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番外編
ルシアン視点:覚悟
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ナルサスの突然の求婚で、バークレー家は騒然となるが、同時にルシアンの心中も大荒れだった。
だが、同時に更なる問題が発生する。
ソフィアナがダンテに一目惚れしたのだ。
ルシアンとナルサスは互いにいがみあい、嫌味の応酬を繰り広げるもののリディ・ルシアン・ナルサスの3人で2人を恋人にしようと画策した。
その流れでルシアンはリディとは久しぶりにゆっくりとデートをすることになった。
ふと公園の東屋にリディと共に行ってみることにした。
リディとの思い出の場所。
もしかしてルシアンの事を少しは覚えていてくれているのではないか。
そんな思いもわずかにあった。
「ここは“彼女”と会ったところだからな。思い出深い」
東屋に着いてリディと並んでライラックを眺めながらルシアンがそう言うと、リディは一瞬何かに気づいたような表情を見せたのだが、案の定ルシアンのことは覚えていないようだ。
「そうでしたか…なるほどなるほど。本当、彼女、早く見つかるといいんですけど」
(その彼女は君なのに。やはり覚えてはいないのだな)
笑いながら告げるリディの言葉に、一瞬の寂寥感がルシアンの胸に去来した。
だが、最近は過去にリディと会った僅かな時間に思いを馳せるよりも、今、現在、この時間をリディとゆっくり過ごしたいという思いの方が強くなっていた。
そしてこれからもリディと共に過ごし、生きていきたい。
「じゃあ、ほら私に寄りかかって眠っていただいて良いですよ!」
リディの作ったハンバーガーを食べ終えると、疲れているルシアンを気遣ってリディがそう提案してきた。
ルシアンはリディの良心に付け込むようにして、リディの膝に寝転んだ。
目を閉じると陽だまりの温かさを感じる。
風に乗ってライラックの淡い香りがした。
こうやって膝枕をさせてくれるくらいにはリディも自分に好意を持ってくれるのかもしれない。
(リディ…もっと俺の事を好きになって)
もっともっと好きになって、異性として見てくれて、いつか恋に落ちて欲しい。
そんなことを願いながら、ルシアンは眠りに落ちて行った。
※
3人の努力の成果が実って、ソフィアナとダンテは恋人関係を経て、婚約に至った。。
婚約披露パーティはガーデンパーティで、2人の行く末を祝福するように晴れ渡った日だった。
(これでソフィアナの断罪ルートは無くなった)
皆と談笑しながら幸せそうに笑い合うソフィアナの微笑みを見て、ルシアンはほっと胸を撫でおろした。
これで確実にゲームのストーリーが変わり、ハッピーエンドとなったのだ。
ゲームの強制力と抗うように行動してきたルシアンは、ようやくその重圧から解放された気持ちだった。
ただルシアンの頭の中にはもう一つの思いがあった。
リディとの契約は元々ソフィアナの断罪を回避するためにルシアンルートの可能性を潰すために結ばれたものだった。
そのソフィアナはこうしてダンテと婚約し、もう断罪されることはない。ということは、リディと婚約している必要はないのだ。
ルシアンの頭の中に、婚約解消の文字が浮かんだ。
(でも、もうリディとは離れられない。ずっと、傍でこの笑顔を見ていたい)
ソフィアナと談笑しているリディの横顔を見ながらルシアンはそう思った。
一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、リディを好きになって、手放せなくなっている。
もう少しだけこの関係を続けていたい。ルシアンが言い出さなければこのまま婚約を続けていられるのではないか。
そんな甘い考えはリディからの話で打ち砕かれ、現実を突き付けられることになった。
「そろそろ契約解消のタイミングかなって思うんです」
リディにそう言われて、ルシアンの背中がすっと冷えた気がした。
「もし、俺があんたを好きだと言ったら?」
またしてもずるい言い方をしてしまった。
リディの事が好きだという本音を言えばいいものを、遠回しにリディの気持ちを確かめてしまう。
ルシアンが本音を言っているとは思っていないのか、冗談と受け取ったらしく、リディは呆れ顔で答えた。
「大体、ルシアン様が親友の私には恋愛感情なんて抱かないって仰ってましたし、契約にも盛り込みましたでしょ?」
そうだ。
あの時はリディの正体も分からなかったし、親友だと思っていたからこのような契約を盛り込んだのだ。
今更ながら思うが、早まったものだ。
「リディは契約を変えるつもりはない…よな」
答えは分かり切っているのに、そんなことを聞いてしまった。
ルシアンの予想通り、契約は変える気はないという返事が返って来た。
「はい。絶対にお店は買っていただきますからね。契約は契約ですから、ちゃんと守るべきですよ」
「分かった…」
リディは正しい。
ただこの数か月、共に暮らし、デートを重ね、同じ時間を共有していたのだ。
少しは異性として見てくれないかという淡い期待があったのも事実だ。
だがやはりリディの気持ちは変えられなかった。
どのみち永遠に偽装婚約を続けることはできない。
どこかのタイミングでけじめをつける必要があるのだ。
(どうせ別れることになるんだ。もう素直に自分の気持ちを伝えよう)
初めて愛した女性。
そしてこれからも変わらず愛する女性だ。
