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第1章 再会①
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ピピピピ
目覚ましの音がけたたましくなり、伊藤由希子は目を覚ます。5:30に起き、顔を洗う。秋になると水が少しずつ冷たくなっていることを実感する。
身支度を整えると朝食の準備をする。
本当はお弁当を作りたい気持ちもあるが、夫である孝之は共働きの由希子に負担をかけたくないと言ってお弁当は個々人で調達するのが日課だ。
朝食の準備ができたころを見計らったように孝之がのっそりと起きてきた。
「あ、孝之おはよう」
「おはよう。」
「ご飯できてるよ。」
「ん。」
そのまま歯磨きに行って顔を洗いに孝之は洗面所に姿を消す。この歯を磨かないと目が覚めないというのが彼の言い分である。
「いただきます」
「いただきます」
二人でテーブルに向かい合って朝食を食べる。これはどんなに忙しくても欠かせない日課だ。
由希子は派遣会社に登録し、システムエンジニアとして働いている。一方、孝之は営業で朝から客先に行ったり、夜は接待などでかなり忙しい。
要は二人とも激務を抱えているということになる。
何気ない会話。他愛無い時間。
それでも朝食を2人で食べるのは心地よい時間だった。
孝之が微笑んで食事を食べてくれるだけで、由希子は幸せだった。でも…一つだけ不満があるとしたら、2人は子供がいなかった。
由希子と孝之は同じ会社に勤めているときに出会った。孝之は製造系の会社に営業で勤め、由希子はそこの情報システム部で働いていた。
大規模なシステム入れ替えの時、営業に使うシステムの更新もあった。そこで設定や使い方のシステム教育をするときに出会い、意気投合し、結婚した。
営業なのにちょっと口下手な孝之は、真面目が取り柄な男だった。
その誠実さもあって、営業トークができないが根強い顧客が多い。
そして由希子が29歳、孝之が31歳の時に結婚した。結婚して4年。
そろそろちゃんと子供のことを考えなくてはならない時期に来ていた。
由希子ももう33歳。歳ではないが、若くもない。子供を産めるリミットは刻々と近づいてきて、少々焦りもあった。
由希子はそれとなく何度となく子供が欲しいことを告げたこともある。
「あの…ね。」
「ん?」
「子供…欲しいって思わない?」
「今は仕事に打ち込みたいから。もう少し後で…考える。」
「そっか。」
その時の孝之の顔は忘れられない。明らかに、拒絶反応があった。
それ以降、由希子は子供について怖くて触れられなくなっていた。
「じゃあ、行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい。あ、そういえば!」
カレンダーを見て、由希子は気づいた。
「今日は大学の同窓会があるんだった。あまり遅くならないように帰ってくるね。」
「そっか。じゃあそっちも気を付けて」
ぱたりと閉まる音。いつからだろうか、孝之は逃げるように家を出ていくようになったのは。
由希子はため息をついて自分も仕事に行く準備をすることにした。
目覚ましの音がけたたましくなり、伊藤由希子は目を覚ます。5:30に起き、顔を洗う。秋になると水が少しずつ冷たくなっていることを実感する。
身支度を整えると朝食の準備をする。
本当はお弁当を作りたい気持ちもあるが、夫である孝之は共働きの由希子に負担をかけたくないと言ってお弁当は個々人で調達するのが日課だ。
朝食の準備ができたころを見計らったように孝之がのっそりと起きてきた。
「あ、孝之おはよう」
「おはよう。」
「ご飯できてるよ。」
「ん。」
そのまま歯磨きに行って顔を洗いに孝之は洗面所に姿を消す。この歯を磨かないと目が覚めないというのが彼の言い分である。
「いただきます」
「いただきます」
二人でテーブルに向かい合って朝食を食べる。これはどんなに忙しくても欠かせない日課だ。
由希子は派遣会社に登録し、システムエンジニアとして働いている。一方、孝之は営業で朝から客先に行ったり、夜は接待などでかなり忙しい。
要は二人とも激務を抱えているということになる。
何気ない会話。他愛無い時間。
それでも朝食を2人で食べるのは心地よい時間だった。
孝之が微笑んで食事を食べてくれるだけで、由希子は幸せだった。でも…一つだけ不満があるとしたら、2人は子供がいなかった。
由希子と孝之は同じ会社に勤めているときに出会った。孝之は製造系の会社に営業で勤め、由希子はそこの情報システム部で働いていた。
大規模なシステム入れ替えの時、営業に使うシステムの更新もあった。そこで設定や使い方のシステム教育をするときに出会い、意気投合し、結婚した。
営業なのにちょっと口下手な孝之は、真面目が取り柄な男だった。
その誠実さもあって、営業トークができないが根強い顧客が多い。
そして由希子が29歳、孝之が31歳の時に結婚した。結婚して4年。
そろそろちゃんと子供のことを考えなくてはならない時期に来ていた。
由希子ももう33歳。歳ではないが、若くもない。子供を産めるリミットは刻々と近づいてきて、少々焦りもあった。
由希子はそれとなく何度となく子供が欲しいことを告げたこともある。
「あの…ね。」
「ん?」
「子供…欲しいって思わない?」
「今は仕事に打ち込みたいから。もう少し後で…考える。」
「そっか。」
その時の孝之の顔は忘れられない。明らかに、拒絶反応があった。
それ以降、由希子は子供について怖くて触れられなくなっていた。
「じゃあ、行ってくる。」
「うん、いってらっしゃい。あ、そういえば!」
カレンダーを見て、由希子は気づいた。
「今日は大学の同窓会があるんだった。あまり遅くならないように帰ってくるね。」
「そっか。じゃあそっちも気を付けて」
ぱたりと閉まる音。いつからだろうか、孝之は逃げるように家を出ていくようになったのは。
由希子はため息をついて自分も仕事に行く準備をすることにした。
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※以前、別PNで、小説家になろう様に投稿したものですが、今回、アルファポリス様用に加筆修正して投稿しています。
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