44 / 52
本編
44
しおりを挟む
ヴィヴィアンヌに用意された食事は、果物ばかりだ。元々森の中での食生活にかなり偏りがあったヴィヴィアンヌはすぐにお腹を下すため、食べられるものが極端に少ない。
「騎士さま、これ!」
「林檎だな」
ヴィヴィアンヌは用意された果物たちの中から林檎を選ぶ。オリヴィエは小さなナイフで林檎を切り、芯を抜いて食べやすくすると、一切れつまんで差し出した。それをぱくりとひとくちで食べたヴィヴィアンヌは両頬を押さえて幸せそうに笑う。
「騎士さま、林檎をもっとちょうだい!」
「はい、どうぞ」
オリヴィエは笑いながらもう一切れつまみ、差し出す。それを続け、あっという間に林檎はすべてヴィヴィアンヌの胃におさめられた。まだ少し物足りないヴィヴィアンヌは次を選ぼうと果物に目を向ける。
「騎士さま、その黄色いのはなに?」
「これは……バナナだな」
「バナナ? 初めて見た。……騎士さま、私、バナナが食べたいな!」
「はいはい」
オリヴィエが皮を剥いてバナナを差し出すと、ヴィヴィアンヌは果実に顔を近づけてすんすんと匂いを嗅いだ。甘そうな香りにつられ、まずは先端をぺろりとなめる。それを間近で眺めていたオリヴィエはごくりと生唾を飲み込んだ。
(…………いやいや、いやいや)
オリヴィエの脳内によこしまな妄想が広がった。首を横に振ってそれを霧散させ、無理やり笑顔を作ってヴィヴィアンヌに優しく声をかける。
「……ヴィヴィ、これはなめるものじゃないよ」
「へへ、先にどんな味なのかなって。ちょっとだけ、気になっちゃったの」
「……そっか。でもこれは、そのまま咥えて……」
自分で自分の言葉が恥ずかしくなったオリヴィエは途中で言葉を切ったが、ヴィヴィアンヌはその言葉のとおりに先端を咥えた。その瞬間を目撃したオリヴィエは、慌てて片手で顔を覆う。
(……これは……いや、うん。…………結構、いいな……)
自分に正直になったオリヴィエはバナナを自分の大事なものにすりかえ、それをなめたり咥えたりするヴィヴィアンヌを妄想する。その妄想に彼の大事なものが少し反応していたが。
「……どうしたの、騎士さま?」
「……あっ、いや……なんでもない」
ヴィヴィアンヌの不思議そうな声に現実に引き戻され、かじりとられて先がなくなったバナナを見たオリヴィエはひゅっと熱が収まる。
(……いや、よくはないな……)
そのまま食べ進められてどんどん短くなっていくバナナとよろこんでいるヴィヴィアンヌを交互に眺めながら、オリヴィエはなんとも言いがたい気分になった。
「お腹いっぱい」
林檎を一つ、バナナを一本食べ終わったヴィヴィアンヌは満足そうにお腹を擦った。満腹になったところで元の欲求を思い出したらしく、ヴィヴィアンヌは少し恥ずかしそうにうつむきながらさきほどの続きをねだる。
「……私、騎士さまの大事なものが気になるな」
それはヴィヴィアンヌの常套の誘い文句となりつつあった。オリヴィエもさきほどの口づけやヴィヴィアンヌの食事姿を眺めてそれなりの気分になっているが、彼女が寝込んでいたことを考えると躊躇われる。
「…………ヴィヴィ、それより、先にお湯で汗を流したほうがいいんじゃないかな?」
「あっ、うん! 水浴び……じゃない、お湯浴び? したい!」
(よしっ)
うまく話をそらしたオリヴィエはほっと胸をなでおろした。ヴィヴィアンヌは入浴に目がない。森の中で暮らしている間は川で水を浴びるだけだったが、湯で身体を温めて洗うことを覚え、それをとても好んでいるようだ。
「じゃあ、お湯を用意してもらってくるよ」
「うん。……あっ」
それを聞いてはっとしたヴィヴィアンヌは数日前に城内で経験したことを思い出し、唇をとがらせた。ヴィヴィアンヌにとって記憶に新しい、もっとも恐ろしい経験だ。
「……私、知らない人に洗われるのは、もういやだよ……」
「え? ……ああ、大丈夫だよ、ヴィヴィ。ここではそんなことしないから」
王族や上級貴族は入浴時の世話を使用人らに任せる。オリヴィエは先の反乱での功労として男爵位を賜り、王都に小さな屋敷を構えているものの、元は平民だ。雇っているメイドもバルテルミ侯爵、エマニュエルのことだが、一時期彼の元に滞在していた頃に世話になった信頼の置ける者一人しかいない。
