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我が家はゴーストハウス
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今は売ってしまったが、私の実家は仙台市郊外の某所にあった。
市街地車で二十分と近いものの、緑溢れる立地で昔は雉なんかも道路を徘徊しているようなそんな緑豊かな土地であった。
そんな住宅地の一角に我が家があった。割と大きな家で、鉄筋の骨組みの立派な家だった。
雰囲気はおしゃれなカフェ風で、我が家ながら自慢の家だったのだが、この家でかなりの霊体験をしていた。
風もないのに部屋に置いている観葉植物の葉の一部が勝手に揺れるなど序の口。
アラーム式時計が勝手になりだしたり、立て付けの悪く人間の力ではびくともしない扉が勝手に開いてしまったり…
階段を上がったり下りたりする音もしていた。
最初は
「隣の足音かな」
などと家族言っていたが、二重サッシの我が家で隣の音が聞こえるということは考えられなかったし、深夜隣の家が寝静まったあとにも
ヒタヒタ
という足音がしていたので、暗黙の了解で諦めることにした。(幽霊のせいだなんて当たり前すぎて言わなくなった)
とにかくラップ音など可愛いもので、こういう勝手に動く系の霊障なんかは日常茶飯事だった。
だから我が家では各部屋に塩を置き、毎週月曜日になると取り替えるといいうことをしていた。
その数ざっと二十個。使う塩の量は一回一キログラムの塩。
最初はプリンのカップに塩を入れて各部屋に置いていたが、あまりにも霊障が酷いところについては塩の袋を五つも重ねて置いていた。
こうすることで頻繁に起こる小さな霊現象はだいぶ収まった。
こんな風に色んな霊現象を体験したがリアルに幽霊を見たなかでも忘れられない霊は三体いる。
まずは老婦人のお話。
これはまだ実家を立て直す前。母が部屋を掃除していると一人の老婦人が庭先に立っていた。
ゴマ塩頭を綺麗に結わえ、茶色のセーターを着て白いエプロンにスカート姿。靴下にサンダルといういで立ちで所謂普通のおばあちゃん。
そんなおばあさんが庭を悠然と眺めていた。
母はそれを見つめ…呆然とした。
「この人誰?何者?ってかなんで他人の家の庭に立っているの」
思考が一瞬停止したが、とにかく不審者には違いない。外に問いただしに行こうと思って外に出た。
時間としては一分少々だったと思う。
だが、母が庭に出た時にその老婦人はおらず、道路を見回しても人影すらなかった。
それが母が霊を見た初めての体験。これ以降母は数々の霊体験をするのだが、この時はそんなこと知る由もなかった。
二人目は白色おじさんである。
洗面所の脇には裏門へ続く小道があった。地面は玉砂利が引いてあり、人が歩けば音がする。
その洗面所で歯を磨いていたところ、スススススッと白い男の人がその小道を通りすぎていった。
白いキャップを被って白い上着を着た男性。(雰囲気的にはおっさん)
だけど大人にしては妙に背が小さいし、なにより歩いていなかった。滑って行ったのではないかと思うくらいだった。
歩けば玉砂利の音がするはずの音がしなかった。
「お母さん!!お母さん!!なんか…今変なの通った!!」
「は?変なのって何?」
状況が理解できない母は首を傾げて私の説明を聞いた。
「…でこんな格好でスススって通り過ぎて行ったんだよ!!」
興奮気味に語る私。だが母からは意外な言葉が飛び出した。
「あ…あの霊ね。よく通るのよー」
それは「あ、ゴキブリちょっとよく出るんだよねー」というくらい普通の会話のように返されて、逆に私が
「は?」
となった。
どうやらその霊はその道をいつも通るらしく母も何回か見ているとのことだった。
私は音を聞いたりするしかなかったため、幽霊を見たことは初めてだった。
確かに怖くはなかった。ただびっくりしただけで。でもこんなにリアルに見ると母みたいに肝っ玉も大きくなるのかなぁと妙なところで感心してしまった。
それ以来は私はリアルで霊を見ることはなかったが……。
三人目は若い男性である。一言で言うと熟女好きの男性である。
それは母が食器を洗っているときのこと。
我が家のキッチンはカウンター越しにガラスの扉がある。つまりキッチンで食器を洗うと目の前にガラスがあり、鏡のように反射して自分の姿が見える。
ふと母がガラスを見た。すると男の人が母の首を抱きしめるように絡まり、抱き着いている(ように見えた)
身長は母の頭一つ上くらい。母の身長が一五八センチなのでおよそ一七三センチ程度と推察される。
茶色のハイネックのセータが似合う細身の男性だった。
私の母はイケメン好きなのだが、そんな母でも一瞬ドキッとしてときめいてしまうような男性らしいのでそれなりに恰好良かったのかもしれない。
とは言うものの母は冷静で
「還暦も過ぎたババアのどこがいいのだろうか…」
と思ったらしい。
だが、男性からそんな熱烈な抱擁を受けることは久しくなかったせいか、そのことを語る母は少し嬉しそうだった。
母よ…ときめくのは生身の男性だけにしておくれ…
幸いなことに、そんな絡みつき男だったが霊障などもなく、ただ母に絡みついているだけ(?)だったので良かったのかもしれない。
その筋の人曰くは我が家には霊道があり、色々な霊が我が家を通り過ぎているとのこと。まったく迷惑な話である。
以上が特筆したい霊三体の話。
他にもありえない霊現象としてラップ音やポルタ―ガイスト、リアルに霊を見るなんかは日常茶飯事で住んでいる間はもう諦めの境地にあったので、この本では詳しくは触れないでおく。
