まずは抱いてください

茜菫

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本編

次は学んでください(1)

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 一時はどうなるかと思われたが、アデリナとヴァルターは無事に初夜を共に乗り越え、二人の関係は良好になった。

 勿論、元からヴァルターにはアデリナを軽んじるつもりなどなかっただろう。だが、彼があのまま彼女の寝室に訪れなかったら、又は訪れてもあまりに遅くて彼女が寝入ってしまっていたら、二人の関係には大きな溝ができていたはずだ。その場合でも、遅かれ早かれヴァルターの真実を知って和解はしただろうが、溝は一度できてしまうと埋めるのには時間と労力がかかる。

 それを未然に防げたのだからと、アデリナはあの時の自分の行動が最善であったと思えていたし、後悔はなかった。

(後悔はしていないのだけれど……痛かったわ…)

 アデリナは昨夜の痛みが残っていて、つい、下腹部のあたりをさすってしまった。場所が場所なだけにそんなことをしたところで痛みは和らがないが、気持ちの問題だ。

(初めては痛いと聞いていたけれど…ええ、痛かったわ)

 彼女は読んでいた本のように、初めてなのに最初から最後まで気持ちいいなんて都合のいいことはなかったとため息をついた。最後の方は少し気持ちよさを感じていたが、それまでがあまりにも苦しかった。

(だって…あんなに、大きくて…)

 アデリナはあれがあんなに大きなものだったとは知らなかったが、あの大きさを受けいれたのだから痛いのも頷けると納得していた。

「…今夜は、大丈夫かしら」

 新婚ではあるが、挙式の翌日から休暇をとることなくヴァルターは仕事へ向かった。見送ろうとしたが、彼は無理をさせたから休んでいてくれと気遣ってくれ、アデリナはとても好感を抱いた。

『可能な限り、早く帰ってくる』

 しかし、眉間に皺を寄せてそう言ったヴァルターは、今夜も期待しているに違いないと確信があった。

(旦那様の子供を産むため…とは、言ったけれど…)

 回数を重ねるほうがその可能性は高まるのだから、歓迎すべき展開だろう。けれど、痛いものは痛い。

(…痛みが治まっていますように)

 アデリナは今夜のことを少し憂鬱に感じながら、ただ、祈るしかなかった。
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