「よかったぁ……」
オリヴィエの言葉に安心したヴィヴィアンヌは、ほっと胸をなで下ろした。しかしすぐさま別のことを思いついたようで、ヴィヴィアンヌは笑顔で言葉を続ける。
「じゃあ、騎士さま、一緒にお湯浴びしようよ!」
「えっ!?」
残っていた林檎を齧っていたオリヴィエはヴィヴィアンヌの提案に吹き出しそうになった。なんとか堪えると、どう応えるべきかと悩んで目をさまよわせる。
「……っ、いや、それは……まずいんじゃ……」
「……だめなの?」
ヴィヴィアンヌは少し悲しげな表情で上目遣いに問う。オリヴィエはヴィヴィアンヌのこの表情に、どうしても勝てないのだ。
「…………だめじゃない」
「じゃあ騎士さま、一緒に入ろうね!」
残念ながら、ヴィヴィアンヌの方が一枚上手だったようだ。ヴィヴィアンヌも、なかなか強かになったものだ。
この屋敷の唯一のメイド、マリーは初老の女性だ。マリーはオリヴィエがヴィヴィアンヌと一緒に入浴すると聞いて常と変わらずほほ笑んでうなずいただけだったが、内心では仲がよろしいことでとほほ笑ましく思っていた。マリーは素早く準備を終え、しばらく部屋で控えていると下がる。
「ふふん。お湯浴び、気持ちいいね」
「これはお湯浴びじゃなくて……入浴、かな」
「ニュウヨク? うーん。よしっ、覚えたよ」
浴室にどんと鎮座する木製の浴槽、その中でヴィヴィアンヌは鼻歌を歌いながら、オリヴィエの胸に背を預けて湯に浸かっていた。オリヴィエは少し落ち着かなかったが、楽しそうなヴィヴィアンヌの邪魔はしないようにと色々なことを堪える。そんなオリヴィエの努力を知ってか知らないでか、ヴィヴィアンヌはとても楽しそうだ。
「……そうだ、ヴィヴィ。マリーに君のことを少し話してもいいかな? これから世話になるだろうし」
気を紛らわすためも目的もあり、オリヴィエはマリーのことを話した。今後ヴィヴィアンヌがこの屋敷で暮らしていくとなると、マリーと接する機会は多くなる。人の社会から隔離されて生きてきたヴィヴィアンヌにはわからないことが多く、故に接する間にマリーが戸惑うこともあるだろう。だが事前に説明しておけば余計な混乱を避けることができるはずだ。
「話? なにを話すの?」
「森の中で一人で暮らしていたこととか」
「あっ、そっか。うん、わかった」
ヴィヴィアンヌも森の中で一人暮らしていたことで知識は偏り、豊富ではない自覚があった。自覚できたのは、オリヴィエの存在があったからだ。
「ありがとう。マリーにはまだ、僕が結婚を考えている人だとしか紹介していないんだ」
「ケッコン……」
ヴィヴィアンヌはその言葉に思わずにやけてしまう。オリヴィエと恋人となり、森を出てからいくつか問題が発生しつつも無事に王都までたどり着き、王妃の呪いも展望が見えた。これから二人はずっと一緒、いずれは結婚して夫婦となるのだ。
「騎士さま、全部、うまくいっているよね?」
「……そうだな、ヴィヴィのおかげだよ」
オリヴィエが頭をなでると、ヴィヴィアンヌはくるりと体を反転させて胸に寄り添った。ヴィヴィアンヌはオリヴィエを見上げながらうれしそうに笑い、目を閉じて唇を差し出す。
「ヴィヴィ……」
オリヴィエがその唇に口づけると、ヴィヴィアンヌはもっとせがんだ。ヴィヴィアンヌは何度かそれを繰り返しているうちにあることに気づいたようで、目を開いていたずらっぽく笑う。
「騎士さま、大事なものちょっと硬くなった?」
「……ヴィヴィ、わざとだろう?」
「へへっ」
苦笑いしつつも、オリヴィエも満更ではない。ヴィヴィアンヌの背に腕を回して抱き寄せると、舌を絡めて口づけた。おたがいに求め合い、深く口づけ合う。唇が離れ、いつもよりも惚けているヴィヴィアンヌは物欲しさに自身の下半身がうずくのを感じ、甘い声でねだった。
「……騎士さま、オリヴィエ……」
「……その前に、体、洗おうか」
オリヴィエはヴィヴィアンヌの求める視線に気づいていたが、それを受け流す。ヴィヴィアンヌは少し不満そうに唇を尖らせたが、うなずいて従った。
「騎士さま、これ!」
「林檎だな」