ちなみに現在我が実家は売りに出し、他の買い手の方が入っているのだが…大丈夫なのだろうか。
ちょっと心配しているが、案外霊感のない人が入ったら霊現象など起こらないのかもしれない…。
市街地車で二十分と近いものの、緑溢れる立地で昔は雉なんかも道路を徘徊しているようなそんな緑豊かな土地であった。
そんな住宅地の一角に我が家があった。割と大きな家で、鉄筋の骨組みの立派な家だった。
雰囲気はおしゃれなカフェ風で、我が家ながら自慢の家だったのだが、この家でかなりの霊体験をしていた。
風もないのに部屋に置いている観葉植物の葉の一部が勝手に揺れるなど序の口。
アラーム式時計が勝手になりだしたり、立て付けの悪く人間の力ではびくともしない扉が勝手に開いてしまったり…
階段を上がったり下りたりする音もしていた。
最初は
「隣の足音かな」
などと家族言っていたが、二重サッシの我が家で隣の音が聞こえるということは考えられなかったし、深夜隣の家が寝静まったあとにも
ヒタヒタ
という足音がしていたので、暗黙の了解で諦めることにした。(幽霊のせいだなんて当たり前すぎて言わなくなった)
とにかくラップ音など可愛いもので、こういう勝手に動く系の霊障なんかは日常茶飯事だった。
だから我が家では各部屋に塩を置き、毎週月曜日になると取り替えるといいうことをしていた。
その数ざっと二十個。使う塩の量は一回一キログラムの塩。
最初はプリンのカップに塩を入れて各部屋に置いていたが、あまりにも霊障が酷いところについては塩の袋を五つも重ねて置いていた。
こうすることで頻繁に起こる小さな霊現象はだいぶ収まった。
こんな風に色んな霊現象を体験したがリアルに幽霊を見たなかでも忘れられない霊は三体いる。
まずは老婦人のお話。
これはまだ実家を立て直す前。母が部屋を掃除していると一人の老婦人が庭先に立っていた。
ゴマ塩頭を綺麗に結わえ、茶色のセーターを着て白いエプロンにスカート姿。靴下にサンダルといういで立ちで所謂普通のおばあちゃん。
そんなおばあさんが庭を悠然と眺めていた。
母はそれを見つめ…呆然とした。
「この人誰?何者?ってかなんで他人の家の庭に立っているの」
思考が一瞬停止したが、とにかく不審者には違いない。外に問いただしに行こうと思って外に出た。
時間としては一分少々だったと思う。
だが、母が庭に出た時にその老婦人はおらず、道路を見回しても人影すらなかった。
それが母が霊を見た初めての体験。これ以降母は数々の霊体験をするのだが、この時はそんなこと知る由もなかった。
二人目は白色おじさんである。
洗面所の脇には裏門へ続く小道があった。地面は玉砂利が引いてあり、人が歩けば音がする。
その洗面所で歯を磨いていたところ、スススススッと白い男の人がその小道を通りすぎていった。
白いキャップを被って白い上着を着た男性。(雰囲気的にはおっさん)
だけど大人にしては妙に背が小さいし、なにより歩いていなかった。滑って行ったのではないかと思うくらいだった。
歩けば玉砂利の音がするはずの音がしなかった。
「お母さん!!お母さん!!なんか…今変なの通った!!」
「は?変なのって何?」
状況が理解できない母は首を傾げて私の説明を聞いた。
「…でこんな格好でスススって通り過ぎて行ったんだよ!!」
興奮気味に語る私。だが母からは意外な言葉が飛び出した。
「あ…あの霊ね。よく通るのよー」
それは「あ、ゴキブリちょっとよく出るんだよねー」というくらい普通の会話のように返されて、逆に私が
「は?」
となった。
どうやらその霊はその道をいつも通るらしく母も何回か見ているとのことだった。
私は音を聞いたりするしかなかったため、幽霊を見たことは初めてだった。
確かに怖くはなかった。ただびっくりしただけで。でもこんなにリアルに見ると母みたいに肝っ玉も大きくなるのかなぁと妙なところで感心してしまった。
それ以来は私はリアルで霊を見ることはなかったが……。
三人目は若い男性である。一言で言うと熟女好きの男性である。
それは母が食器を洗っているときのこと。
我が家のキッチンはカウンター越しにガラスの扉がある。つまりキッチンで食器を洗うと目の前にガラスがあり、鏡のように反射して自分の姿が見える。
ふと母がガラスを見た。すると男の人が母の首を抱きしめるように絡まり、抱き着いている(ように見えた)
身長は母の頭一つ上くらい。母の身長が一五八センチなのでおよそ一七三センチ程度と推察される。
茶色のハイネックのセータが似合う細身の男性だった。
私の母はイケメン好きなのだが、そんな母でも一瞬ドキッとしてときめいてしまうような男性らしいのでそれなりに恰好良かったのかもしれない。
とは言うものの母は冷静で
「還暦も過ぎたババアのどこがいいのだろうか…」
と思ったらしい。
だが、男性からそんな熱烈な抱擁を受けることは久しくなかったせいか、そのことを語る母は少し嬉しそうだった。
母よ…ときめくのは生身の男性だけにしておくれ…
幸いなことに、そんな絡みつき男だったが霊障などもなく、ただ母に絡みついているだけ(?)だったので良かったのかもしれない。
その筋の人曰くは我が家には霊道があり、色々な霊が我が家を通り過ぎているとのこと。まったく迷惑な話である。
以上が特筆したい霊三体の話。
他にもありえない霊現象としてラップ音やポルタ―ガイスト、リアルに霊を見るなんかは日常茶飯事で住んでいる間はもう諦めの境地にあったので、この本では詳しくは触れないでおく。
ちなみに現在我が実家は売りに出し、他の買い手の方が入っているのだが…大丈夫なのだろうか。
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