43 / 93
マックスの負傷④
しおりを挟む「まずは落ち着いて聞いてください。実は宰相殿が先ほどの襲撃で負傷しました。」
「な…マックスは大丈夫なのか?どのくらい重傷なのか?」
「命に危険はありません。当面の間は動けないでしょう。」
「マックスはどこに!?」
「宰相殿のお部屋におります」
駆け出したい気持ちを抑えて、セシリアはマクシミリアンの元に急いだ。
まだ少しふらつくのをスライブが支えてくれる。
(マックス…無事にいて…!!)
祈るような思いで足早に廊下を歩いて行く。なのにこういう時に厄介な人物が向こうからやって来た。前王弟で叔父であるアレクセイだった。
今一番顔を見たくない。今回の刺客だって、もしかしてこの男かもしれない。
アレクセイを認めると、セシリアはスライブから体を離して毅然とした態度をとる。
「これはこれはライナスではないか。そんなに急いでどこに行くんだ?」」
「叔父上、ご無沙汰しておりますね。生憎私は優雅に暮らす叔父上とは違い、忙しい身の上で。全く時間が有り余っているようで羨ましい限りですね」
今までも刺客を送っては失敗しているという前科があるので、今回の刺客もそうだろうとは思いつつ、マクシミリアンのことを思うと嫌味の一つも言いたくなる。
その嫌味に気づいたようで少し顔を赤らめたアレクセイだったが、冷静を務めているようで鼻で笑ってきた
「変な政策ばかりを提案して自分で忙しくしているのではないか?そんな変な政策を強行しているといつか命を狙われかねないぞ?」
「私には叔父上とは違って人望もありますから。嫌味しか言えない無能な家臣にしか人望を持っていない方の方が足元掬われないように気を付けてください」
「!!私は帰る!!まぁ、せいぜい頼りにならない騎士共に守ってもらうのだな」
そう言ってずんずんと音を立てながらアレクセイは去っていった。1テンポ遅れるようにしてアレクセイの取り巻きの貴族が慌てて後を追っていった。
それを見送ってセシリアは小さくため息をついて、スライブ達に向き直った。
「はぁ…お見苦しいところをお見せした。」
「いえ…ご存じだとは思いますがトーランドも3年前は第二王妃との内乱もありました。どこでもこのような問題は付きまとうものですよ」
そういうサティだったがその表情から言外に「身内も纏められないとは少年王の手腕も大したことないな」と言われているようだった。
まぁ、そう思われるのは仕方ない。これから何とか挽回するしかないなぁと頭の隅では考えたが、それよりもマクシミリアンの容態の方が先決だ。
セシリアは再び廊下を歩きだした。
「マックス!!大丈夫か!!」
ドアを勢いよく開けると、奥の部屋のベッドに横たわるマクシミリアンを見つけて駆け寄った。
するとマクシミリアンが薄目を開けてセシリアを見た。その顔色は青白く、起き上がろうとして傷が痛むのか顔をしかめた。
「寝たままでいい。傷は…痛むよな。すまない。巻き込んだ」
「いいえ。私は大丈夫です。陛下にお怪我がなくてよかったです。」
そう言いながらもマクシミリアンはセシリアの二の腕にある傷に気づいたようだ。だから、セシリアは先手を打ってマクシミリアンが言わんとする言葉を遮った。
「私は何ともないのだ。安心してくれ。それに政務はいい。傷が癒えるまで養生してくれ」
「それなのですが…。ライナス様はただでさえ激務ですし、宰相の私が政務を回さないと難しいかと。」
「動けないほどの傷なのだ。お前がいなくても何とかする」
「実はその件でお伝えしたいことが。」
マクシミリアンは少し困った顔をした後、セシリアの後ろに控えるようにして立っていたスライブに目線を向けた。
0
お気に入りに追加
154
あなたにおすすめの小説
私の入る余地なんてないことはわかってる。だけど……。
さくしゃ
恋愛
キャロルは知っていた。
許嫁であるリオンと、親友のサンが互いを想い合っていることを。
幼い頃からずっと想ってきたリオン、失いたくない大切な親友であるサン。キャロルは苦悩の末に、リオンへの想いを封じ、身を引くと決めていた——はずだった。
(ああ、もう、)
やり過ごせると思ってた。でも、そんなことを言われたら。
(ずるいよ……)
リオンはサンのことだけを見ていると思っていた。けれど——違った。
こんな私なんかのことを。
友情と恋情の狭間で揺れ動くキャロル、リオン、サンの想い。
彼らが最後に選ぶ答えとは——?
⚠️好みが非常に分かれる作品となっております。

