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突然のありえない条件③
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確かに同盟の条件としては、マスティリアの方が優位になっているだろう。
そのくらいの条件がなければとても対等な同盟にはならないのは分かってはいる。
なんだか同盟を結びたいのか結びたくないのか分からない状況ではあったが、とりあえずはセシリアがマスティリア国王であることがバレなければ、また同盟に関する交渉の余地はあるのだ。
ため息交じりにセシリアが頷くととライナスは微笑を浮かべ、王太子然としているカレルは柔和な笑みを浮かべて言った。
「ありがとうございます。従者の言った通りにさせていただきますね。では、同盟が結べる様努力します。」
会談を終え、執務室に戻る廊下をセシリア達は無言で歩いた。というより、半ば呆然としていると言ってもいい。
そして執務室に戻った3人は大きなため息をついた。
会談が終われば「はい、さよなら」でスライブ達を送り返すことができると思ったのに予想外の展開である。
「そんな条件がくるなんて想定外でしょ?!なんで私なの?!」
泣きそうになりながらセシリアは叫んだ。それに対して半ば自棄のようにマクシミリアンも声を荒げる。
「知りませんよ!なにか昔したんじゃないんですか?」
「何かって、別に何かしたわけじゃないわよ。なんか追われているから助けて食事奢って、その見返りに肉体労働してもらったんだけど」
「後半はともかく、前半だけなら感謝してるんじゃないですか?」
「それで求婚なんてぶっ飛びすぎでしょ?」
再びため息が出る。こんなことなら助けなきゃ良かったと一瞬思ってしまう。
そんな二人の重い空気を払うように、フェイルスが苦笑しながら言った。
「まぁまぁ。スライブ殿下が探しているのはセシリア嬢で、セシリア嬢は普段ライナス陛下なわけですよね。だからなるべく近寄らないようにしてらいいと思うよ」
「そ、そうよね!!」
思えばスライブと会ったのはランドールの街で、町娘としてだ。
貴族でもないことを強調しているし、案外スライブ自身トーランドに行ってくれるかもしれない。
「そう言えば、セシリア様との出会いはランドールでしたよね。彼をランドールに行くように仕向ければ案外ばれないかもしれません。」
「そうですよ。スライブ殿下は王太子ですし、そんなに長く国を離れることはできないはずです。しばらくすれば諦めて帰ってくれると思いますよ」
「確かに同盟がなくなるのは残念だけど…背に腹は代えられないわよね!!」
こうして、スライブに絶対にバレないようにするプロジェクトが発足されたのだった。
◆ ◆ ◆
一方その頃トーランドの一室では、サティの怒鳴り声が響いていた。
「この頭花畑王子が!!この間の話ではまだ同盟は保留と話しただろう!!それを…あんな条件で!!」
「まぁまぁ、スライブもセシリアちゃん探しで必死なんだよ」
カレルがなだめるがサティの怒りは収まらない。
当然だ。あそこで同盟の条件をスライブが出したのは全くの想定外だったからだ。
「それに対しては申し訳ないとは思ってる。でもこれでマスティリアを自由に行動できるんだ。つまり城内もだ。」
「まさか、その上スパイなんてことするとか言わないよな」
「スパイまではいかないが謎多き少年王の正体がわかるかもしれないぞ」
サティの質問にスライブは意味深に笑ったが、サティ自身もは眼鏡の鼻あてをクイと上げて皮肉気に笑った。
「まぁ…あの少年王も驚きを隠せないようだったしな。これで謁見の件の意趣返しはできたと思えば腹の虫がおさまるというものだ」
「本当、サティは性格悪いね」
「それは誉め言葉として受け取っておこう。…そう言えば」
「なんだ、サティ。」
サティは何かに気づいたように言葉を切った。その先をスライブは促した。
「いや。マスティリアは同盟を結びたいのかそうでないのか。どちらかと思ってな」
「あー確かに、マスティリアがセシリアちゃんを差し出せば同盟できるまたとない機会だものね」
「ということは、そのセシリアとかいう女はマスティリアのアキレス腱かもしれないと思ってな」
「なるほどな」
セシリアに関する情報を整理する。
彼女はトーランドにいたが、現在は王都にいる。
昨日の夜会からすると侯爵以上だったからその関係に限られてくる。
そしてロイヤルガーデンの方に消えた。
そのあとに少年王が現れた。
何かしらあの少年王にかかわるような気がする。
「王族の関係者…か?」
「ん?スライブどうしたの?」
「いや…ちょっとふと思っただけだ」
「まぁ、お前は言い出したら聞かないからな。まずはお手並み拝見といこうか」
「期待に添えるようにしよう。」
「それに自分で探すのは女性に対する愛の証だよね。頑張って」
サティは呆れ半分だったが、面白いと思っているようで眼鏡を直していつもの企むような笑いを浮かべた。
「一応この国の将来がかかっているのだからな。もはや応援はしないが止めもしない。」
「そういえば、僕も気になる子がいるんだよね。これを機に探そうかな?」
「今度はカレル、お前まで…」
「冗談だよ。まぁまた会えたらいいなぁっとは思っているけどね」
