この関係は不倫ですか?ー夫と後輩の関係は同僚以上?不倫以下?-

イトカワジンカイ

文字の大きさ
上 下
6 / 29

第2章 絡まる②

しおりを挟む

「ただいまー」

誰もいない部屋に入る。

孝之が迎えてくれることもあるが、プロジェクトの追い込み以外では比較的定時に上がれているので、由希子の方が早く着くのがほとんどだった。


「さてと…」


由希子は手早く部屋着に着替えると、食事の準備をする。
一時期結婚を機に仕事を辞めた時期があって主婦をしていたこともあり、結局はシステムエンジニアの仕事に復帰しても家事は由希子の担当になっていた。


「はあ…なんか…疲れたな。」


初出勤の職場ということもあって、だいぶ気を使った。

そのせいもあって、ついうつらうつらとソファーで眠ってしまった。

どのくらい眠っただろうか。耳元で呼ばれる声で目が覚めた。


「ただいま、由希子」
「おかえり」
「疲れているようだけど、大丈夫か?」
「うん、初日は気を遣うし。なんか勝手が分からないから。でも大丈夫だよ。」
「そっか。じゃあ飯食べるか。」
「あ、温めるよ」
「準備したから席に着けよ。」


気づくと食卓には由希子が準備していた食事が並んでいる。こういう気遣いが嬉しくて、由希子の頬は緩んだ。


「ありがとう」


食事をとりながら他愛無い話をする。そういえば…と思って南のことを話そうと思った。


「実はね、今日同じ職場で同級生が働いてたの。すごい偶然じゃない?」
「そうだな…」


テレビから目を離さずに孝之は由希子の話を聞いていた。ふいに思い出したように、孝之も仕事の話をする。


「俺もサプライズがあるんだ」
「え?なになに?」
「今度課長に昇格したんだ。だから、一つ下の後輩に営業を引き継ぐことになって。これからちょっと帰り遅くなるかもしれない…」


朝食と夕食。できたら一緒に取りたかった。それが少し顔に出たようで、孝之は笑いながら由希子の頭を撫でた。


「寂しい?」
「うん。でも孝之の努力が認められたみたいで嬉しい。」
「ありがとう。…なるべく一緒に居られるように、引継ぎ終わらせるな。」


孝之の手は大きくて暖かくて。それだけで由希子は胸いっぱいになった。


「じゃあ、今日はとっておきの赤ワイン出しちゃいます!」


そういって2人で赤ワインで乾杯する。

確かに子供が欲しいが、今はこの穏やかな時間を過ごせるだけでもいいと由希子は思った。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

社長から逃げろっ

鳴宮鶉子
恋愛
社長から逃げろっ

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

処理中です...