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それは嵐の前だった②
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◆ ◆ ◆
「スライブ、頑張ってる?」
スライブの働いている教会の作業現場を訪れ、スライブに声をかけた。
スライブはセシリアを見つけると、汗をぬぐいながら近づいてきてくれた。
だいぶスライブの表情も柔らかくなった。笑顔を向けて歩いてくる。
「あぁセシリア。今日も来たんだ」
「もちろん!…うん、顔色は良いわね。」
スライブの顔色をチェックするとあんなに青白かった顔は少し日に焼けて血色も良くなっているようだった。
エメラルドの瞳も光を取り戻している。最初は無表情であったが大笑いすることはないものの微笑むようになり、目元も優しくなった気がする。
(うん。順調に回復しているわね。良かった…)
些細な変化かもしれないが、こうして人間らしい変化を見るとセシリアは嬉しくなる。
現場の作業員たちもなんだかんだ文句を言いながらもスライブを可愛がっており、スライブもそれに打ち解けているようだ。
「作業の邪魔しちゃった?」
「いや、もう午前中の休憩だ。」
「じゃあみんなに差し入れよ。果実のジュース。今日は少し暑くなりそうだから水分補給をしてね」
作業員たちに配るとにこやかに受け取り、思い思いの場所で休み始めていた。
スライブと共に、木材置き場の木材に腰かける。セシリアも自分が持ってきたジュースを口にすると、その甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
兄が来ていたせいもあるが、朝からバタバタしていたので一息つくことができた気がする。
「仕事には慣れた?」
「あぁ。元々体を動かすのは好きなんだ」
「そっか。だから結構鍛えてる体つきなのね」
セシリアが睨んだ通りスライブは細身の割に筋肉がしっかり付いている。小麦色に日焼けしており、数週間前の肌の白さの面影がないほど健康的な肌の色になった。
「何か不便なこととかあったら、気にしないで言ってね」
「…ありがとう。」
「私がここに連れてきたんだからそのくらいはするわよ」
セシリアが笑いながら答えると、スライブはかぶりを振って少しトーンを落として言った。
「お前は…聞かないんだな」
「何を?」
「死にたがっていた理由」
「なんで聞かないといけないの?」
突然言われて一瞬何を聞かれているのか分からなかった。そもそもなぜそんなことを聞くのだろうか?
スライブに興味がないわけではないが、セシリアには過去を詮索する筋合いも権利もないと思っている。だからそれを疑問に思って逆に聞いてしまった。
すると逆にスライブが驚いた様子だった。
「なんでって…気にならないのか?」
「うーん、だって人間生きていれば言えないことや言いたくないことの一つや二つあるんじゃない?それを無理に聞こうとは思わないよ。」
「そうか…」
「聞いて楽になるなら聞くけど…」
「じゃあいい。」
「そ。」
飲み物を持つ手をじっと見つめるスライブの瞳にはまだ迷いがあるようだった。
きっと聞かないで欲しい気持ちがあるが答えが分からないからこそ聞いて欲しいような、そんな複雑な表情だった。
だが、きっとスライブの性格からは自分の弱みを言い出すことは無いだろう。
(うーん、まだ悩める青少年ってところね。)
もしスライブが自分の悩みを言ったとしても、セシリアにはそれに対する回答は返せないだとう。
スライブの過去を知っているわけでもないし、スライブとも出会って一か月もしない位なのだ。
それに女である自分とは違うし、年も彼の方が上だ。
だが、少しなら気分転換をさせてあげることもできるかもしれない。
そう思ったセシリアはスライブの腕を引っ張って立たせると、そのまま彼を引っ張って歩き出した。
「じゃあ、行きましょう!」
「えっ!?またか?今度は行くんだ!?」
「とっておきの場所を案内してあげるから!ほらほら、来て!」
セシリアはスライブを伴って、教会から少し離れた丘に登った。
木々によって日差しが遮られている道を上って頂上までつくと、セシリアは後ろについてきたスライブを自分の横に呼んだ。
「ほら、到着!」
「ここは…」
「綺麗でしょ?街を一望できるの。」
そこはセシリアが悩み事があるときや答えが分からなくなった時に来るお気に入りの場所だった。
「ランドールって数年前にガーネルト国に侵略されたの。その時にこの街は焼かれた…でも、今は復興しているのでしょ?」
「あぁ。綺麗な街になっている」
「あれだけのダメージを受けても再興できる。だから同じように辛くても苦しくてもそれを乗り越える力は人間だれしもが備わっている。そう思うのよ。スライブはそう思わない?」
天真爛漫で人よりはあまり悩まないセシリアだったが、それなりに辛い経験もしている。
特にガーネルト侵攻の時には、目の前で多くの人が亡くなるのも見ていたし、街が焼かれるのも見ていた。
そう、見ているしかできなかったのだ。
だから自分の無力さを痛感した。幼いこと、女性であること、知識がないこと。色々な現実を目の当たりにして、何もできない自分の存在に絶望したのだ。
それを機に自分が出来ることを必死に探した。
