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本編
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王妃の呪いを解き初めてから、一ヶ月が過ぎようとしていた。未だに完全には解かれていないものの、ヴィヴィアンヌのがんばりがあって王妃の容体は快方に向かっている。
意識を取り戻し、起き上がれるようになった王妃は治療を受け、適度に食事をはじめた。少しずつ肉づきを取り戻し、真っ白になっていた髪も色を取り戻し始めている。まだほとんどの髪が白く、体は痩せこけてはいるが、いまでは車いすで庭に出て気分転換するほどに回復していた。
「あら……」
王妃ジャンヌは青く澄んで晴れわたり、柔らかく日が照っている空の下、車椅子で中庭に出ていた。ジャンヌの後ろには侍女と護衛の騎士が控えている。
「まったく、困った子ね」
頬に手を当てて首をかしげたジャンヌはあきれたように息を吐く。テーブルを挟んで向かいの椅子にはヴィヴィアンヌの姿があった。
「愚弟ったら、まだヴィヴィちゃんに結婚を申し込んでいないの?」
「いつケッコンするのって聞いたら、まだジキじゃないって言われちゃった。でも、ジキってなんだろう?」
「あら、まあ。まだ踏ん切りがつかないだなんて、情けない男だこと。我が弟ながら、恥ずかしいわ」
ジャンヌが困ったようにため息をついて首を横に振ると、後ろに控えていた侍女が小さく笑い、騎士が苦々しくうなった。それに気づきながらもジャンヌは言葉を続ける。
「ヴィヴィちゃんはもう、オリヴィエと生涯を共にする覚悟ができているのに。ねえ?」
「うん。私、騎士さまとずーっと一緒にいるもの。でも、一緒にいられるなら、ケッコンしなくてもいいよ」
「ああ、ヴィヴィちゃんはなんて健気でかわいいのかしら! ……ねえ?」
ジャンヌは目を半眼にすると、後ろに控える騎士にじろりと目を向ける。当の本人である騎士オリヴィエは目を泳がせ、小さくうなって唇を引き締め黙り込んだ。
「ヴィヴィちゃん。オリヴィエが嫌になったら、いつでも言ってね」
「えっ! 私、騎士さまを嫌になることなんてないよ?」
「まあ、かわいい。私がお嫁さんに貰いたいくらいだわ」
「……王妃陛下。そのようなことはご冗談でもおっしゃらないよう、お願いします」
聞き捨てならなかったようで、オリヴィエは口を挟む。冗談だとはわかっているが、わかっていても気に入らないし、なかなか嫉妬深い王が聞けば面倒なことになるともわかっていた。
「私がこのようなことを言いたくなるのも、どこかの愚かな弟のせいだわ……」
「ぐ……っ」
多少は自覚があるようで、オリヴィエはうなって押し黙った。
(二人とも、どうしたんだろう?)
オリヴィエが押し黙り、ジャンヌはため息をつくが、当のヴィヴィアンヌは二人がなぜそんな様子なのかわからず首をかしげた。
「……まあ、いいわ。そろそろ戻ろうかしら」
侍女が王妃の車いすを引き、その後ろにオリヴィエとヴィヴィアンヌが続く。なにごともなく王妃の部屋に戻り、ヴィヴィアンヌはそこで別れようと笑顔を浮かべた。
「王妃さま、またくるね!」
元気よく挨拶したヴィヴィアンヌにジャンヌはほほ笑む。ジャンヌは扉の前に控えようとしたオリヴィエに目を向けると、静かに声をかけた。
「オリヴィエも今日は下がっていいわよ」
「しかし」
「今日はベクレル卿がいるわ。ヴィヴィちゃんと一緒に下がりなさい」
オリヴィエは少し躊躇したものの、王妃の命に従った。ヴィヴィアンヌは目をまばたかせたが、ひらひらと手を振るジャンヌに手を振り返してオリヴィエとともに部屋から離れる。
「王妃さま、急にどうしたのかな?」
「あー……なんでもないよ」
「そう?」
別れ際、ジャンヌはオリヴィエにちゃんと話をしなさいと目で語っていた。
(……踏ん切り、か。ジャンヌの言う通りだけれど……)
