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出張①
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今日は土曜日。
窓際とはいえ、現在抱えているプロジェクトはそれなりに忙しく、残業続きで少々疲れていた。
起きたのは10時を回ったころだった。
「温泉に行こうかなぁ」
近くにあるラクーアに行こうかとも思ったけど、まずは部屋の片づけやら洗濯やらをせねばならず、私は体を起こして準備に取り掛かった。
朝食はブランチを兼ねて、炒めたウィンナーと簡単なサラダ、それとフレンチトースト。
コーヒーはカルディで買ったグアテマラを淹れる。コーヒーのいい香りが部屋に充満した。
外は晴れ。洗濯物が良く乾くなぁ。
そんなことを考えていた。そろそろ春物から夏物へと衣替えも必要だろう。
一通り家事を終わらせると特段なにもすることがない。
とりあえず、いつもの癖でスマホを手に取る。ツイッターを覗いてため息を出してしまった。
ツイッター歴は長く、昔はそれなりに仲の良いフォロワーがいた。
でも昔からのフォロワーはいつの間にか結婚妊娠出産をしていて、もう大好きな気軽にアニメやゲームの話などがなくなっていた。
その代わり「幼稚園に行ったと思ったら熱だして帰ってきちゃった・・・」とか「ゲームしようと思ったのにやっぱりモンスターみたいな子供がいるとなかなか自由な時間が取れないなぁ」などと文句を言いつつも幸せな時間を過ごしていることが察せられるツイートが多かった。
だから昔の私のタイムラインではゲームやアニメなどの趣味の話題がたくさん流れていたが、現在は子育て結婚タイムラインと化してしまった。
その現実を突きつけられ私はスマホの電源をOFFにした。
40歳にも近いのに、趣味と言えば読書とゲームくらい。
昔は映画なんかもちょくちょく行っていたが、見に行くのも面倒だしという理由で足が遠のいてしまう。
仕方ないのでタブレットの電源を入れてキンドルを立ち上げて、本を読むことにした。
20代の頃は恋愛小説でもふわふわしたおとぎ話のような作品を主に読んでいた。
30代になってからは大人の恋愛を描いたような作品を読むことが多くなっていた。
疑似恋愛でも主人公に感情移入するだけで、日常にちょっと刺激が加わった感じで楽しかった。
でも小説の最後は決まってハッピーエンド。
もちろん傷つくような展開や涙が止まらなくなるようなすれ違いの展開を挟むのだが最後は結ばれて幸せになる。
だか、どうだろうか。
現実はそんなにうまくいかない。
それを痛感しながら読むのは辛いものがあったが、少しの現実逃避にはなっている。ひと時でも幸せな夢が見えるから。
私は2杯目のコーヒーを淹れると本のページをめくるのだった。
月曜日に出社すると、出社一番に課長に呼ばれた。
「え?出張ですか?」
「明日、沖縄に行って。朝一に現場入りだから今日の午後の便で行って。」
なんでもサトウキビで水素を作るプランターがあるのでその下見に行ってほしいとのことだった。
会社命令であれば拒否権はない。出張したくないと言えば「女だから」「女のくせに」と陰で言われるのも目に見えていた。
(まぁ……海外でもないし、一人で大丈夫だしな)
そう思って私は出張を快諾した。
「はい……分かりました。」
「同行者メンバーだけど、足立君と君、それと三ツ輪自動車側から水谷さんが行くから」
「え?水谷さんですか?なんでです?」
「エネルギー生成の現場を見ることでエンジンの特性を知りたいということらしいんだ」
行きたくない出張が更に行きたくなくなる。
(まぁ……足立君もいるし。特に喋る必要もないだろうし。仕事に集中しよう)
私はそうやって頭を切り替えることにした。
午後に急いで出張の準備に取り掛かり、夕方の便で沖縄入り。
幸いバタバタと忙しい上に、飛行機も席が離れていたこともあり、水谷とはあまりしゃべらなくて済んでいた。
業務上のあたりさわりのない言葉を交わすだけ。
でも、なんとなく水谷の視線が気になる。
そんな私のことを知ってか知らずか、足立君が提案する。
「少し夜の街を観光するくらいには時間がありますね。俺は、国際通りブラブラしますわ。」
「了解。」
こういう時若者は自由だ。昔は先輩と行動を共にしなくてはならず、おじさん上司のお酒に付き合わされることも多かったが……。
時代は変わったんだなぁと若干のジェネレーションギャップを感じる。
「香澄先輩はどうします?」
「私はまだ書きかけの報告書があるから軽くご飯食べた後、ホテルで仕事するよ」
「わー先輩ここにきても仕事ですか?せっかくの沖縄ですよ!!楽しんでください!」
「ありがとう。あんまりはめを外さないようにね」
そういって私は足立君を送り出した。
「じゃあ、私はこれで。」
「……あぁ。」
水谷もどうやらビジネスホテルにそのまま行くようだった。ロビーで別れると各々の部屋に行った。
しばらくモバイルパソコンとにらめっこして、気づくと20時くらいだった。
「さすがにお腹すいたなぁ。あ……そういえば。」
沖縄に昔住んでいた友人がゴーヤチャンプルが美味しい定食屋があるとオススメしてくれた。
このホテルからそう遠くないだろう。
