身代わり少年王のセシリアと隣国の王子の恋愛攻防 ー私が女なのは極秘事項なので初恋の人と言われても困ります!―

イトカワジンカイ

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マックスの負傷④

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「まずは落ち着いて聞いてください。実は宰相殿が先ほどの襲撃で負傷しました。」
「な…マックスは大丈夫なのか?どのくらい重傷なのか?」
「命に危険はありません。当面の間は動けないでしょう。」
「マックスはどこに!?」
「宰相殿のお部屋におります」

駆け出したい気持ちを抑えて、セシリアはマクシミリアンの元に急いだ。
まだ少しふらつくのをスライブが支えてくれる。

(マックス…無事にいて…!!)

祈るような思いで足早に廊下を歩いて行く。なのにこういう時に厄介な人物が向こうからやって来た。前王弟で叔父であるアレクセイだった。

今一番顔を見たくない。今回の刺客だって、もしかしてこの男かもしれない。
アレクセイを認めると、セシリアはスライブから体を離して毅然とした態度をとる。

「これはこれはライナスではないか。そんなに急いでどこに行くんだ?」」
「叔父上、ご無沙汰しておりますね。生憎私は優雅に暮らす叔父上とは違い、忙しい身の上で。全く時間が有り余っているようで羨ましい限りですね」

今までも刺客を送っては失敗しているという前科があるので、今回の刺客もそうだろうとは思いつつ、マクシミリアンのことを思うと嫌味の一つも言いたくなる。
その嫌味に気づいたようで少し顔を赤らめたアレクセイだったが、冷静を務めているようで鼻で笑ってきた

「変な政策ばかりを提案して自分で忙しくしているのではないか?そんな変な政策を強行しているといつか命を狙われかねないぞ?」
「私には叔父上とは違って人望もありますから。嫌味しか言えない無能な家臣にしか人望を持っていない方の方が足元掬われないように気を付けてください」
「!!私は帰る!!まぁ、せいぜい頼りにならない騎士共に守ってもらうのだな」

そう言ってずんずんと音を立てながらアレクセイは去っていった。1テンポ遅れるようにしてアレクセイの取り巻きの貴族が慌てて後を追っていった。
それを見送ってセシリアは小さくため息をついて、スライブ達に向き直った。

「はぁ…お見苦しいところをお見せした。」
「いえ…ご存じだとは思いますがトーランドも3年前は第二王妃との内乱もありました。どこでもこのような問題は付きまとうものですよ」

そういうサティだったがその表情から言外に「身内も纏められないとは少年王の手腕も大したことないな」と言われているようだった。
まぁ、そう思われるのは仕方ない。これから何とか挽回するしかないなぁと頭の隅では考えたが、それよりもマクシミリアンの容態の方が先決だ。
セシリアは再び廊下を歩きだした。

「マックス!!大丈夫か!!」

ドアを勢いよく開けると、奥の部屋のベッドに横たわるマクシミリアンを見つけて駆け寄った。
するとマクシミリアンが薄目を開けてセシリアを見た。その顔色は青白く、起き上がろうとして傷が痛むのか顔をしかめた。

「寝たままでいい。傷は…痛むよな。すまない。巻き込んだ」
「いいえ。私は大丈夫です。陛下にお怪我がなくてよかったです。」

そう言いながらもマクシミリアンはセシリアの二の腕にある傷に気づいたようだ。だから、セシリアは先手を打ってマクシミリアンが言わんとする言葉を遮った。

「私は何ともないのだ。安心してくれ。それに政務はいい。傷が癒えるまで養生してくれ」
「それなのですが…。ライナス様はただでさえ激務ですし、宰相の私が政務を回さないと難しいかと。」
「動けないほどの傷なのだ。お前がいなくても何とかする」
「実はその件でお伝えしたいことが。」

マクシミリアンは少し困った顔をした後、セシリアの後ろに控えるようにして立っていたスライブに目線を向けた。

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