オリヴィエも結婚についてはそろそろと考えていた。ヴィヴィアンヌを森から連れ出したときから彼女を手放すつもりなどなく、生涯を共にするつもりだった。
だが、このままヴィヴィアンヌにほかの選択肢を与えないまま結婚して本当に良いのかオリヴィエは迷っていた。そうは思いつつも、ほかの男となど考えると腸が煮えくり返りそうになり、与える気など一切ないのだが。
「騎士さま、今日は早く一緒に帰れるね!」
「……そうだな」
二人は王城を出て賑わう王都を並んで歩く。王妃が目覚めてから町はより活気づき、多くのものが笑顔だ。
(騎士さま、ずっとなにか考えている……)
そんな街並みにほとんど目もくれずに、オリヴィエは無言で歩いている。ヴィヴィアンヌは少し不安になり、隣を歩くオリヴィエの裾を引いた。
「……ん、ヴィヴィ?」
「騎士さま、ごめんね」
「え?」
「ケッコンのことで、お姉さんと嫌な感じになっちゃったよね。私、無理にしなくてもいいよ?」
オリヴィエは目を見開いてヴィヴィアンヌの両肩をつかんだ。驚いたヴィヴィアンヌはびくりと体を震わせ、オリヴィエは慌てて力を弛める。
「っ、ごめん。ヴィヴィはなにも悪くないんだ」
「でも」
「あれは、まあ……姉弟のよくあるじゃれ合いみたいなものだから」
ジャンヌは昔から異父弟のオリヴィエに優しかったが、彼をからかうことも多かった。今回もその延長線のようなもので、おたがい本気で言い合った訳ではない。
「……ただ、僕が情けないから」
「騎士さまは、とってもかっこいいよ!」
落ち込むオリヴィエにヴィヴィアンヌは笑顔で声をかけた。その言葉は慰めなどではなく、ヴィヴィアンヌの本心だ。
「騎士さまはお姉さんを助けるために、命をかけて、怖い森でも一人で向かったんだし」
だれもが望み薄で危険だと諦めていたが、オリヴィエだけは一縷の望みをかけ、勇気を持って魔女の森に踏み込んだ。
「……それに、私のこと、連れ出してくれたもの!」
オリヴィエのその行動により、王妃は目覚め、ヴィヴィアンヌがここにいる。オリヴィエの行動がなければいまも王妃は眠ったままだったろうし、ヴィヴィアンヌも一人森の中だろう。
「だから、私は騎士さまが、オリヴィエが一番格好よくて、大好きだよ!」
オリヴィエのその勇気が、世界を変えた。ヴィヴィアンヌはそう信じ、だれよりもオリヴィエのことが格好よくて、大好きだ。
「ヴィヴィ……!」
オリヴィエが抱きしめると、ヴィヴィアンヌもしっかりと抱きかえす。周りの目など一切気にせず、二人は二人だけの世界にひたって抱き合った。
(迷うことなんて、なにもないじゃないか!)
ヴィヴィアンヌはオリヴィエと一緒にいたい、その想いで森の外へと飛び出したのだ。そこでようやくオリヴィエは覚悟を決め、ヴィヴィアンヌを抱きしめたまま大きな声で告白する。
「……ヴィヴィアンヌ、僕と、結婚してくれ!」
男女が抱き合いながら、男が一世一代の大告白。道を歩く人々は足を止め、息をのんで二人を見守っていた。
「うん! 私、オリヴィエとケッコンする!」
驚くほどに静かになった街中で、ヴィヴィアンヌは腕の中からひょこりと顔を出し、満面の笑みで答えた。人々は一斉に沸き立ち、拍手と口笛、お祝いの歓声が上がる。皆、二人がだれなのかまったく知らないが、ただめでたいとおおよろこびだ。
「あー……どうも……ありがとう……」
「へへっ」
そこでようやくリヴィエもここが街中だったことを思い出し、顔を真っ赤にした。ジャンヌにつつかれて勢いでの大告白となってしまったが、ときには勢いも必要なのだろう。
人々に祝われ、幸せで甘い雰囲気の中、ヴィヴィアンヌは上目でオリヴィエを見上げて声をかける。
「ねえ、騎士さま?」
「……うん? どうしたんだ、ヴィヴィ」
「……私、騎士さまのあれが気になるな」