こうしてそれぞれの思惑の中でマスティリアとトーランドの…もといセシリアとスライブの攻防の幕が切って落とされた。
そのくらいの条件がなければとても対等な同盟にはならないのは分かってはいる。
なんだか同盟を結びたいのか結びたくないのか分からない状況ではあったが、とりあえずはセシリアがマスティリア国王であることがバレなければ、また同盟に関する交渉の余地はあるのだ。
ため息交じりにセシリアが頷くととライナスは微笑を浮かべ、王太子然としているカレルは柔和な笑みを浮かべて言った。
「ありがとうございます。従者の言った通りにさせていただきますね。では、同盟が結べる様努力します。」
会談を終え、執務室に戻る廊下をセシリア達は無言で歩いた。というより、半ば呆然としていると言ってもいい。
そして執務室に戻った3人は大きなため息をついた。
会談が終われば「はい、さよなら」でスライブ達を送り返すことができると思ったのに予想外の展開である。
「そんな条件がくるなんて想定外でしょ?!なんで私なの?!」
泣きそうになりながらセシリアは叫んだ。それに対して半ば自棄のようにマクシミリアンも声を荒げる。
「知りませんよ!なにか昔したんじゃないんですか?」
「何かって、別に何かしたわけじゃないわよ。なんか追われているから助けて食事奢って、その見返りに肉体労働してもらったんだけど」
「後半はともかく、前半だけなら感謝してるんじゃないですか?」
「それで求婚なんてぶっ飛びすぎでしょ?」
再びため息が出る。こんなことなら助けなきゃ良かったと一瞬思ってしまう。
そんな二人の重い空気を払うように、フェイルスが苦笑しながら言った。
「まぁまぁ。スライブ殿下が探しているのはセシリア嬢で、セシリア嬢は普段ライナス陛下なわけですよね。だからなるべく近寄らないようにしてらいいと思うよ」
「そ、そうよね!!」
思えばスライブと会ったのはランドールの街で、町娘としてだ。
貴族でもないことを強調しているし、案外スライブ自身トーランドに行ってくれるかもしれない。
「そう言えば、セシリア様との出会いはランドールでしたよね。彼をランドールに行くように仕向ければ案外ばれないかもしれません。」
「そうですよ。スライブ殿下は王太子ですし、そんなに長く国を離れることはできないはずです。しばらくすれば諦めて帰ってくれると思いますよ」
「確かに同盟がなくなるのは残念だけど…背に腹は代えられないわよね!!」
こうして、スライブに絶対にバレないようにするプロジェクトが発足されたのだった。
◆ ◆ ◆
一方その頃トーランドの一室では、サティの怒鳴り声が響いていた。
「この頭花畑王子が!!この間の話ではまだ同盟は保留と話しただろう!!それを…あんな条件で!!」
「まぁまぁ、スライブもセシリアちゃん探しで必死なんだよ」
カレルがなだめるがサティの怒りは収まらない。
当然だ。あそこで同盟の条件をスライブが出したのは全くの想定外だったからだ。
「それに対しては申し訳ないとは思ってる。でもこれでマスティリアを自由に行動できるんだ。つまり城内もだ。」
「まさか、その上スパイなんてことするとか言わないよな」
「スパイまではいかないが謎多き少年王の正体がわかるかもしれないぞ」
サティの質問にスライブは意味深に笑ったが、サティ自身もは眼鏡の鼻あてをクイと上げて皮肉気に笑った。
「まぁ…あの少年王も驚きを隠せないようだったしな。これで謁見の件の意趣返しはできたと思えば腹の虫がおさまるというものだ」
「本当、サティは性格悪いね」
「それは誉め言葉として受け取っておこう。…そう言えば」
「なんだ、サティ。」
サティは何かに気づいたように言葉を切った。その先をスライブは促した。
「いや。マスティリアは同盟を結びたいのかそうでないのか。どちらかと思ってな」
「あー確かに、マスティリアがセシリアちゃんを差し出せば同盟できるまたとない機会だものね」
「ということは、そのセシリアとかいう女はマスティリアのアキレス腱かもしれないと思ってな」
「なるほどな」
セシリアに関する情報を整理する。
彼女はトーランドにいたが、現在は王都にいる。
昨日の夜会からすると侯爵以上だったからその関係に限られてくる。
そしてロイヤルガーデンの方に消えた。
そのあとに少年王が現れた。
何かしらあの少年王にかかわるような気がする。
「王族の関係者…か?」
「ん?スライブどうしたの?」
「いや…ちょっとふと思っただけだ」
「まぁ、お前は言い出したら聞かないからな。まずはお手並み拝見といこうか」
「期待に添えるようにしよう。」
「それに自分で探すのは女性に対する愛の証だよね。頑張って」
サティは呆れ半分だったが、面白いと思っているようで眼鏡を直していつもの企むような笑いを浮かべた。
「一応この国の将来がかかっているのだからな。もはや応援はしないが止めもしない。」
「そういえば、僕も気になる子がいるんだよね。これを機に探そうかな?」
「今度はカレル、お前まで…」
「冗談だよ。まぁまた会えたらいいなぁっとは思っているけどね」
こうしてそれぞれの思惑の中でマスティリアとトーランドの…もといセシリアとスライブの攻防の幕が切って落とされた。
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