治療と称していただきます

茜菫

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第一部

年下騎士の奮闘(5)

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 エレノーラは王宮の端の方にある一室に住んでいる。住んでいると言うよりは、閉じ込められていると言える。護衛になる騎士か魔道士を、一年の殆どはレイモンドだが、伴わなければ部屋を出ることを許されていない。護衛さえ連れていれば王宮内を歩き回ることは可能だが、王宮の外となると、更に許可を得る必要がある。

 昔、享楽の魔女の侵入を許して惨劇が起こったこともあり、王宮の警備はこと厳重だ。王宮全体に宮廷魔道士たちが張り巡らせている結界もある。その上で、エレノーラが住む部屋には結界が張られていて、出入りできるのは扉から、更に一部の人間のみ。彼女も、その一部の人間を伴わなければ出ることができない。これは、享楽の魔女のような彼女を利用しようとする者から守るため、保護のためが名目だ。エレノーラはそれに不満を漏らすことはなく、むしろ、余程享楽の魔女のことが精神的な傷になっているのか、安心できていた。

 レイモンドが扉をノックすると、直ぐに中から返事があった。彼はそれを確認すると、静かに中に入る。部屋の中は魔法で灯した明かりがひとつついているだけで、少し薄暗かった。エレノーラの私物は少なく、二年近くここに住んでいるのに、生活感がなかった。

「レイモンド」

 この時間に部屋を訪れる者は彼だけだ。エレノーラは手にしていた本を閉じてテーブルの上に置き、その大きなアンバーの目にレイモンドを映し、小走りで彼の近くまでやってくる。緩く巻かれたブルネットの髪が、大きく開かれたネグリジェの、豊満な胸元にかかっていた。

「今夜はもう来ないかなって思っていたの。ちょっと、寂しかった…なんてね。来てくれて、ありがとう」

 唇を笑みの形に描き、エレノーラはレイモンドに抱きつく。彼が抱き返すと、彼女は彼の胸に顔を擦り寄せた。

「…別に、エレノーラのためじゃ」

「あるんでしょう?」

 レイモンドは言い切る前に、エレノーラはそう言ってにっこりと微笑まれ、彼は閉口する。確かに、彼は酒盛りしている最中も、今、こうしている間、彼女は一人きりだと気にかかっていた。

「…その…僕…私が、エレノーラに会いたくなった、から…だ」

「…レイモンド」

 彼の素直な言葉に、エレノーラはそれは嬉しそうに笑い、目を閉じて唇を差し出しキスをせがんだ。レイモンドは唇を重ね、薄く開かれたそこから舌を差し入れると、彼女の舌が応える。何度も甘い交わりを繰り返しながら、レイモンドがネグリジェのリボンを解くと、エレノーラは彼のベルトを外し、ズボンの上から半勃ちした陰茎をすりすりと撫ぜた。

 レイモンドが唇を離すと、エレノーラは悪戯っぽく笑う。彼は彼女の手を引いてベッドに向かい、身に纏うものを全て取り払って先にのりあげた彼女に、自分も全て脱ぎ捨てて覆いかぶさった。
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