絶対にもう二度と町を焼かせたりしないための方法を学ぼうとした。だからこそ思うのだ。
人には乗り越える力があるのだと。
そう信じて。
「スライブ、頑張ってる?」
スライブの働いている教会の作業現場を訪れ、スライブに声をかけた。
スライブはセシリアを見つけると、汗をぬぐいながら近づいてきてくれた。
だいぶスライブの表情も柔らかくなった。笑顔を向けて歩いてくる。
「あぁセシリア。今日も来たんだ」
「もちろん!…うん、顔色は良いわね。」
スライブの顔色をチェックするとあんなに青白かった顔は少し日に焼けて血色も良くなっているようだった。
エメラルドの瞳も光を取り戻している。最初は無表情であったが大笑いすることはないものの微笑むようになり、目元も優しくなった気がする。
(うん。順調に回復しているわね。良かった…)
些細な変化かもしれないが、こうして人間らしい変化を見るとセシリアは嬉しくなる。
現場の作業員たちもなんだかんだ文句を言いながらもスライブを可愛がっており、スライブもそれに打ち解けているようだ。
「作業の邪魔しちゃった?」
「いや、もう午前中の休憩だ。」
「じゃあみんなに差し入れよ。果実のジュース。今日は少し暑くなりそうだから水分補給をしてね」
作業員たちに配るとにこやかに受け取り、思い思いの場所で休み始めていた。
スライブと共に、木材置き場の木材に腰かける。セシリアも自分が持ってきたジュースを口にすると、その甘酸っぱさが口いっぱいに広がる。
兄が来ていたせいもあるが、朝からバタバタしていたので一息つくことができた気がする。
「仕事には慣れた?」
「あぁ。元々体を動かすのは好きなんだ」
「そっか。だから結構鍛えてる体つきなのね」
セシリアが睨んだ通りスライブは細身の割に筋肉がしっかり付いている。小麦色に日焼けしており、数週間前の肌の白さの面影がないほど健康的な肌の色になった。
「何か不便なこととかあったら、気にしないで言ってね」
「…ありがとう。」
「私がここに連れてきたんだからそのくらいはするわよ」
セシリアが笑いながら答えると、スライブはかぶりを振って少しトーンを落として言った。
「お前は…聞かないんだな」
「何を?」
「死にたがっていた理由」
「なんで聞かないといけないの?」
突然言われて一瞬何を聞かれているのか分からなかった。そもそもなぜそんなことを聞くのだろうか?
スライブに興味がないわけではないが、セシリアには過去を詮索する筋合いも権利もないと思っている。だからそれを疑問に思って逆に聞いてしまった。
すると逆にスライブが驚いた様子だった。
「なんでって…気にならないのか?」
「うーん、だって人間生きていれば言えないことや言いたくないことの一つや二つあるんじゃない?それを無理に聞こうとは思わないよ。」
「そうか…」
「聞いて楽になるなら聞くけど…」
「じゃあいい。」
「そ。」
飲み物を持つ手をじっと見つめるスライブの瞳にはまだ迷いがあるようだった。
きっと聞かないで欲しい気持ちがあるが答えが分からないからこそ聞いて欲しいような、そんな複雑な表情だった。
だが、きっとスライブの性格からは自分の弱みを言い出すことは無いだろう。
(うーん、まだ悩める青少年ってところね。)
もしスライブが自分の悩みを言ったとしても、セシリアにはそれに対する回答は返せないだとう。
スライブの過去を知っているわけでもないし、スライブとも出会って一か月もしない位なのだ。
それに女である自分とは違うし、年も彼の方が上だ。
だが、少しなら気分転換をさせてあげることもできるかもしれない。
そう思ったセシリアはスライブの腕を引っ張って立たせると、そのまま彼を引っ張って歩き出した。
「じゃあ、行きましょう!」
「えっ!?またか?今度は行くんだ!?」
「とっておきの場所を案内してあげるから!ほらほら、来て!」
セシリアはスライブを伴って、教会から少し離れた丘に登った。
木々によって日差しが遮られている道を上って頂上までつくと、セシリアは後ろについてきたスライブを自分の横に呼んだ。
「ほら、到着!」
「ここは…」
「綺麗でしょ?街を一望できるの。」
そこはセシリアが悩み事があるときや答えが分からなくなった時に来るお気に入りの場所だった。
「ランドールって数年前にガーネルト国に侵略されたの。その時にこの街は焼かれた…でも、今は復興しているのでしょ?」
「あぁ。綺麗な街になっている」
「あれだけのダメージを受けても再興できる。だから同じように辛くても苦しくてもそれを乗り越える力は人間だれしもが備わっている。そう思うのよ。スライブはそう思わない?」
天真爛漫で人よりはあまり悩まないセシリアだったが、それなりに辛い経験もしている。
特にガーネルト侵攻の時には、目の前で多くの人が亡くなるのも見ていたし、街が焼かれるのも見ていた。
そう、見ているしかできなかったのだ。
だから自分の無力さを痛感した。幼いこと、女性であること、知識がないこと。色々な現実を目の当たりにして、何もできない自分の存在に絶望したのだ。
それを機に自分が出来ることを必死に探した。
絶対にもう二度と町を焼かせたりしないための方法を学ぼうとした。だからこそ思うのだ。
人には乗り越える力があるのだと。
そう信じて。
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