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本編
次は学んでください(2)
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ヴァルターが務めている間、アデリナも侯爵夫人としての務めを果たさなければならない。嫡子を産むことは最も大事な務めだが、なにも抱かれて子を産むだけが侯爵夫人としての務めではない。
アデリナは昨日の今日で、ヴランゲル侯爵夫人宛に届いている手紙を確認していた。お茶会への招待状もあり、いくつかには参加しようと仕分ける。こういった貴族の社交の場に参加することも、大切な務めだ。
(務めを立派に果たしてみせるわ…!)
アデリナは意気込みつつ、せっせと手紙をしたためていく。そうしているうちに痛みのことは忘れて、時間は過ぎていた。
「奥様、旦那様がお戻りになられます」
「まあ、もうそんな時間?」
ヴァルターが戻るとの知らせを受け、アデリナは出迎えるためにと着替えに向かった。夫を出迎えるのも、妻としての大切な役目だ。身嗜みを整え、万全の体制でヴァルターを出迎える。彼女は現れたヴァルターの姿に目が点になりそうになったが、何とか堪えた。
「今、戻った」
「おかえりなさいませ、旦那様…あら…?」
堪えたものの、どうしてもヴァルターに違和感を覚えて戸惑った声を漏らしてしまう。その違和感の元は、彼が腕に抱えているものだ。
「…あの、旦那様。その花は、どうなさったのですか?」
ヴァルターは白を基調とした、可憐な花束を抱えていた。この国の軍服に身を包んだ彼には、正直、全く似合っていない。アデリナが問うと、彼は眉間に皺を寄せる。
「…アデリナに」
「えっ…まさかそれを、私に?」
「そうだ」
ぶっきらぼうに言い放ったヴァルターは、眉間の皺を更に深めていく。眉間の皺が緊張からくるものだと知らなければ、嫌々なのかと勘違いしていただろう。その表情のせいか、威圧感たっぷりなヴァルターは彼女の元へと近づくと、花束を差し出した。
アデリナは目を瞬かせながらそれを受け取り、腕に抱える。彼の腕の中では小さく見えていたが、彼女の腕の中ではいっぱいになった。
「私は…良き婚約者ではなかった」
婚約してから昨日まで、二人は一度も会うことなく、手紙をやり取りすることも、このような花束を贈り贈られることもなかった。お互い惹かれあって結ばれた訳ではなく政略結婚なのだからと、アデリナはそのことに関しては仕方がないと気にしていなかった。
だが、どうやらヴァルターは気にしていた、いや、気にしはじめたらしい。
「だが、良き夫になろうと、これからは努める」
「旦那様…」
アデリナは頬が少し熱くなり、胸がじんとしてはにかむ。夫が不器用ながらもこうして心を尽くしてくれることが、彼女はとても嬉しかった。
「ありがとうございます、旦那様。私…とても、嬉しくて…」
「…そうか」
相変わらずぶっきらぼうだが、ヴァルターもほんの少しだけ顔を赤くしているように見えた。アデリナは受け取った花を使用人に預け、早速、寝室に飾るように指示する。ヴァルターはそれを見届けるとすっと腕を差し出して、それを凝視したアデリナは目を瞬かせた。
アデリナは昨日の今日で、ヴランゲル侯爵夫人宛に届いている手紙を確認していた。お茶会への招待状もあり、いくつかには参加しようと仕分ける。こういった貴族の社交の場に参加することも、大切な務めだ。
(務めを立派に果たしてみせるわ…!)
アデリナは意気込みつつ、せっせと手紙をしたためていく。そうしているうちに痛みのことは忘れて、時間は過ぎていた。
「奥様、旦那様がお戻りになられます」
「まあ、もうそんな時間?」
ヴァルターが戻るとの知らせを受け、アデリナは出迎えるためにと着替えに向かった。夫を出迎えるのも、妻としての大切な役目だ。身嗜みを整え、万全の体制でヴァルターを出迎える。彼女は現れたヴァルターの姿に目が点になりそうになったが、何とか堪えた。
「今、戻った」
「おかえりなさいませ、旦那様…あら…?」
堪えたものの、どうしてもヴァルターに違和感を覚えて戸惑った声を漏らしてしまう。その違和感の元は、彼が腕に抱えているものだ。
「…あの、旦那様。その花は、どうなさったのですか?」
ヴァルターは白を基調とした、可憐な花束を抱えていた。この国の軍服に身を包んだ彼には、正直、全く似合っていない。アデリナが問うと、彼は眉間に皺を寄せる。
「…アデリナに」
「えっ…まさかそれを、私に?」
「そうだ」
ぶっきらぼうに言い放ったヴァルターは、眉間の皺を更に深めていく。眉間の皺が緊張からくるものだと知らなければ、嫌々なのかと勘違いしていただろう。その表情のせいか、威圧感たっぷりなヴァルターは彼女の元へと近づくと、花束を差し出した。
アデリナは目を瞬かせながらそれを受け取り、腕に抱える。彼の腕の中では小さく見えていたが、彼女の腕の中ではいっぱいになった。
「私は…良き婚約者ではなかった」
婚約してから昨日まで、二人は一度も会うことなく、手紙をやり取りすることも、このような花束を贈り贈られることもなかった。お互い惹かれあって結ばれた訳ではなく政略結婚なのだからと、アデリナはそのことに関しては仕方がないと気にしていなかった。
だが、どうやらヴァルターは気にしていた、いや、気にしはじめたらしい。
「だが、良き夫になろうと、これからは努める」
「旦那様…」
アデリナは頬が少し熱くなり、胸がじんとしてはにかむ。夫が不器用ながらもこうして心を尽くしてくれることが、彼女はとても嬉しかった。
「ありがとうございます、旦那様。私…とても、嬉しくて…」
「…そうか」
相変わらずぶっきらぼうだが、ヴァルターもほんの少しだけ顔を赤くしているように見えた。アデリナは受け取った花を使用人に預け、早速、寝室に飾るように指示する。ヴァルターはそれを見届けるとすっと腕を差し出して、それを凝視したアデリナは目を瞬かせた。
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