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比翼の囀りは琴の音に乗せて

・手がかり②

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「ふーん。まぁいいさ。それで?陰陽師見習いの君達が右兵衛府に行くなんて珍しいじゃないか。何かまた事件かい?」

「実はですね…」

高遠の言葉を受けて吉平がことのあらましを説明した。
すると高遠はまるで新しい遊びを思いついたように嬉々とした表情を浮かべながら言ってきた。

「よし、私も同行しよう。君たちが関与するならきっと楽しいことが起こるだろうし」

「えええ…!!高遠様、妖が関与しているかもしれないんですよ!僕だって進んでは行きたくないのに…」
「本当です、物好きですね」

吉平と暁が口々にそう言ったが、それすらも楽しい様子で高遠が答える。

「人生には刺激が必要なんだよ。さ、そうと決まればさっさと行くことにしよう。それに…多分私も少しは役に立つかもしれないしね」

高遠はそう言いながら颯爽と歩き出す。
暁と吉平はそんな高遠の行動に思わず顔を見合わせた後に、高遠のあとを追いかけた。

※ ※  ※

門を潜り抜けて右兵衛府に入ると中は慌ただしい様子だ。

陰陽寮もいつもバタバタと忙しいのだが、どこの部署も人手不足は深刻らしい。

この慌ただしさを眺めながら誰か適当な人物に焼死事件の担当者を聞こうと思っていると、向こうの方から見知った顔がやって来た。

「おーい、暁!吉平もこんなところでどうしたんだよ!」

貴族としては珍しく日焼けした肌に白い八重歯をのぞかせて声を掛けてきたのは暁の蹴鞠仲間の油小路影平だ。

「あ、影平。焼死事件の件で来たんだけど…担当者の人いるかな?」
「陰陽寮からも応援来るって聞いてたんだけど暁達だったんだ。担当は俺だよ」

「え?そうなの?ならちょうど良かった!」
「ここじゃなんだし奥で話そうぜ。あー先輩、ちょっと奥借ります!」

影平が先輩と思わしき人物に声をかける。

先輩は書簡を書きながら、こちらを見向きもせずに頷いていた。
使用可能ということだろう。

奥の部屋に行くと影平は早速切り出してきた。

「で、どこまで聞いたんだ?」

「えっと報告書に書いていることが全てかな?身元はまだ分からないの?」

「そうなんだよな。今、目撃者がいないか調査中ではあるんだけど…有力情報はまだないかな?むしろ、お前たちの力でぱぱっと身元が分からないか?」

「ええええ…何その無茶ぶり。私は無理だよ」
「陰陽師って霊とか見えるんだろ?この男の霊から聞き出せないのかよ」

いくら陰陽師とはいえ死者の霊を招魂させるなど不可能だ。

「吉平はどうなんだ?」
「僕も無理だよ。まぁ反魂香があれば可能だとは思うけど」

「なんだその反魂香っていうのがあればできるんじゃん!」
「えっ、冗談だよ。漢の故事でそういう話が出てくるってだけで」

慌てて手を振りながら吉平が否定した。だがそれを静かに聞いていた高遠がおやと首を傾げた。

「吉平君は安倍家の人間だよね」
「はい、そうですけど」

「安倍家の陰陽師でそういう香を扱える人間がいたと何かの物語で出てきた気がするんだが?」
「あくまで物語ですから創作ですよ」

「そうなのか。私も影平君と同じで陰陽師は神業が使えるものだと思っていたからね。そんな物語でも陰陽師ならなんだか出来るのではと思ってしまったよ」

「高遠様は僕を見てもそう思えますか…」

地の底を這うようなどんよりした雰囲気を醸し出して吉平が言うと、高遠は苦笑しながら扇を広げて口元を覆った。
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