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比翼の囀りは琴の音に乗せて

・公康への尋問②

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牛車がゆっくりと止まる。
いつもの暁の屋敷だ。

大きくはないが家族2人+式神2人が住むにはちょうどいいサイズの屋敷なのだが、それを見て影平は絶句していた。

「おいおい、ここが暁の家か?」
「うん、そうだけど…?」
「…一応光義様って従五位だよな?」
「そうだね」
「なんで築地が崩れてるんだ?」

貴族の屋敷だからもっと豪勢な家を想像していたであろう影平は暁の家の様相に驚いているようだった。

「うちは叔父さんが散財癖があって…」
「あぁ、それで貧乏なのか!」

はっきり言われてしまい、逆にすがすがしい。

「う…うん。まぁ。だからもてなしとか期待しないでね」
「わかったわかった!とりあえず吉平運ぶな」

吉平を担いだ影平と共に屋敷に入ると、そこには渋い顔をしている玉兎と困惑の表情を浮かべる金烏がいた。

「うお!!なんだこいつら!?人間…か?」
「あぁ、うちの式神だよ。玉兎、金烏、ただいま」
「暁、お帰り」
「おう、暁。待ってたぜ」
「で、どうしたの?なんか微妙な雰囲気だけど…」

いつもならにこやかに迎えてくれる二人の様子に疑問を持つ。
そして同時に何やら嫌な予感がする…。

「…客だ」
「客?」
「また結界を破られた」
「え…?」

暁の屋敷には結界が張っていて、妖や人が来たら金烏や玉兎はそれを察することができる。

なんなら不審人物は敷地にすら入れないのだ。

金烏と玉兎が暁が不在の中、屋敷に人を入れることはない。

だが…過去に玉兎の結界を破った人物がいる。その人物を思い描くと同時に奥からその人物がやって来た。

「おや、暁君。お帰り」
「た、高遠殿!?なんで!?」
「影平君も吉平君も一緒か。ちょうど良かったよ。さ、まずはお入り」
「お入りって、ここは私の家ですよ!ちょっと…聞いてますか!?」

高遠は暁の言葉に答えもせずに、勝手知ったるとばかりに奥の部屋に行ってしまった。
状況が掴めないながら、暁も家へと入ったのだった。

部屋に入ると、玉兎が麦茶を人数分淹れてくれた。

「お…おぉ…すげーな…。家事までできるんだな」

式神に家事などさせるなど暁の家くらいだが説明も面倒なので影平の言葉を訂正しなかった。

「さて、現場に行ってきたんだって?」

早速に高遠が切り出したので暁は先ほどのことを説明することにした。

「はい」
「それで?やはり勝真殿の事件と関連はありそうなのかい?」

「吉平と穢れを追いましたが、同じ妖の仕業だと思います。それでその二つの事件の共通点は梅小路公康様であると考えてます」

「ん?なんで梅小路様なんだ?」

影平が麦茶を豪快に飲みながら首を傾げる。

「なんか公康様と美唯さんは恋人同士…まぁ…不倫関係って感じみたい」
「はぁ?そんな情報どこで手に入れたんだ?」

「え?普通に女房達に聞いたんだけど…」

「俺達にはそんなこと教えてくれなかったな。ビビられてたんだろうな…。で、公康様が美唯と勝真様を恨んで殺したってことか?」

「そこまでの断定はできないんだけど…可能性の一つではあるとは思う。ただ…今の状況だとそこまで強い殺意を覚える理由が見当たらないって感じかなぁ」
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