甘い誘惑にオリヴィエは大きくうなずき、ヴィヴィアンヌを抱きかかえた。そこで再び歓声が上がり、オリヴィエはヴィヴィアンヌを抱き上げたまま街を駆け、人々に冷やかされ、祝われながら家に駆け込み。
二人とも翌朝まで出てこなかったそうだ。
意識を取り戻し、起き上がれるようになった王妃は治療を受け、適度に食事をはじめた。少しずつ肉づきを取り戻し、真っ白になっていた髪も色を取り戻し始めている。まだほとんどの髪が白く、体は痩せこけてはいるが、いまでは車いすで庭に出て気分転換するほどに回復していた。
「あら……」
王妃ジャンヌは青く澄んで晴れわたり、柔らかく日が照っている空の下、車椅子で中庭に出ていた。ジャンヌの後ろには侍女と護衛の騎士が控えている。
「まったく、困った子ね」
頬に手を当てて首をかしげたジャンヌはあきれたように息を吐く。テーブルを挟んで向かいの椅子にはヴィヴィアンヌの姿があった。
「愚弟ったら、まだヴィヴィちゃんに結婚を申し込んでいないの?」
「いつケッコンするのって聞いたら、まだジキじゃないって言われちゃった。でも、ジキってなんだろう?」
「あら、まあ。まだ踏ん切りがつかないだなんて、情けない男だこと。我が弟ながら、恥ずかしいわ」
ジャンヌが困ったようにため息をついて首を横に振ると、後ろに控えていた侍女が小さく笑い、騎士が苦々しくうなった。それに気づきながらもジャンヌは言葉を続ける。
「ヴィヴィちゃんはもう、オリヴィエと生涯を共にする覚悟ができているのに。ねえ?」
「うん。私、騎士さまとずーっと一緒にいるもの。でも、一緒にいられるなら、ケッコンしなくてもいいよ」
「ああ、ヴィヴィちゃんはなんて健気でかわいいのかしら! ……ねえ?」
ジャンヌは目を半眼にすると、後ろに控える騎士にじろりと目を向ける。当の本人である騎士オリヴィエは目を泳がせ、小さくうなって唇を引き締め黙り込んだ。
「ヴィヴィちゃん。オリヴィエが嫌になったら、いつでも言ってね」
「えっ! 私、騎士さまを嫌になることなんてないよ?」
「まあ、かわいい。私がお嫁さんに貰いたいくらいだわ」
「……王妃陛下。そのようなことはご冗談でもおっしゃらないよう、お願いします」
聞き捨てならなかったようで、オリヴィエは口を挟む。冗談だとはわかっているが、わかっていても気に入らないし、なかなか嫉妬深い王が聞けば面倒なことになるともわかっていた。
「私がこのようなことを言いたくなるのも、どこかの愚かな弟のせいだわ……」
「ぐ……っ」
多少は自覚があるようで、オリヴィエはうなって押し黙った。
(二人とも、どうしたんだろう?)
オリヴィエが押し黙り、ジャンヌはため息をつくが、当のヴィヴィアンヌは二人がなぜそんな様子なのかわからず首をかしげた。
「……まあ、いいわ。そろそろ戻ろうかしら」
侍女が王妃の車いすを引き、その後ろにオリヴィエとヴィヴィアンヌが続く。なにごともなく王妃の部屋に戻り、ヴィヴィアンヌはそこで別れようと笑顔を浮かべた。
「王妃さま、またくるね!」
元気よく挨拶したヴィヴィアンヌにジャンヌはほほ笑む。ジャンヌは扉の前に控えようとしたオリヴィエに目を向けると、静かに声をかけた。
「オリヴィエも今日は下がっていいわよ」
「しかし」
「今日はベクレル卿がいるわ。ヴィヴィちゃんと一緒に下がりなさい」
オリヴィエは少し躊躇したものの、王妃の命に従った。ヴィヴィアンヌは目をまばたかせたが、ひらひらと手を振るジャンヌに手を振り返してオリヴィエとともに部屋から離れる。
「王妃さま、急にどうしたのかな?」
「あー……なんでもないよ」
「そう?」
別れ際、ジャンヌはオリヴィエにちゃんと話をしなさいと目で語っていた。
(……踏ん切り、か。ジャンヌの言う通りだけれど……)
オリヴィエも結婚についてはそろそろと考えていた。ヴィヴィアンヌを森から連れ出したときから彼女を手放すつもりなどなく、生涯を共にするつもりだった。
