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王家の双子③

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そんな彼らを見ながら妻のセザンヌはにこやかに微笑みながらうなだれる夫の肩をたたく。

「まぁまぁ、まだ2人とも10歳なのだから。これからどう変わるのか分からないですよ。子供のことですから状況も理解できないでしょうし」
「ならいいんだけどね…」

果たしてそのヴァンディアの嫌な予感は当たってしまうのだったが、それはまだ少し先の話だ。

ともかく双子たちはその後もすくすく育つことになる。
やがてセシリアが12の誕生日を迎えたときに王都から使いがやってくる。
あの宰相の息子であるマクシミリアン=アイゼルネだ。24歳という若さながら宰相補佐を任命されており、今日も宰相代理ということでランドールを訪れたのだ。

(…王家の血筋の方…。自分が将来お仕えすべき方。でもまだ12歳だろう。きっと王都で心細い思いをされるだろうから私がしっかりお支えしなくては!!)

マクシミリアンとしてはそんな殊勝なことを思っていた自分を今なら殴りたいと思うだろうが、この時には真剣にそう思っていたのだ。
マクシミリアンはどんな高貴な方が出てくるのかと思いつつランドール伯の領地に入る。森を抜けると小高い丘がありそこに小ぶりながら立派な黒塗りの城が見えた。
要塞のような堅牢な城の外には堀があり、マクシミリアンはそこの跳ね橋を通って城内に入った。

王家の秘密に関わる存在との対面ということで大仰な出迎えはされなかった。代わりに城の家令と思われる人物が迎えてくれると、今度は別の馬車に乗って城より離れた屋敷に向かっていく。
屋敷は大きくはないが、貴族の別荘くらいの規模で家族が住むにはちょうどいい大きさだった。どうやら城は政務を行うのに使用され、戦いが発生したときにはそこに避難する目的で作られているようだ。

やがて屋敷が見えると、正門から屋敷に続く石畳は中庭を通るように設計されていた。
庭には大きな木がそびえたっておりマクシミリアンはそこに吸い寄せられるように近づく。
春の風が広がる草を揺らし、大木も葉を揺らしてマクシミリアンに降り注ぐ光をも揺らした。
その優しい光は、王都から来た疲労を癒してくれるようで、マクシミリアンは目を閉じてその空気に浸ろうとした瞬間だった。
同時に大きな声がしてマクシミリアンはビクリと体を強張らせた。

「きゃーーーーーーーどいて!!」
「!?」

反射的に落下物を受け止めると、目の前には少女が落ちてきたではないか。春の陽に輝く金の髪。
その美しさに思わず目を見張る。一瞬天使が舞い降りたのではと思うほどだった。
だがすぐに少女が噂に聞く双子の妹のセシリアだとすぐに分かった。

「せ、セシリア嬢ですか?」
「そうです。…てか、ありがとうございます」

マクシミリアンはゆっくりとセシリアを下ろすと動揺を隠しつつ再び挨拶をしようと正式な礼を取ると同時に言葉をさえぎられる。

「私は…」
「マクシミリアン=アイゼルネ様ですね。私はセシリアです。この辺境の地までお越しいただきましてありがとうございます。何もおもてなしをできませんが、どうぞ中へ」
「あ…ありがとう…ございます。」

先ほどの衝撃の出会いを忘れさせられるかのような完璧で優雅な礼だった。さっき落下してきたのは気のせいかと思い、恐る恐るセシリアに尋ねる。

「あの…先ほどは何をなさっていたのですか?」
「…木登りですけど。」
「はぁ…」
「あの木の枝に座って遠くを眺めるのが好きなの」
「そうですか…」

むしろなぜそんなことを聞くのかというような口ぶりでセシリアは答えた。
あまりに堂々としているのでマクシミリアンの常識が違っているように感じられさえした。

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