この関係は不倫ですか?ー夫と後輩の関係は同僚以上?不倫以下?-

イトカワジンカイ

文字の大きさ
上 下
1 / 29

第1章 再会①

しおりを挟む
ピピピピ

目覚ましの音がけたたましくなり、伊藤由希子は目を覚ます。5:30に起き、顔を洗う。秋になると水が少しずつ冷たくなっていることを実感する。

身支度を整えると朝食の準備をする。

本当はお弁当を作りたい気持ちもあるが、夫である孝之は共働きの由希子に負担をかけたくないと言ってお弁当は個々人で調達するのが日課だ。

朝食の準備ができたころを見計らったように孝之がのっそりと起きてきた。

「あ、孝之おはよう」
「おはよう。」
「ご飯できてるよ。」
「ん。」

そのまま歯磨きに行って顔を洗いに孝之は洗面所に姿を消す。この歯を磨かないと目が覚めないというのが彼の言い分である。

「いただきます」
「いただきます」

二人でテーブルに向かい合って朝食を食べる。これはどんなに忙しくても欠かせない日課だ。

由希子は派遣会社に登録し、システムエンジニアとして働いている。一方、孝之は営業で朝から客先に行ったり、夜は接待などでかなり忙しい。

要は二人とも激務を抱えているということになる。

何気ない会話。他愛無い時間。

それでも朝食を2人で食べるのは心地よい時間だった。

孝之が微笑んで食事を食べてくれるだけで、由希子は幸せだった。でも…一つだけ不満があるとしたら、2人は子供がいなかった。

由希子と孝之は同じ会社に勤めているときに出会った。孝之は製造系の会社に営業で勤め、由希子はそこの情報システム部で働いていた。

大規模なシステム入れ替えの時、営業に使うシステムの更新もあった。そこで設定や使い方のシステム教育をするときに出会い、意気投合し、結婚した。

営業なのにちょっと口下手な孝之は、真面目が取り柄な男だった。

その誠実さもあって、営業トークができないが根強い顧客が多い。

そして由希子が29歳、孝之が31歳の時に結婚した。結婚して4年。

そろそろちゃんと子供のことを考えなくてはならない時期に来ていた。

由希子ももう33歳。歳ではないが、若くもない。子供を産めるリミットは刻々と近づいてきて、少々焦りもあった。

由希子はそれとなく何度となく子供が欲しいことを告げたこともある。


「あの…ね。」
「ん?」
「子供…欲しいって思わない?」
「今は仕事に打ち込みたいから。もう少し後で…考える。」
「そっか。」


その時の孝之の顔は忘れられない。明らかに、拒絶反応があった。

それ以降、由希子は子供について怖くて触れられなくなっていた。

「じゃあ、行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい。あ、そういえば!」

カレンダーを見て、由希子は気づいた。

「今日は大学の同窓会があるんだった。あまり遅くならないように帰ってくるね。」
「そっか。じゃあそっちも気を付けて」

ぱたりと閉まる音。いつからだろうか、孝之は逃げるように家を出ていくようになったのは。

由希子はため息をついて自分も仕事に行く準備をすることにした。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

すれ違ってしまった恋

秋風 爽籟
恋愛
別れてから何年も経って大切だと気が付いた… それでも、いつか戻れると思っていた… でも現実は厳しく、すれ違ってばかり…

父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

四季
恋愛
父親が再婚したことで地獄の日々が始まってしまいましたが……ある日その状況は一変しました。

あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます

おぜいくと
恋愛
「あなたの秘密を知ってしまったから私は消えます。さようなら」 そう書き残してエアリーはいなくなった…… 緑豊かな高原地帯にあるデニスミール王国の王子ロイスは、来月にエアリーと結婚式を挙げる予定だった。エアリーは隣国アーランドの王女で、元々は政略結婚が目的で引き合わされたのだが、誰にでも平等に接するエアリーの姿勢や穢れを知らない澄んだ目に俺は惹かれた。俺はエアリーに素直な気持ちを伝え、王家に代々伝わる指輪を渡した。エアリーはとても喜んでくれた。俺は早めにエアリーを呼び寄せた。デニスミールでの暮らしに慣れてほしかったからだ。初めは人見知りを発揮していたエアリーだったが、次第に打ち解けていった。 そう思っていたのに。 エアリーは突然姿を消した。俺が渡した指輪を置いて…… ※ストーリーは、ロイスとエアリーそれぞれの視点で交互に進みます。

人生を共にしてほしい、そう言った最愛の人は不倫をしました。

松茸
恋愛
どうか僕と人生を共にしてほしい。 そう言われてのぼせ上った私は、侯爵令息の彼との結婚に踏み切る。 しかし結婚して一年、彼は私を愛さず、別の女性と不倫をした。

エリート警察官の溺愛は甘く切ない

日下奈緒
恋愛
親が警察官の紗良は、30歳にもなって独身なんてと親に責められる。 両親の勧めで、警察官とお見合いする事になったのだが、それは跡継ぎを産んで欲しいという、政略結婚で⁉

愛する貴方の心から消えた私は…

矢野りと
恋愛
愛する夫が事故に巻き込まれ隣国で行方不明となったのは一年以上前のこと。 周りが諦めの言葉を口にしても、私は決して諦めなかった。  …彼は絶対に生きている。 そう信じて待ち続けていると、願いが天に通じたのか奇跡的に彼は戻って来た。 だが彼は妻である私のことを忘れてしまっていた。 「すまない、君を愛せない」 そう言った彼の目からは私に対する愛情はなくなっていて…。 *設定はゆるいです。

社長から逃げろっ

鳴宮鶉子
恋愛
社長から逃げろっ

拝啓、大切なあなたへ

茂栖 もす
恋愛
それはある日のこと、絶望の底にいたトゥラウム宛てに一通の手紙が届いた。 差出人はエリア。突然、別れを告げた恋人だった。 そこには、衝撃的な事実が書かれていて─── 手紙を受け取った瞬間から、トゥラウムとエリアの終わってしまったはずの恋が再び動き始めた。 これは、一通の手紙から始まる物語。【再会】をテーマにした短編で、5話で完結です。 ※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。

処理中です...