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スライブの回想⑤

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サティの容赦ない条件にカレルも苦笑した。
サティの言うことはわかる。スライブ自身3年前に王位継承争いに巻き込まれ命を狙われたのだから。反勢力を一掃したからこそ今の王太子の地位があるのだ。

「俺もサティの言い分は尤もだとは思う。マスティリアとの同盟で直近での懸念は反対勢力がまだあることだ。それを制圧できたらこれは同盟に値するな」

だが、スライブとしてはそこはあまり重要ではない。
将来一国を担う王太子ではあるが、今はセシリア探しを優先したいのだ。
少年王の手腕はまた別にみればいい。

(セシリア…お前はどこにいるんだ)

このマスティリアの空の下にいるのは確かだ。だからこそどうしても恋焦がれる思いが止められないでいる。

屋台で料理を頼み円形広場に置かれたオープンスペースで今後のことについて話しながら食事をしていると、突然何かが壊れる音が響いた。
どうやら酔っ払いたちの喧嘩の音だった。
周囲の人間は暴れる男たちをどうしていいのか戸惑っている。

「まさか、取り押さえようとか思ってないよね?」
「…このまま暴れたままにしておけないだろう」

そう言ってスライブは暴れる男たちに近づいていった。面倒だとは思いつつもこのままだと被害が出ることを予想し、スライブは素早く場を治めた。もちろん武力行使だったが。
サティとカレルは野次馬が近づかないように対処していくれていたようだった。スライブは早々に片を付けて仲間の元に戻ろうとしたとき、カレルが少女と話しているのが見える。

(あいつはまた女に好かれて。顔が良いというのも善し悪しだな)

きっといつものように女がカレルにしつこく言い寄っているのだろう。他国に来ても女絡みで面倒を起こされたくはない。強く言えないカレルに代わってここは強く言わなくては。
そう思っているうちに、少女は逃げるように去ってしまった。

「カレル、今のは?」
「あぁ、あの子、無謀にも君の加勢をしようとしてたからさ。止めたんだよね」
「ほぅ…なかなか気の強い女だな」

笑ながらスライブは少女に目線をやった時、去っていく少女が一瞬スライブに目を向けた。
一瞬絡んだ視線。
金の髪にアメジストの瞳。年恰好も似ている。

(まさか…セシリア?)

ドクンドクンと心臓が耳につくほどの動悸がした。
だが、これだけ探しても行方が分からなかった今、再会するなど、都合の良い話があるか?
そう思いつつも、もしかしてという思いがスライブの中でせめぎあってた。

(でも、セシリアはこの王都にいる)

それは予感だった。希望的観測と言われるかもしれないが、スライブには何故かそれが現実のものになると断定できた。

「さぁ、食事も終わったから帰ろう。スライ…じゃなかった、ルディ帰るよ」
「あぁ」

カレルに促されて、スライブは自分が少女の後を見つめていたことに気づいてはっと我に返った。
もう一度セシリアのことを想ったあと、気持ちを切り替えるように前を歩くカレル達の後を追った。
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