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第1部 護衛編
婚約破棄された悪役令嬢③
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例えば騎士団長であるカヴィンルートでは、カヴィンに密かに片想いをしていたスカーレットは、カヴィンと親密になるミラに嫌がらせをし、殺そうとまで画策する。それをカヴィンに断罪されて投獄され一生幽閉となるのだ。
他にもアルベルトルートでは、バルサー伯爵家の財産を狙っているという妄執にかられ、アルベルトとミラを亡き者にしようとする役どころだ。
こちらは国外追放の後に、山賊に襲われて死亡するというエンディングだ。
そして今回のデニスルートについてだが、婚約者であるデニスを奪われまいとして、ミラにあらぬ罪を擦り付け、社交界から排除しようと画策するのだが、結果としては婚約パーティーで断罪され、婚約破棄されるのだ。
その後は社交界での居場所を失ったスカーレットは毒を飲み自殺するという結末を迎える。
今回婚約破棄されたということはデニスルートになったわけだ。
ただデニスルートであるならばパーティーで断罪されるわけではあるが、悪役令嬢であるスカーレットは婚約破棄されたものの結果として公開断罪にはならなかった。
何故だろうかという疑問も若干あるが、そこはまぁゲームと全く同じにはならないのかもしれない。
それより重要なのは、デニスルートのエンディングが終わった今、他のルートにはいかなかったわけで、投獄や国外追放、死亡などのルートは辿らずに済んだことになる。
(そのことだけは不幸中の幸いよね)
「さん?…姉さん。スカー義姉さん!」
「えっ!?」
急に名前を呼ばれたのでハッと我に返った。
どうやらこの間の婚約破棄のことを思い出していてぼうっとしていたようだ。
「どうしたの?やっぱり傷が痛む?具合悪い?馬車で轢かれた傷が癒えてないのに剣の訓練なんてやっぱり無茶だったんだよ」
スカーレットは婚約破棄された後、馬車に跳ねられて重体となり5日ほど昏睡状態に陥ったらしい。
外傷は殆どなかったものの意識が戻らず、医者も手立てがないと匙を投げるほどだったとアルベルトから聞いた時にはスカーレット自身も驚いてしまった。
(それをきっかけにこの世界が乙女ゲームだって分かったんだけどね)
「全然平気よ。ちょっとこの間の事を思い出しちゃっただけ」
スカーレットとしは特に深い意図はなくそう言ったのだが、その言葉を聞いたアルベルトは痛ましい表情をして眉を潜めた。
アルベルトの様子から婚約破棄のことをスカーレット以上に心を痛めていることを察し、慌てて弁解した。
「そんな顔しないで!ほんっとに全然落ち込んでないのよ。そりゃ最初は今までの努力が無駄になったことがショックだったけど、別にデニス様と結婚したいわけじゃなかったし。私としてはもう自分を偽って大人しくしているのも限界だったし…」
騎士の家系で、かつ剣術の好きなスカーレットとしては剣を持てないことはストレスであり、また快闊な性格のスカーレットがお淑やかに小さくほほ笑んで「ほほほ」と笑うのも無理があった。
相当のストレスであったため、遅かれ早かれ限界は来ていたかもしれない。
「アルも無事に卒業できたしもう学費の援助も不要でしょ?だから婚約破棄された方が結果的に良かったわ。ただ、もうラウダーデン家の援助は受けれないから貧乏生活になっちゃうと思うけど」
「そのことはもういいんだよ。これまで義姉さんに甘えてた僕達が悪いんだし、父上も気にしなくていいって言ってたじゃないか」
今回婚約破棄されたことについては、父もアルベルトもデニスに対して怒りこそすれ、スカーレットを責めることはなく、むしろ屋敷に戻ってきたことを喜んでくれた。
そのことはスカーレットにとって救いであり、2人には感謝しかない。
「それに王都からこっちまで一緒に来てくれて迷惑をかけたわね。でももう明日帰っちゃうんでしょ?」
「うん、ごめんね。参加必須の研修があるんだ」
現在スカーレットは領地であるシャロルクに来ている。
父はシャロルクの屋敷に住み、スカーレットとアルベルトは王都の屋敷に住んでいたのだが、婚約破棄の件がありスカーレットはシャロルクで暮らすことにしたのだ。
アルベルトは今年官吏として王宮勤めをし始めたのだが、一人で領地に向かおうとするスカーレットを心配して一緒に付いて来てくれたのだ。
「本当はもっと3人で過ごしたかったんだけどね」
「それは次の機会にね。私はもうお嫁にはいかないんだから父様と二人でずっとシャロルクに居るんだし、アルベルトが返って来るのを待ってるわ」
「お嫁に行く気はないの?」