ヴィヴィアンヌは用意された果物たちの中から林檎を選ぶ。オリヴィエは小さなナイフで林檎を切り、芯を抜いて食べやすくすると、一切れつまんで差し出した。それをぱくりとひとくちで食べたヴィヴィアンヌは両頬を押さえて幸せそうに笑う。
「騎士さま、林檎をもっとちょうだい!」
「はい、どうぞ」
オリヴィエは笑いながらもう一切れつまみ、差し出す。それを続け、あっという間に林檎はすべてヴィヴィアンヌの胃におさめられた。まだ少し物足りないヴィヴィアンヌは次を選ぼうと果物に目を向ける。
「騎士さま、その黄色いのはなに?」
「これは……バナナだな」
「バナナ? 初めて見た。……騎士さま、私、バナナが食べたいな!」
「はいはい」
オリヴィエが皮を剥いてバナナを差し出すと、ヴィヴィアンヌは果実に顔を近づけてすんすんと匂いを嗅いだ。甘そうな香りにつられ、まずは先端をぺろりとなめる。それを間近で眺めていたオリヴィエはごくりと生唾を飲み込んだ。
(…………いやいや、いやいや)
オリヴィエの脳内によこしまな妄想が広がった。首を横に振ってそれを霧散させ、無理やり笑顔を作ってヴィヴィアンヌに優しく声をかける。
「……ヴィヴィ、これはなめるものじゃないよ」
「へへ、先にどんな味なのかなって。ちょっとだけ、気になっちゃったの」
「……そっか。でもこれは、そのまま咥えて……」
自分で自分の言葉が恥ずかしくなったオリヴィエは途中で言葉を切ったが、ヴィヴィアンヌはその言葉のとおりに先端を咥えた。その瞬間を目撃したオリヴィエは、慌てて片手で顔を覆う。
(……これは……いや、うん。…………結構、いいな……)
自分に正直になったオリヴィエはバナナを自分の大事なものにすりかえ、それをなめたり咥えたりするヴィヴィアンヌを妄想する。その妄想に彼の大事なものが少し反応していたが。
「……どうしたの、騎士さま?」
「……あっ、いや……なんでもない」
ヴィヴィアンヌの不思議そうな声に現実に引き戻され、かじりとられて先がなくなったバナナを見たオリヴィエはひゅっと熱が収まる。
(……いや、よくはないな……)
そのまま食べ進められてどんどん短くなっていくバナナとよろこんでいるヴィヴィアンヌを交互に眺めながら、オリヴィエはなんとも言いがたい気分になった。
「お腹いっぱい」
林檎を一つ、バナナを一本食べ終わったヴィヴィアンヌは満足そうにお腹を擦った。満腹になったところで元の欲求を思い出したらしく、ヴィヴィアンヌは少し恥ずかしそうにうつむきながらさきほどの続きをねだる。
「……私、騎士さまの大事なものが気になるな」
それはヴィヴィアンヌの常套の誘い文句となりつつあった。オリヴィエもさきほどの口づけやヴィヴィアンヌの食事姿を眺めてそれなりの気分になっているが、彼女が寝込んでいたことを考えると躊躇われる。
「…………ヴィヴィ、それより、先にお湯で汗を流したほうがいいんじゃないかな?」
「あっ、うん! 水浴び……じゃない、お湯浴び? したい!」
(よしっ)
うまく話をそらしたオリヴィエはほっと胸をなでおろした。ヴィヴィアンヌは入浴に目がない。森の中で暮らしている間は川で水を浴びるだけだったが、湯で身体を温めて洗うことを覚え、それをとても好んでいるようだ。
「じゃあ、お湯を用意してもらってくるよ」
「うん。……あっ」
それを聞いてはっとしたヴィヴィアンヌは数日前に城内で経験したことを思い出し、唇をとがらせた。ヴィヴィアンヌにとって記憶に新しい、もっとも恐ろしい経験だ。
「……私、知らない人に洗われるのは、もういやだよ……」
「え? ……ああ、大丈夫だよ、ヴィヴィ。ここではそんなことしないから」
王族や上級貴族は入浴時の世話を使用人らに任せる。オリヴィエは先の反乱での功労として男爵位を賜り、王都に小さな屋敷を構えているものの、元は平民だ。雇っているメイドもバルテルミ侯爵、エマニュエルのことだが、一時期彼の元に滞在していた頃に世話になった信頼の置ける者一人しかいない。
「よかったぁ……」
オリヴィエの言葉に安心したヴィヴィアンヌは、ほっと胸をなで下ろした。しかしすぐさま別のことを思いついたようで、ヴィヴィアンヌは笑顔で言葉を続ける。
「じゃあ、騎士さま、一緒にお湯浴びしようよ!」
「えっ!?」