理由をつけて自分の気持ちを伝えることから逃げることはもうしない。
そのためにはきちんと契約を解除して、改めて気持ちを伝えることにしよう。
ルシアンはそう覚悟を決めた。
だが、同時に更なる問題が発生する。
ソフィアナがダンテに一目惚れしたのだ。
ルシアンとナルサスは互いにいがみあい、嫌味の応酬を繰り広げるもののリディ・ルシアン・ナルサスの3人で2人を恋人にしようと画策した。
その流れでルシアンはリディとは久しぶりにゆっくりとデートをすることになった。
ふと公園の東屋にリディと共に行ってみることにした。
リディとの思い出の場所。
もしかしてルシアンの事を少しは覚えていてくれているのではないか。
そんな思いもわずかにあった。
「ここは“彼女”と会ったところだからな。思い出深い」
東屋に着いてリディと並んでライラックを眺めながらルシアンがそう言うと、リディは一瞬何かに気づいたような表情を見せたのだが、案の定ルシアンのことは覚えていないようだ。
「そうでしたか…なるほどなるほど。本当、彼女、早く見つかるといいんですけど」
(その彼女は君なのに。やはり覚えてはいないのだな)
笑いながら告げるリディの言葉に、一瞬の寂寥感がルシアンの胸に去来した。
だが、最近は過去にリディと会った僅かな時間に思いを馳せるよりも、今、現在、この時間をリディとゆっくり過ごしたいという思いの方が強くなっていた。
そしてこれからもリディと共に過ごし、生きていきたい。
「じゃあ、ほら私に寄りかかって眠っていただいて良いですよ!」
リディの作ったハンバーガーを食べ終えると、疲れているルシアンを気遣ってリディがそう提案してきた。
ルシアンはリディの良心に付け込むようにして、リディの膝に寝転んだ。
目を閉じると陽だまりの温かさを感じる。
風に乗ってライラックの淡い香りがした。
こうやって膝枕をさせてくれるくらいにはリディも自分に好意を持ってくれるのかもしれない。
(リディ…もっと俺の事を好きになって)
もっともっと好きになって、異性として見てくれて、いつか恋に落ちて欲しい。
そんなことを願いながら、ルシアンは眠りに落ちて行った。
※
3人の努力の成果が実って、ソフィアナとダンテは恋人関係を経て、婚約に至った。。
婚約披露パーティはガーデンパーティで、2人の行く末を祝福するように晴れ渡った日だった。
(これでソフィアナの断罪ルートは無くなった)
皆と談笑しながら幸せそうに笑い合うソフィアナの微笑みを見て、ルシアンはほっと胸を撫でおろした。
これで確実にゲームのストーリーが変わり、ハッピーエンドとなったのだ。
ゲームの強制力と抗うように行動してきたルシアンは、ようやくその重圧から解放された気持ちだった。
ただルシアンの頭の中にはもう一つの思いがあった。
リディとの契約は元々ソフィアナの断罪を回避するためにルシアンルートの可能性を潰すために結ばれたものだった。
そのソフィアナはこうしてダンテと婚約し、もう断罪されることはない。ということは、リディと婚約している必要はないのだ。
ルシアンの頭の中に、婚約解消の文字が浮かんだ。
(でも、もうリディとは離れられない。ずっと、傍でこの笑顔を見ていたい)
ソフィアナと談笑しているリディの横顔を見ながらルシアンはそう思った。
一緒に過ごす時間が長くなれば長くなるほど、リディを好きになって、手放せなくなっている。
もう少しだけこの関係を続けていたい。ルシアンが言い出さなければこのまま婚約を続けていられるのではないか。
そんな甘い考えはリディからの話で打ち砕かれ、現実を突き付けられることになった。
「そろそろ契約解消のタイミングかなって思うんです」
リディにそう言われて、ルシアンの背中がすっと冷えた気がした。
「もし、俺があんたを好きだと言ったら?」
またしてもずるい言い方をしてしまった。
リディの事が好きだという本音を言えばいいものを、遠回しにリディの気持ちを確かめてしまう。
ルシアンが本音を言っているとは思っていないのか、冗談と受け取ったらしく、リディは呆れ顔で答えた。
「大体、ルシアン様が親友の私には恋愛感情なんて抱かないって仰ってましたし、契約にも盛り込みましたでしょ?」
そうだ。
あの時はリディの正体も分からなかったし、親友だと思っていたからこのような契約を盛り込んだのだ。
今更ながら思うが、早まったものだ。
「リディは契約を変えるつもりはない…よな」
答えは分かり切っているのに、そんなことを聞いてしまった。
ルシアンの予想通り、契約は変える気はないという返事が返って来た。
「はい。絶対にお店は買っていただきますからね。契約は契約ですから、ちゃんと守るべきですよ」
「分かった…」
リディは正しい。
ただこの数か月、共に暮らし、デートを重ね、同じ時間を共有していたのだ。
少しは異性として見てくれないかという淡い期待があったのも事実だ。
だがやはりリディの気持ちは変えられなかった。
どのみち永遠に偽装婚約を続けることはできない。
どこかのタイミングでけじめをつける必要があるのだ。
(どうせ別れることになるんだ。もう素直に自分の気持ちを伝えよう)
初めて愛した女性。
そしてこれからも変わらず愛する女性だ。
理由をつけて自分の気持ちを伝えることから逃げることはもうしない。
そのためにはきちんと契約を解除して、改めて気持ちを伝えることにしよう。
ルシアンはそう覚悟を決めた。
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