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王家の双子⑤

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「今日、お伺いしたのは他でもない王子と王女のことです。12歳という年になり、そろそろ王都での本格的な教育を行いたいという話になりました。もう寄宿学校にも入っていい年齢です。」
「そうですね。ということは、ライナスを引き取りたいということですね。」
「お話が早くて助かります。」
「いつ、王都へ?」
「私と一緒に王都に行ってもらいます。急ではありますが、少々ガーネルト国がきな臭い動きもあるようです。何かが起こる前にライナス王子を王都に引き取りたいというのが側近たちの総意です」
「それは王子として王都へ行くのですか?」
「はい、もちろんです。これまで王子は病弱なため離宮で生活していたというのが表向きです。しかし12歳になり、心身ともに健やかに成長したということで城で生活することになったという設定で城に戻ってもらいます。」

ヴァンディアはしばらく黙っていた。思案するその表情からはマクシミリアンには何を考えているのかは分からないが、たぶんセシリアのことを気にしているのだろうと予想した。
ライナスと共に育ったセシリア。第一継承者の代理となるスペア。それがセシリアだった。
不遇な境遇で過ごしているかと思いきや見た限りでは自由に愛されて育ったことが分かる。だが、ここにきて明確に王家に入るライナスと一貴族となるセシリアには大きな差が生まれる。
環境も、その立場も。

「まぁ…今回いらした案件は想像がついていたので分かりました。2人にはそれとなく言っているのでさほど動揺もしないでしょう。ただ…」
「ただ…?」

少し言葉を濁したランドール伯の次の言葉をマクシミリアンは待った。何か問題があるのか。

「ライナスもセシリアも…少し…貴族らしくないというか。」
「あ…あぁ…」
「頭はいいです。教育は立派に修了してますし、恥ずかしくはないと思います。ですが先ほども会っていただいて分かるように、性格に少々問題があるのと、本人は王位継承権には興味がないようで。たぶん、ご迷惑をおかけするかと思います。その点は教育を誤ってしまったかもしれません。申し訳ない」

確かに少し難がある性格かもしれないが、先ほどの礼を見ると所作もマナーも完璧だった。頭もいいということで申し分ない。
多少迷惑をかけられても宰相補佐として王子をサポートする立場の自分がしっかりすればいいことだろう。ただ、気になったのは王位継承権に興味がない点だったが、その点もまだ12歳という年齢の内から教育すれば徐々に王族としての意識が芽生え、王位の継承も受け入れてくれるだろう。

(問題は多少あるが、些末なものだ。私がしっかり教育すれば問題はない。)

そう算段したマクシミリアンはヴァンディアを安心させるように満面の笑みで答えた。

「大丈夫です。お任せください」
「ありがとうございます」

ほっとしたようにヴァンディアは息をついて感謝の言葉を述べた。
そして3年後、そんな殊勝なことを思っていた自分を殴りたいと思うことになるのだが、その時のマクシミリアンには分かるはずもなかった。
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