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少年王の攻防⑤
しおりを挟む「まるで知ってるかのようですね」
「いや…そういう女かもしれないってことだよ。ルディ、お前騙されてるんだよ!!」
力説したセシリアだが欠点を挙げても、スライブは平然として言った。
「そうですね。でも、もしそうだとしても私は気にしませんよ。そういうところも含めてセシリアが、好きなんです。それに、それを上回る愛しさがあるんです。彼女は私の光。彼女は…私を救ってくれたから。」
「救った?」
心当たりがあるとすればやはりランドールで刺客から命を助けたことしか思い浮かばない。
だがここで負けるわけにはいかない。とりあえずスライブの関心をセシリアから逸らさなければ。
「そうか…まぁ、もし命を救われたとしても気に病む必要はないのでは?本人もしたくてしたんだと思うんだし。」
「うーん。やっぱり分かってないなぁ」と聞こえたが…気のせいだろうか?
そしてスライブは難しい顔をしたのち至極真剣な表情で答えた。
「ただ、そうですね。もし一つ彼女の欠点を上げるとしたらもう少し膨よかでもいいですね。彼女は少しばかり痩せすぎてますから。そうそう、陛下のように。」
「え?ぼ、僕?」
いきなり矛先が少年王としての自分に向いてセシリアは戸惑った。
「はい、男性にしては華奢ですし。少し筋肉がないのか女性のような抱き心地です。柔らかくて、正直女性のような体つきですし。」
「だ、抱き心地?!」
「ええ、この間刺客に襲われた時に少し触れされていただきましたが。あまりにも華奢て折れてしまうのではと心配になりましたよ。まるで女性みたいな」
刺客を襲われた時のことを思い出して自分の失態を思い出す。
予想外の事態だったがあの時のことを思うと羞恥心で顔が赤くなる。
抱きしめられたときのスライブの体の感触と体温を思い出して体が火照ってきた。
「いやいやいや、僕は男だぞ!!でもそう…だな。もっと、男らしくならなきゃな。筋トレをすればいいのか?」
「そう来ましたか…。」
スライブは少し困った顔をした後、小さくため息をついた。
「まぁ、当面はきちんと食べることです。痩せすぎはいけませんよ。
「…努力はするけど…別に食べたくないわけではないし、あれが限度だよ」
「そうですね。では滋養のあるものなどを口にするといいかもしれませんね。それに忙しいのは分かりますが、基本的に陛下は食事を疎かにしがちです。食事は元気の源ですよ。朝がフルーツだけでは正直体も持たないでしょ」
確かに忙しさにかまけて軽食をとることが多いセシリアにとっては耳の痛い指摘だった。
それに食事は元気の源とは、確かに一理あるなぁとも感じていた。
「分かった。なるべくちゃんと食べるようにするよ」
「そうしてください。では、私は資料も貰ったので失礼しますね」
そうしてスライブはまた平然とした図書室を去ろうとした。そして別れ際に一言振り返って言った。
「そうそう、陛下のその口調いいですね。人間らしくて好きですよ。でもそうですね…もっと心を開いて欲しいところではありますが」
「?どういう意味だ?」
「いいえ…では…。」
パタリと閉じたドアを見てセシリアはため息をついた。
結局なんの解決もできていないような気がする。それよりも話をすり替えられてしまった。
(あーこれは…幻滅作戦は失敗した…のかしら?)
早速前途多難だとまたため息をついてしまう。
とりあえず明日マクシミリアンに報告して次の案を考えなくては。
そう思ってセシリアも自室に戻ることにした。
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