まずは抱いてください

茜菫

文字の大きさ
上 下
57 / 109
本編

期待してもいいだろうか(8)*

しおりを挟む
「…務め、か」

 アデリナは責任感が強い。彼女は自分が成すべきことを自分に課して、それを果たす為の努力を惜しまない。ヴァルターはそんな彼女だから惚れたが、やはりアデリナが自分に抱かれるのは務めだからだと思うと、少し複雑だった。

「…旦那様?」

「今は、務めのことを忘れてくれ」

「えっ」

 ヴァルターが驚いたように目を見開いたアデリナの唇に口付ける。彼女は初めはそれに戸惑っていたようだが、受け入れるように腕を背中に回した。忘れてくれと言ったところで忘れられないだろうが、それが肯定の意のように感じて、彼は少しほっとした。

「ん…」

 舌を絡めあい、唇を重ねるうちにアデリナは惚けたような表情になっていく。ヴァルターがネグリジェの紐を解いてずらすと、白くて細い肩が現れた。

「アデリナ」

 情欲に濡れたアデリナの目と、同じ熱を含んだヴァルターの目が合う。少し俯いた彼女はネグリジェを脱ぐと、ベッドの上に乗り上げた。ヴァルターもナイトガウンを脱ぎ捨て、横になったアデリナに覆い被さる。

「旦那様…」

「アデリナ、名を」

 ヴァルターは彼女が務めとして抱かれるのだとしても、それを利用しない手はない。拒絶されない程度に、少しずつ意識して貰えるようにすればよい。

「…ヴァルター」

 おずおずと彼女が口にした自分の名に、ヴァルターは思わず口元が緩んだ。アデリナは顔を赤くしながらも、彼から目をそらさない。彼はその唇に一度口付けると、白い肌に唇を伝わせていく。片手で胸を柔らかく揉みながら、反対の胸の頂きを唇で食んだ。

「…っ、…んん」

 アデリナは声を漏らしながら、ヴァルターの後頭部に手を回し、髪を緩くかき乱す。それを繰り返している内に、彼女が腿を擦り合わせ、それに気づいたヴァルターは身を起こした。

 ヴァルターは彼女の両脚を開かせてその間に割り入ると、膝を立たせる。彼は自分しか知らない彼女のその秘めた場所を前に、息をのんだ。ヴァルターが濡れそぼつ割れ目を指でなぞると、アデリナはびくりと体を震わせる。反応を見ながら彼は指を差し入れ、中を擦ると、その指が軽く締め付けられた。

「あ、…ん…っ」

 反応が良い所を指で何度も擦り付けると、彼女の腰が揺れる。彼は緩んだそこにもう一本と指を差し入れ、ゆっくりと抽挿させながら、割れ目の上の小さな突起に口付けた。

「あっ…そんなところ、…あぁっ」

 舌先で転がして軽く吸い付くと、アデリナはびくんと身体を跳ねて喘いだ。指で中を擦りながらそれを繰り返すと、彼女の声にも変化が表れる。

「ぁっ…ヴァルタ、ぁ…も、もう…ん、あっ」

 腰が浮き、びくびくと体を震わせてアデリナは達した。中がうねり指に絡みつき、ヴァルターはその中で果てる快楽を思い出して生唾を飲み込んだ。
しおりを挟む

あなたにおすすめの小説

娼館で元夫と再会しました

無味無臭(不定期更新)
恋愛
公爵家に嫁いですぐ、寡黙な夫と厳格な義父母との関係に悩みホームシックにもなった私は、ついに耐えきれず離縁状を机に置いて嫁ぎ先から逃げ出した。 しかし実家に帰っても、そこに私の居場所はない。 連れ戻されてしまうと危惧した私は、自らの体を売って生計を立てることにした。 「シーク様…」 どうして貴方がここに? 元夫と娼館で再会してしまうなんて、なんという不運なの!

皇妃は寵愛を求めるのを止めて離宮に引き篭ることにしました。

恋愛
ネルネ皇国の后妃ケイトは、陰謀渦巻く後宮で毒を盛られ生死の境を彷徨った。 そこで思い出した前世の記憶。 進んだ文明の中で自ら働き、 一人暮らししていた前世の自分。 そこには確かに自由があった。 後宮には何人もの側室が暮らし、日々皇帝の寵愛を得ようと水面下で醜い争いを繰り広げていた。 皇帝の寵愛を一身に受けるために。 ケイトはそんな日々にも心を痛めることなく、ただ皇帝陛下を信じて生きてきた。 しかし、前世の記憶を思い出したケイトには耐えられない。命を狙われる生活も、夫が他の女性と閨を共にするのを笑顔で容認する事も。 危険のあるこんな場所で子供を産むのも不安。 療養のため離宮に引き篭るが、皇帝陛下は戻ってきて欲しいようで……? 設定はゆるゆるなので、見逃してください。 ※ヒロインやヒーローのキャラがイライラする方はバックでお願いします。 ※溺愛目指します ※R18は保険です ※本編18話で完結