残っていた林檎を齧っていたオリヴィエはヴィヴィアンヌの提案に吹き出しそうになった。なんとか堪えると、どう応えるべきかと悩んで目をさまよわせる。
「……っ、いや、それは……まずいんじゃ……」
「……だめなの?」
ヴィヴィアンヌは少し悲しげな表情で上目遣いに問う。オリヴィエはヴィヴィアンヌのこの表情に、どうしても勝てないのだ。
「…………だめじゃない」
「じゃあ騎士さま、一緒に入ろうね!」
残念ながら、ヴィヴィアンヌの方が一枚上手だったようだ。ヴィヴィアンヌも、なかなか強かになったものだ。
この屋敷の唯一のメイド、マリーは初老の女性だ。マリーはオリヴィエがヴィヴィアンヌと一緒に入浴すると聞いて常と変わらずほほ笑んでうなずいただけだったが、内心では仲がよろしいことでとほほ笑ましく思っていた。マリーは素早く準備を終え、しばらく部屋で控えていると下がる。
「ふふん。お湯浴び、気持ちいいね」
「これはお湯浴びじゃなくて……入浴、かな」
「ニュウヨク? うーん。よしっ、覚えたよ」
浴室にどんと鎮座する木製の浴槽、その中でヴィヴィアンヌは鼻歌を歌いながら、オリヴィエの胸に背を預けて湯に浸かっていた。オリヴィエは少し落ち着かなかったが、楽しそうなヴィヴィアンヌの邪魔はしないようにと色々なことを堪える。そんなオリヴィエの努力を知ってか知らないでか、ヴィヴィアンヌはとても楽しそうだ。
「……そうだ、ヴィヴィ。マリーに君のことを少し話してもいいかな? これから世話になるだろうし」
気を紛らわすためも目的もあり、オリヴィエはマリーのことを話した。今後ヴィヴィアンヌがこの屋敷で暮らしていくとなると、マリーと接する機会は多くなる。人の社会から隔離されて生きてきたヴィヴィアンヌにはわからないことが多く、故に接する間にマリーが戸惑うこともあるだろう。だが事前に説明しておけば余計な混乱を避けることができるはずだ。
「話? なにを話すの?」
「森の中で一人で暮らしていたこととか」
「あっ、そっか。うん、わかった」
ヴィヴィアンヌも森の中で一人暮らしていたことで知識は偏り、豊富ではない自覚があった。自覚できたのは、オリヴィエの存在があったからだ。
「ありがとう。マリーにはまだ、僕が結婚を考えている人だとしか紹介していないんだ」
「ケッコン……」
ヴィヴィアンヌはその言葉に思わずにやけてしまう。オリヴィエと恋人となり、森を出てからいくつか問題が発生しつつも無事に王都までたどり着き、王妃の呪いも展望が見えた。これから二人はずっと一緒、いずれは結婚して夫婦となるのだ。
「騎士さま、全部、うまくいっているよね?」
「……そうだな、ヴィヴィのおかげだよ」
オリヴィエが頭をなでると、ヴィヴィアンヌはくるりと体を反転させて胸に寄り添った。ヴィヴィアンヌはオリヴィエを見上げながらうれしそうに笑い、目を閉じて唇を差し出す。
「ヴィヴィ……」
オリヴィエがその唇に口づけると、ヴィヴィアンヌはもっとせがんだ。ヴィヴィアンヌは何度かそれを繰り返しているうちにあることに気づいたようで、目を開いていたずらっぽく笑う。
「騎士さま、大事なものちょっと硬くなった?」
「……ヴィヴィ、わざとだろう?」
「へへっ」
苦笑いしつつも、オリヴィエも満更ではない。ヴィヴィアンヌの背に腕を回して抱き寄せると、舌を絡めて口づけた。おたがいに求め合い、深く口づけ合う。唇が離れ、いつもよりも惚けているヴィヴィアンヌは物欲しさに自身の下半身がうずくのを感じ、甘い声でねだった。
「……騎士さま、オリヴィエ……」
「……その前に、体、洗おうか」
オリヴィエはヴィヴィアンヌの求める視線に気づいていたが、それを受け流す。ヴィヴィアンヌは少し不満そうに唇を尖らせたが、うなずいて従った。
10
お気に入りに追加
964
あなたにおすすめの小説
極悪家庭教師の溺愛レッスン~悪魔な彼はお隣さん~
恵喜 どうこ
恋愛
「高校合格のお礼をくれない?」
そう言っておねだりしてきたのはお隣の家庭教師のお兄ちゃん。
私よりも10歳上のお兄ちゃんはずっと憧れの人だったんだけど、好きだという告白もないままに男女の関係に発展してしまった私は苦しくて、どうしようもなくて、彼の一挙手一投足にただ振り回されてしまっていた。
葵は私のことを本当はどう思ってるの?