「ええ。婚約破棄された女と結婚したいって男性なんて現れないと思うし。というかこの歳じゃもう行き遅れでしょ?それにもう淑女を演じるのはこりごりよ」
もう今までのように女だからダメとか、女だからこうしなくちゃいけない、といって我慢する生活はうんざりだ。
他にもアルベルトルートでは、バルサー伯爵家の財産を狙っているという妄執にかられ、アルベルトとミラを亡き者にしようとする役どころだ。
こちらは国外追放の後に、山賊に襲われて死亡するというエンディングだ。
そして今回のデニスルートについてだが、婚約者であるデニスを奪われまいとして、ミラにあらぬ罪を擦り付け、社交界から排除しようと画策するのだが、結果としては婚約パーティーで断罪され、婚約破棄されるのだ。
その後は社交界での居場所を失ったスカーレットは毒を飲み自殺するという結末を迎える。
今回婚約破棄されたということはデニスルートになったわけだ。
ただデニスルートであるならばパーティーで断罪されるわけではあるが、悪役令嬢であるスカーレットは婚約破棄されたものの結果として公開断罪にはならなかった。
何故だろうかという疑問も若干あるが、そこはまぁゲームと全く同じにはならないのかもしれない。
それより重要なのは、デニスルートのエンディングが終わった今、他のルートにはいかなかったわけで、投獄や国外追放、死亡などのルートは辿らずに済んだことになる。
(そのことだけは不幸中の幸いよね)
「さん?…姉さん。スカー義姉さん!」
「えっ!?」
急に名前を呼ばれたのでハッと我に返った。
どうやらこの間の婚約破棄のことを思い出していてぼうっとしていたようだ。
「どうしたの?やっぱり傷が痛む?具合悪い?馬車で轢かれた傷が癒えてないのに剣の訓練なんてやっぱり無茶だったんだよ」
スカーレットは婚約破棄された後、馬車に跳ねられて重体となり5日ほど昏睡状態に陥ったらしい。
外傷は殆どなかったものの意識が戻らず、医者も手立てがないと匙を投げるほどだったとアルベルトから聞いた時にはスカーレット自身も驚いてしまった。
(それをきっかけにこの世界が乙女ゲームだって分かったんだけどね)
「全然平気よ。ちょっとこの間の事を思い出しちゃっただけ」
スカーレットとしは特に深い意図はなくそう言ったのだが、その言葉を聞いたアルベルトは痛ましい表情をして眉を潜めた。
アルベルトの様子から婚約破棄のことをスカーレット以上に心を痛めていることを察し、慌てて弁解した。
「そんな顔しないで!ほんっとに全然落ち込んでないのよ。そりゃ最初は今までの努力が無駄になったことがショックだったけど、別にデニス様と結婚したいわけじゃなかったし。私としてはもう自分を偽って大人しくしているのも限界だったし…」
騎士の家系で、かつ剣術の好きなスカーレットとしては剣を持てないことはストレスであり、また快闊な性格のスカーレットがお淑やかに小さくほほ笑んで「ほほほ」と笑うのも無理があった。
相当のストレスであったため、遅かれ早かれ限界は来ていたかもしれない。
「アルも無事に卒業できたしもう学費の援助も不要でしょ?だから婚約破棄された方が結果的に良かったわ。ただ、もうラウダーデン家の援助は受けれないから貧乏生活になっちゃうと思うけど」
「そのことはもういいんだよ。これまで義姉さんに甘えてた僕達が悪いんだし、父上も気にしなくていいって言ってたじゃないか」
今回婚約破棄されたことについては、父もアルベルトもデニスに対して怒りこそすれ、スカーレットを責めることはなく、むしろ屋敷に戻ってきたことを喜んでくれた。
そのことはスカーレットにとって救いであり、2人には感謝しかない。
「それに王都からこっちまで一緒に来てくれて迷惑をかけたわね。でももう明日帰っちゃうんでしょ?」
「うん、ごめんね。参加必須の研修があるんだ」
現在スカーレットは領地であるシャロルクに来ている。
父はシャロルクの屋敷に住み、スカーレットとアルベルトは王都の屋敷に住んでいたのだが、婚約破棄の件がありスカーレットはシャロルクで暮らすことにしたのだ。
アルベルトは今年官吏として王宮勤めをし始めたのだが、一人で領地に向かおうとするスカーレットを心配して一緒に付いて来てくれたのだ。
「本当はもっと3人で過ごしたかったんだけどね」
「それは次の機会にね。私はもうお嫁にはいかないんだから父様と二人でずっとシャロルクに居るんだし、アルベルトが返って来るのを待ってるわ」
「お嫁に行く気はないの?」
「ええ。婚約破棄された女と結婚したいって男性なんて現れないと思うし。というかこの歳じゃもう行き遅れでしょ?それにもう淑女を演じるのはこりごりよ」
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