寡黙な彼は欲望を我慢している

山吹花月
恋愛
近頃態度がそっけない彼。 夜の触れ合いも淡白になった。 彼の態度の変化に浮気を疑うが、原因は真逆だったことを打ち明けられる。 「お前が可愛すぎて、抑えられないんだ」 すれ違い破局危機からの仲直りいちゃ甘らぶえっち。 ◇ムーンライトノベルズ様へも掲載しております。

初めての相手が陛下で良かった

ウサギテイマーTK
恋愛
第二王子から婚約破棄された侯爵令嬢アリミアは、王子の新しい婚約者付の女官として出仕することを命令される。新しい婚約者はアリミアの義妹。それどころか、第二王子と義妹の初夜を見届けるお役をも仰せつかる。それはアリミアをはめる罠でもあった。媚薬を盛られたアリミアは、熱くなった体を持て余す。そんなアリミアを助けたのは、彼女の初恋の相手、現国王であった。アリミアは陛下に懇願する。自分を抱いて欲しいと。 ※ダラダラエッチシーンが続きます。苦手な方は無理なさらずに。

公爵様、契約通り、跡継ぎを身籠りました!-もう契約は満了ですわよ・・・ね?ちょっと待って、どうして契約が終わらないんでしょうかぁぁ?!-

猫まんじゅう
恋愛
 そう、没落寸前の実家を助けて頂く代わりに、跡継ぎを産む事を条件にした契約結婚だったのです。  無事跡継ぎを妊娠したフィリス。夫であるバルモント公爵との契約達成は出産までの約9か月となった。  筈だったのです······が? ◆◇◆  「この結婚は契約結婚だ。貴女の実家の財の工面はする。代わりに、貴女には私の跡継ぎを産んでもらおう」  拝啓、公爵様。財政に悩んでいた私の家を助ける代わりに、跡継ぎを産むという一時的な契約結婚でございましたよね・・・?ええ、跡継ぎは産みました。なぜ、まだ契約が完了しないんでしょうか?  「ちょ、ちょ、ちょっと待ってくださいませええ!この契約!あと・・・、一体あと、何人子供を産めば契約が満了になるのですッ!!?」  溺愛と、悪阻(ツワリ)ルートは二人がお互いに想いを通じ合わせても終わらない? ◆◇◆ 安心保障のR15設定。 描写の直接的な表現はありませんが、”匂わせ”も気になる吐き悪阻体質の方はご注意ください。 ゆるゆる設定のコメディ要素あり。 つわりに付随する嘔吐表現などが多く含まれます。 ※妊娠に関する内容を含みます。 【2023/07/15/9:00〜07/17/15:00, HOTランキング1位ありがとうございます!】 こちらは小説家になろうでも完結掲載しております(詳細はあとがきにて、)

騎士団長の欲望に今日も犯される

シェルビビ
恋愛
 ロレッタは小さい時から前世の記憶がある。元々伯爵令嬢だったが両親が投資話で大失敗し、没落してしまったため今は平民。前世の知識を使ってお金持ちになった結果、一家離散してしまったため前世の知識を使うことをしないと決意した。  就職先は騎士団内の治癒師でいい環境だったが、ルキウスが男に襲われそうになっている時に助けた結果纏わりつかれてうんざりする日々。  ある日、お地蔵様にお願いをした結果ルキウスが全裸に見えてしまった。  しかし、二日目にルキウスが分身して周囲から見えない分身にエッチな事をされる日々が始まった。  無視すればいつかは収まると思っていたが、分身は見えていないと分かると行動が大胆になっていく。  文章を付け足しています。すいません

【完結】長い眠りのその後で

maruko
恋愛
伯爵令嬢のアディルは王宮魔術師団の副団長サンディル・メイナードと結婚しました。 でも婚約してから婚姻まで一度も会えず、婚姻式でも、新居に向かう馬車の中でも目も合わせない旦那様。 いくら政略結婚でも幸せになりたいって思ってもいいでしょう? このまま幸せになれるのかしらと思ってたら⋯⋯アレッ?旦那様が2人!! どうして旦那様はずっと眠ってるの? 唖然としたけど強制的に旦那様の為に動かないと行けないみたい。 しょうがないアディル頑張りまーす!! 複雑な家庭環境で育って、醒めた目で世間を見ているアディルが幸せになるまでの物語です 全50話(2話分は登場人物と時系列の整理含む) ※他サイトでも投稿しております ご都合主義、誤字脱字、未熟者ですが優しい目線で読んで頂けますと幸いです

王女の朝の身支度

sleepingangel02
恋愛
政略結婚で愛のない夫婦。夫の国王は,何人もの側室がいて,王女はないがしろ。それどころか,王女担当まで用意する始末。さて,その行方は?

処理中です...