私はせっかくだからということでゴーヤチャンプルを食べに行った。
窓際とはいえ、現在抱えているプロジェクトはそれなりに忙しく、残業続きで少々疲れていた。
起きたのは10時を回ったころだった。
「温泉に行こうかなぁ」
近くにあるラクーアに行こうかとも思ったけど、まずは部屋の片づけやら洗濯やらをせねばならず、私は体を起こして準備に取り掛かった。
朝食はブランチを兼ねて、炒めたウィンナーと簡単なサラダ、それとフレンチトースト。
コーヒーはカルディで買ったグアテマラを淹れる。コーヒーのいい香りが部屋に充満した。
外は晴れ。洗濯物が良く乾くなぁ。
そんなことを考えていた。そろそろ春物から夏物へと衣替えも必要だろう。
一通り家事を終わらせると特段なにもすることがない。
とりあえず、いつもの癖でスマホを手に取る。ツイッターを覗いてため息を出してしまった。
ツイッター歴は長く、昔はそれなりに仲の良いフォロワーがいた。
でも昔からのフォロワーはいつの間にか結婚妊娠出産をしていて、もう大好きな気軽にアニメやゲームの話などがなくなっていた。
その代わり「幼稚園に行ったと思ったら熱だして帰ってきちゃった・・・」とか「ゲームしようと思ったのにやっぱりモンスターみたいな子供がいるとなかなか自由な時間が取れないなぁ」などと文句を言いつつも幸せな時間を過ごしていることが察せられるツイートが多かった。
だから昔の私のタイムラインではゲームやアニメなどの趣味の話題がたくさん流れていたが、現在は子育て結婚タイムラインと化してしまった。
その現実を突きつけられ私はスマホの電源をOFFにした。
40歳にも近いのに、趣味と言えば読書とゲームくらい。
昔は映画なんかもちょくちょく行っていたが、見に行くのも面倒だしという理由で足が遠のいてしまう。
仕方ないのでタブレットの電源を入れてキンドルを立ち上げて、本を読むことにした。
20代の頃は恋愛小説でもふわふわしたおとぎ話のような作品を主に読んでいた。
30代になってからは大人の恋愛を描いたような作品を読むことが多くなっていた。
疑似恋愛でも主人公に感情移入するだけで、日常にちょっと刺激が加わった感じで楽しかった。
でも小説の最後は決まってハッピーエンド。
もちろん傷つくような展開や涙が止まらなくなるようなすれ違いの展開を挟むのだが最後は結ばれて幸せになる。
だか、どうだろうか。
現実はそんなにうまくいかない。
それを痛感しながら読むのは辛いものがあったが、少しの現実逃避にはなっている。ひと時でも幸せな夢が見えるから。
私は2杯目のコーヒーを淹れると本のページをめくるのだった。
月曜日に出社すると、出社一番に課長に呼ばれた。
「え?出張ですか?」
「明日、沖縄に行って。朝一に現場入りだから今日の午後の便で行って。」
なんでもサトウキビで水素を作るプランターがあるのでその下見に行ってほしいとのことだった。
会社命令であれば拒否権はない。出張したくないと言えば「女だから」「女のくせに」と陰で言われるのも目に見えていた。
(まぁ……海外でもないし、一人で大丈夫だしな)
そう思って私は出張を快諾した。
「はい……分かりました。」
「同行者メンバーだけど、足立君と君、それと三ツ輪自動車側から水谷さんが行くから」
「え?水谷さんですか?なんでです?」
「エネルギー生成の現場を見ることでエンジンの特性を知りたいということらしいんだ」
行きたくない出張が更に行きたくなくなる。
(まぁ……足立君もいるし。特に喋る必要もないだろうし。仕事に集中しよう)
私はそうやって頭を切り替えることにした。
午後に急いで出張の準備に取り掛かり、夕方の便で沖縄入り。
幸いバタバタと忙しい上に、飛行機も席が離れていたこともあり、水谷とはあまりしゃべらなくて済んでいた。
業務上のあたりさわりのない言葉を交わすだけ。
でも、なんとなく水谷の視線が気になる。
そんな私のことを知ってか知らずか、足立君が提案する。
「少し夜の街を観光するくらいには時間がありますね。俺は、国際通りブラブラしますわ。」
「了解。」
こういう時若者は自由だ。昔は先輩と行動を共にしなくてはならず、おじさん上司のお酒に付き合わされることも多かったが……。
時代は変わったんだなぁと若干のジェネレーションギャップを感じる。
「香澄先輩はどうします?」
「私はまだ書きかけの報告書があるから軽くご飯食べた後、ホテルで仕事するよ」
「わー先輩ここにきても仕事ですか?せっかくの沖縄ですよ!!楽しんでください!」
「ありがとう。あんまりはめを外さないようにね」
そういって私は足立君を送り出した。
「じゃあ、私はこれで。」
「……あぁ。」
水谷もどうやらビジネスホテルにそのまま行くようだった。ロビーで別れると各々の部屋に行った。
しばらくモバイルパソコンとにらめっこして、気づくと20時くらいだった。
「さすがにお腹すいたなぁ。あ……そういえば。」
沖縄に昔住んでいた友人がゴーヤチャンプルが美味しい定食屋があるとオススメしてくれた。
このホテルからそう遠くないだろう。
私はせっかくだからということでゴーヤチャンプルを食べに行った。
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