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第一部
夢だったのなら(9)
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レイモンドはふと気がつけばベッドに寝転がり、部屋は明かりが落ちて真っ暗だった。彼はエレノーラに部屋に招き入れてもらい、マシュマロとハーブティを飲みながら色々と話をしたところまでは覚えている。
(それから…どうしたんだったか…)
話の流れで、エレノーラが持っていたワインを開けて、二人で飲んだ。そこまでは思い出したが、レイモンドはそこからは記憶がなかった。
(酔いが回って、そのまま寝入ってしまったのか?)
彼は少し違和感を感じな天井を眺め、寝返りを打って、変な声を出しそうになって飲み込んだ。
「っ…?!」
彼の隣には、エレノーラが寝ていた。レイモンドばっと上体を起こして辺りを見回し、ここが自分の部屋ではないことに気づく。慌てて自分の体に目をやって、服を着ていることを確認し、ほっと胸を撫で下ろした。襲わないと言っておきながら襲っていたら、彼女に合わせる顔が無いだろう。
「んん、…レイモンド…?」
レイモンドの動きに目を覚ましてしまったようで、目を擦りながらエレノーラがごろりと寝返りを打った。彼女は先程の部屋着ではなく、薄いネグリジェを身にまとっている。レイモンドはギリギリ見えそうで見えないその豊満な胸の谷間につい目がいってしまって、慌ててばっと顔を背けた。
(ま、まずい…)
レイモンドはこのままでは非常にまずいとベッドから降りようとしたが、彼の動きを阻止するように、エレノーラが体を起こして寄りかかる。
「なっ…えっ」
「…ねえ、レイモンド…」
エレノーラの手が伸ばされ、彼の手を絡めとった。華奢な指が自分の指に絡められて、レイモンドはびくりと体を震わす。
「…っエレノーラ…」
「レイモンド、お願い…このままここにいて…」
エレノーラは眉尻を下げ、不安そうな表情で縋るようにレイモンドに声をかける。彼女はそのまま彼の腕に自分の腕を絡め、胸を押し当てた。
「はっ…?!」
レイモンドは、これは都合のいい夢だろうかと思い、思い切り自分の頬をつねった。痛くなかった。
「…夢かよ?!」
今の流れは、痛くて夢じゃないことを確認できるところだろう。レイモンドの大きな声にエレノーラは反応しないことから、やはりこれは夢のようだ。レイモンドは非常に残念に感じつつも、少しほっとしていた。
「…エレノーラ、離してください」
「レイモンド、お願い…怖いの…」
エレノーラの言葉に、レイモンドは悲しいくらいに夢だと自覚する。彼女は決して、こんな弱音を吐かなかった。何時でも困ったように笑うだけで、彼にその心の内を中々明かしはしなかった。
「僕は、貴女が好きです。だから、…知りたい、のに」
夢ならばこんなもに簡単に言えるのに、現実は様々なことが柵み、レイモンドは上手く言葉にできなかった。彼の言葉に、彼が生み出したエレノーラは嬉しそうに笑った。
(それから…どうしたんだったか…)
話の流れで、エレノーラが持っていたワインを開けて、二人で飲んだ。そこまでは思い出したが、レイモンドはそこからは記憶がなかった。
(酔いが回って、そのまま寝入ってしまったのか?)
彼は少し違和感を感じな天井を眺め、寝返りを打って、変な声を出しそうになって飲み込んだ。
「っ…?!」
彼の隣には、エレノーラが寝ていた。レイモンドばっと上体を起こして辺りを見回し、ここが自分の部屋ではないことに気づく。慌てて自分の体に目をやって、服を着ていることを確認し、ほっと胸を撫で下ろした。襲わないと言っておきながら襲っていたら、彼女に合わせる顔が無いだろう。
「んん、…レイモンド…?」
レイモンドの動きに目を覚ましてしまったようで、目を擦りながらエレノーラがごろりと寝返りを打った。彼女は先程の部屋着ではなく、薄いネグリジェを身にまとっている。レイモンドはギリギリ見えそうで見えないその豊満な胸の谷間につい目がいってしまって、慌ててばっと顔を背けた。
(ま、まずい…)
レイモンドはこのままでは非常にまずいとベッドから降りようとしたが、彼の動きを阻止するように、エレノーラが体を起こして寄りかかる。
「なっ…えっ」
「…ねえ、レイモンド…」
エレノーラの手が伸ばされ、彼の手を絡めとった。華奢な指が自分の指に絡められて、レイモンドはびくりと体を震わす。
「…っエレノーラ…」
「レイモンド、お願い…このままここにいて…」
エレノーラは眉尻を下げ、不安そうな表情で縋るようにレイモンドに声をかける。彼女はそのまま彼の腕に自分の腕を絡め、胸を押し当てた。
「はっ…?!」
レイモンドは、これは都合のいい夢だろうかと思い、思い切り自分の頬をつねった。痛くなかった。
「…夢かよ?!」
今の流れは、痛くて夢じゃないことを確認できるところだろう。レイモンドの大きな声にエレノーラは反応しないことから、やはりこれは夢のようだ。レイモンドは非常に残念に感じつつも、少しほっとしていた。
「…エレノーラ、離してください」
「レイモンド、お願い…怖いの…」
エレノーラの言葉に、レイモンドは悲しいくらいに夢だと自覚する。彼女は決して、こんな弱音を吐かなかった。何時でも困ったように笑うだけで、彼にその心の内を中々明かしはしなかった。
「僕は、貴女が好きです。だから、…知りたい、のに」
夢ならばこんなもに簡単に言えるのに、現実は様々なことが柵み、レイモンドは上手く言葉にできなかった。彼の言葉に、彼が生み出したエレノーラは嬉しそうに笑った。
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