です!」
「それにうちにはもう一匹怪我人がいるしな」
そう言ってレインフォードはスカーレットが下げている袋に入ったライザック・ド・リストレアンを見て、くすりと笑った。
「ということで、俺も急ぎたい気持ちはあるが皆に無理はさせたくない。無理のない範囲でリエノスヴートを目指そう。どうせリエノスヴートを越えれば、王都まではすぐだ」
「分かりました」
こうして再び歩き出したスカーレット達だったが、残念ながら悪い想定が当たってしまい、山道は悪路だった。
ぬかるみが多く、傾斜がきつい場所がいつくもあり、馬に乗っての移動はできなかった。
結果、徒歩で進むことになっため、この調子ではやはりリエノスヴートに日暮れまで辿り着くのは難しい状況になった。
「無理すればリエノスヴートに行けなくないけど…微妙なラインだね」
隣に馬をつけたアルベルトがスカーレットに話してきたので、頷いて言葉を返した。
「そうね。でももし行くのであれば雨が降る前に辿り着ければいいんだけど」
「まぁ、この山道を抜ければ平地だから馬を走らせれば余裕でつけると思うよ」
そう、この山道が一番の問題なのだ。
だから、ここさえ抜ければ後は楽に進めるはずだ。
そう思っていたスカーレットだったが、まったく予想していなかった事態に直面した。
ようやく山を抜け、平坦な道に出たスカーレット達は予定通り馬を走らせた。
この先には大きな川があり、リエノスヴートへ行くためにはその川を越える必要がある。
だが、その川を前にしてスカーレット達は立ち尽くした。
「うそ…橋が…ない?」
そう、リエノスヴートへ続く橋が無くなっていたのだった。
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