まだ20歳の未亡人なので、この後は好きに生きてもいいですか?
せいめ
恋愛
政略結婚で愛することもなかった旦那様が魔物討伐中の事故で亡くなったのが1年前。
喪が明け、子供がいない私はこの家を出て行くことに決めました。
そんな時でした。高額報酬の良い仕事があると声を掛けて頂いたのです。
その仕事内容とは高貴な身分の方の閨指導のようでした。非常に悩みましたが、家を出るのにお金が必要な私は、その仕事を受けることに決めたのです。
閨指導って、そんなに何度も会う必要ないですよね?しかも、指導が必要には見えませんでしたが…。
でも、高額な報酬なので文句は言いませんわ。
家を出る資金を得た私は、今度こそ自由に好きなことをして生きていきたいと考えて旅立つことに決めました。
その後、新しい生活を楽しんでいる私の所に現れたのは……。
まずは亡くなったはずの旦那様との話から。
ご都合主義です。
設定は緩いです。
誤字脱字申し訳ありません。
主人公の名前を途中から間違えていました。
アメリアです。すみません。
Knight―― 純白の堕天使 ――
星蘭
ファンタジー
イリュジア王国を守るディアロ城騎士団に所属する勇ましい騎士、フィア。
容姿端麗、勇猛果敢なディアロ城城勤騎士。
彼にはある、秘密があって……――
そんな彼と仲間の絆の物語。

【完結】悪役令嬢のトゥルーロマンスは断罪から☆
白雨 音
恋愛
『生まれ変る順番を待つか、断罪直前の悪役令嬢の人生を代わって生きるか』
女神に選択を迫られた時、迷わずに悪役令嬢の人生を選んだ。
それは、その世界が、前世のお気に入り乙女ゲームの世界観にあり、
愛すべき推し…ヒロインの義兄、イレールが居たからだ!
彼に会いたい一心で、途中転生させて貰った人生、あなたへの愛に生きます!
異世界に途中転生した悪役令嬢ヴィオレットがハッピーエンドを目指します☆
《完結しました》
皇帝は虐げられた身代わり妃の瞳に溺れる
えくれあ
恋愛
丞相の娘として生まれながら、蔡 重華は生まれ持った髪の色によりそれを認められず使用人のような扱いを受けて育った。
一方、母違いの妹である蔡 鈴麗は父親の愛情を一身に受け、何不自由なく育った。そんな鈴麗は、破格の待遇での皇帝への輿入れが決まる。
しかし、わがまま放題で育った鈴麗は輿入れ当日、後先を考えることなく逃げ出してしまった。困った父は、こんな時だけ重華を娘扱いし、鈴麗が見つかるまで身代わりを務めるように命じる。
皇帝である李 晧月は、後宮の妃嬪たちに全く興味を示さないことで有名だ。きっと重華にも興味は示さず、身代わりだと気づかれることなくやり過ごせると思っていたのだが……

できれば穏便に修道院生活へ移行したいのです
新条 カイ
恋愛
ここは魔法…魔術がある世界。魔力持ちが優位な世界。そんな世界に日本から転生した私だったけれど…魔力持ちではなかった。
それでも、貴族の次女として生まれたから、なんとかなると思っていたのに…逆に、悲惨な将来になる可能性があるですって!?貴族の妾!?嫌よそんなもの。それなら、女の幸せより、悠々自適…かはわからないけれど、修道院での生活がいいに決まってる、はず?
将来の夢は修道院での生活!と、息巻いていたのに、あれ。なんで婚約を申し込まれてるの!?え、第二王子様の護衛騎士様!?接点どこ!?
婚約から逃れたい元日本人、現貴族のお嬢様の、逃れられない恋模様をお送りします。
■■両翼の守り人のヒロイン側の話です。乳母兄弟のあいつが暴走してとんでもない方向にいくので、ストッパーとしてヒロイン側をちょいちょい設定やら会話文書いてたら、なんかこれもUPできそう。と…いう事で、UPしました。よろしくお願いします。(ストッパーになれればいいなぁ…)
■■
復讐のための五つの方法
炭田おと
恋愛
皇后として皇帝カエキリウスのもとに嫁いだイネスは、カエキリウスに愛人ルジェナがいることを知った。皇宮ではルジェナが権威を誇示していて、イネスは肩身が狭い思いをすることになる。
それでも耐えていたイネスだったが、父親に反逆の罪を着せられ、家族も、彼女自身も、処断されることが決まった。
グレゴリウス卿の手を借りて、一人生き残ったイネスは復讐を誓う。
72話で完結です。

この度、皆さんの予想通り婚約者候補から外れることになりました。ですが、すぐに結婚することになりました。
鶯埜 餡
恋愛
ある事件のせいでいろいろ言われながらも国王夫妻の働きかけで王太子の婚約者候補となったシャルロッテ。
しかし当の王太子ルドウィックはアリアナという男爵令嬢にべったり。噂好きな貴族たちはシャルロッテに婚約者候補から外れるのではないかと言っていたが
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる