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本編
少し寂しかったのです(4)
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こういった時は、相手の格好いいと思うところが浮かんでくるものではないのか、だとすれば、これを恋だと判断するには尚早かもしれないと、アデリナは首を傾げる。
(けれど、旦那様のあの表情…可愛いんですもの…)
彼女は再びその表情を思い出して、頬を緩ませた。他人には、特にヴァルターの副官であるエドゥアルトには、どこがと言われるだろう。だが、アデリナにはヴァルターのあの表情が、可愛くてたまらない。
愛想がなく、彼女よりも九つ歳上で、体は大きくて鍛えられていて、顔立ちは精悍で男らしく、可愛いからは程遠い容貌 だ。普段は堂々としている彼が、彼女に何かをしようとする時には緊張し、その堂々たるさまを崩してしまう。アデリナは表情がというより、その表情に至る経緯に可愛さを覚えているのかもしれない。
(やっぱり可愛い…ではなくて…)
勿論、可愛いと思うこと以外もあった。アデリナが他の表情はどうだろうと記憶を辿り、思い出したのはヴァルターの笑顔だ。初夜の翌朝に笑った表情、オペラ鑑賞からの帰りの馬車で笑った表情、どちらも格好よい。僅かに口角を上げて目元が緩む程度のものだが、そんな僅かな変化しかない笑顔を思い出すだけで、彼女の胸は高鳴る。
(…何度でも見たいわ)
どうすれば、あのように笑ってくれるのだろう。本当に僅かな変化でも、それが自分に向けられているものだと思うと、嬉しい。アデリナは無愛想で眉間に皺を寄せてばかりな彼が、自分に笑いかけてくれる、それが特別なように感じられて、親しくなれたように思えた。
彼女は他にはと引き続き思い返していると、不意に営みの最中を思い出して顔が熱くなる。このベッドの上でしか見られないヴァルターの姿が思い浮かんでいき、惚けたような表情と声、逞しい体や私の体に触れる手の大きさ、そして、あの…
(もう、私ったら!何を考えているの!)
アデリナははっとして枕に顔を埋めて唸り、自分を叱りつけた。夫婦となってからほぼ毎夜、このベッドで互いをさらけ出していたせいだと言い訳する。最後までの交わりは最近まで控えていたが、唇を重ねて肌を触れ合わせ、触れ合って快楽を共にする。それは円滑にことを進め、跡継ぎを産む務めを果たすためだ。
(…本当に、それだけだったのかしら)
下心がなかったとは、言いきれないかもしれない。アデリナはそんなことを考え、再び夜のことを思い出してしまい、首を横に振る。時間と場所のせいだと言い訳して、今夜は考えることはやめて、明日ヴァルターの顔を見て改めてもう一度考えてみよう。そう思い、彼女は上掛けを引っ張りあげた。
(…寂しいわ)
アデリナは隣が広く空いたベッドの上を眺め、自分を包む温もりがないことに寂しさを覚える。それだけでもう、答えはわかるような気がした。
(けれど、旦那様のあの表情…可愛いんですもの…)
彼女は再びその表情を思い出して、頬を緩ませた。他人には、特にヴァルターの副官であるエドゥアルトには、どこがと言われるだろう。だが、アデリナにはヴァルターのあの表情が、可愛くてたまらない。
愛想がなく、彼女よりも九つ歳上で、体は大きくて鍛えられていて、顔立ちは精悍で男らしく、可愛いからは程遠い容貌 だ。普段は堂々としている彼が、彼女に何かをしようとする時には緊張し、その堂々たるさまを崩してしまう。アデリナは表情がというより、その表情に至る経緯に可愛さを覚えているのかもしれない。
(やっぱり可愛い…ではなくて…)
勿論、可愛いと思うこと以外もあった。アデリナが他の表情はどうだろうと記憶を辿り、思い出したのはヴァルターの笑顔だ。初夜の翌朝に笑った表情、オペラ鑑賞からの帰りの馬車で笑った表情、どちらも格好よい。僅かに口角を上げて目元が緩む程度のものだが、そんな僅かな変化しかない笑顔を思い出すだけで、彼女の胸は高鳴る。
(…何度でも見たいわ)
どうすれば、あのように笑ってくれるのだろう。本当に僅かな変化でも、それが自分に向けられているものだと思うと、嬉しい。アデリナは無愛想で眉間に皺を寄せてばかりな彼が、自分に笑いかけてくれる、それが特別なように感じられて、親しくなれたように思えた。
彼女は他にはと引き続き思い返していると、不意に営みの最中を思い出して顔が熱くなる。このベッドの上でしか見られないヴァルターの姿が思い浮かんでいき、惚けたような表情と声、逞しい体や私の体に触れる手の大きさ、そして、あの…
(もう、私ったら!何を考えているの!)
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(…本当に、それだけだったのかしら)
下心がなかったとは、言いきれないかもしれない。アデリナはそんなことを考え、再び夜のことを思い出してしまい、首を横に振る。時間と場所のせいだと言い訳して、今夜は考えることはやめて、明日ヴァルターの顔を見て改めてもう一度考えてみよう。そう思い、彼女は上掛けを引っ張りあげた。
(…寂しいわ)
アデリナは隣が広く空いたベッドの上を眺め、自分を包む温もりがないことに寂しさを覚える。それだけでもう、答えはわかるような気がした。
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