だが、このままヴィヴィアンヌにほかの選択肢を与えないまま結婚して本当に良いのかオリヴィエは迷っていた。そうは思いつつも、ほかの男となど考えると腸が煮えくり返りそうになり、与える気など一切ないのだが。
「騎士さま、今日は早く一緒に帰れるね!」
「……そうだな」
二人は王城を出て賑わう王都を並んで歩く。王妃が目覚めてから町はより活気づき、多くのものが笑顔だ。
(騎士さま、ずっとなにか考えている……)
そんな街並みにほとんど目もくれずに、オリヴィエは無言で歩いている。ヴィヴィアンヌは少し不安になり、隣を歩くオリヴィエの裾を引いた。
「……ん、ヴィヴィ?」
「騎士さま、ごめんね」
「え?」
「ケッコンのことで、お姉さんと嫌な感じになっちゃったよね。私、無理にしなくてもいいよ?」
オリヴィエは目を見開いてヴィヴィアンヌの両肩をつかんだ。驚いたヴィヴィアンヌはびくりと体を震わせ、オリヴィエは慌てて力を弛める。
「っ、ごめん。ヴィヴィはなにも悪くないんだ」
「でも」
「あれは、まあ……姉弟のよくあるじゃれ合いみたいなものだから」
ジャンヌは昔から異父弟のオリヴィエに優しかったが、彼をからかうことも多かった。今回もその延長線のようなもので、おたがい本気で言い合った訳ではない。
「……ただ、僕が情けないから」
「騎士さまは、とってもかっこいいよ!」
落ち込むオリヴィエにヴィヴィアンヌは笑顔で声をかけた。その言葉は慰めなどではなく、ヴィヴィアンヌの本心だ。
「騎士さまはお姉さんを助けるために、命をかけて、怖い森でも一人で向かったんだし」
だれもが望み薄で危険だと諦めていたが、オリヴィエだけは一縷の望みをかけ、勇気を持って魔女の森に踏み込んだ。
「……それに、私のこと、連れ出してくれたもの!」
オリヴィエのその行動により、王妃は目覚め、ヴィヴィアンヌがここにいる。オリヴィエの行動がなければいまも王妃は眠ったままだったろうし、ヴィヴィアンヌも一人森の中だろう。
「だから、私は騎士さまが、オリヴィエが一番格好よくて、大好きだよ!」
オリヴィエのその勇気が、世界を変えた。ヴィヴィアンヌはそう信じ、だれよりもオリヴィエのことが格好よくて、大好きだ。
「ヴィヴィ……!」
オリヴィエが抱きしめると、ヴィヴィアンヌもしっかりと抱きかえす。周りの目など一切気にせず、二人は二人だけの世界にひたって抱き合った。
(迷うことなんて、なにもないじゃないか!)
ヴィヴィアンヌはオリヴィエと一緒にいたい、その想いで森の外へと飛び出したのだ。そこでようやくオリヴィエは覚悟を決め、ヴィヴィアンヌを抱きしめたまま大きな声で告白する。
「……ヴィヴィアンヌ、僕と、結婚してくれ!」
男女が抱き合いながら、男が一世一代の大告白。道を歩く人々は足を止め、息をのんで二人を見守っていた。
「うん! 私、オリヴィエとケッコンする!」
驚くほどに静かになった街中で、ヴィヴィアンヌは腕の中からひょこりと顔を出し、満面の笑みで答えた。人々は一斉に沸き立ち、拍手と口笛、お祝いの歓声が上がる。皆、二人がだれなのかまったく知らないが、ただめでたいとおおよろこびだ。
「あー……どうも……ありがとう……」
「へへっ」
そこでようやくリヴィエもここが街中だったことを思い出し、顔を真っ赤にした。ジャンヌにつつかれて勢いでの大告白となってしまったが、ときには勢いも必要なのだろう。
人々に祝われ、幸せで甘い雰囲気の中、ヴィヴィアンヌは上目でオリヴィエを見上げて声をかける。
「ねえ、騎士さま?」
「……うん? どうしたんだ、ヴィヴィ」
「……私、騎士さまのあれが気になるな」
甘い誘惑にオリヴィエは大きくうなずき、ヴィヴィアンヌを抱きかかえた。そこで再び歓声が上がり、オリヴィエはヴィヴィアンヌを抱き上げたまま街を駆け、人々に冷やかされ、祝われながら家に駆け込み。
二人とも翌朝まで出てこなかったそうだ。
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