私は葵のことをどう思ってるの?
意地悪なカテキョに翻弄されっぱなし。
こうなったら確かめなくちゃ!
葵の気持ちも、自分の気持ちも!
だけど甘い誘惑が多すぎて――
ちょっぴりスパイスをきかせた大人の男と女子高生のラブストーリーです。
不器用騎士様は記憶喪失の婚約者を逃がさない
かべうち右近
恋愛
「あなたみたいな人と、婚約したくなかった……!」
婚約者ヴィルヘルミーナにそう言われたルドガー。しかし、ツンツンなヴィルヘルミーナはそれからすぐに事故で記憶を失い、それまでとは打って変わって素直な可愛らしい令嬢に生まれ変わっていたーー。
もともとルドガーとヴィルヘルミーナは、顔を合わせればたびたび口喧嘩をする幼馴染同士だった。
ずっと好きな女などいないと思い込んでいたルドガーは、女性に人気で付き合いも広い。そんな彼は、悪友に指摘されて、ヴィルヘルミーナが好きなのだとやっと気付いた。
想いに気づいたとたんに、何の幸運か、親の意向によりとんとん拍子にヴィルヘルミーナとルドガーの婚約がまとまったものの、女たらしのルドガーに対してヴィルヘルミーナはツンツンだったのだ。
記憶を失ったヴィルヘルミーナには悪いが、今度こそ彼女を口説き落して円満結婚を目指し、ルドガーは彼女にアプローチを始める。しかし、元女誑しの不器用騎士は息を吸うようにステップをすっ飛ばしたアプローチばかりしてしまい…?
不器用騎士×元ツンデレ・今素直令嬢のラブコメです。
12/11追記
書籍版の配信に伴い、WEB連載版は取り下げております。
たくさんお読みいただきありがとうございました!
断る――――前にもそう言ったはずだ
鈴宮(すずみや)
恋愛
「寝室を分けませんか?」
結婚して三年。王太子エルネストと妃モニカの間にはまだ子供が居ない。
周囲からは『そろそろ側妃を』という声が上がっているものの、彼はモニカと寝室を分けることを拒んでいる。
けれど、エルネストはいつだって、モニカにだけ冷たかった。
他の人々に向けられる優しい言葉、笑顔が彼女に向けられることない。
(わたくし以外の女性が妃ならば、エルネスト様はもっと幸せだろうに……)
そんな時、侍女のコゼットが『エルネストから想いを寄せられている』ことをモニカに打ち明ける。
ようやく側妃を娶る気になったのか――――エルネストがコゼットと過ごせるよう、私室で休むことにしたモニカ。
そんな彼女の元に、護衛騎士であるヴィクトルがやってきて――――?
月の後宮~孤高の皇帝の寵姫~
真木
恋愛
新皇帝セルヴィウスが即位の日に閨に引きずり込んだのは、まだ十三歳の皇妹セシルだった。大好きだった兄皇帝の突然の行為に混乱し、心を閉ざすセシル。それから十年後、セシルの心が見えないまま、セルヴィウスはある決断をすることになるのだが……。
どうやら夫に疎まれているようなので、私はいなくなることにします
文野多咲
恋愛
秘めやかな空気が、寝台を囲う帳の内側に立ち込めていた。
夫であるゲルハルトがエレーヌを見下ろしている。
エレーヌの髪は乱れ、目はうるみ、体の奥は甘い熱で満ちている。エレーヌもまた、想いを込めて夫を見つめた。
「ゲルハルトさま、愛しています」
ゲルハルトはエレーヌをさも大切そうに撫でる。その手つきとは裏腹に、ぞっとするようなことを囁いてきた。
「エレーヌ、俺はあなたが憎い」
エレーヌは凍り付いた。

【完結】新皇帝の後宮に献上された姫は、皇帝の寵愛を望まない
ユユ
恋愛
周辺諸国19国を統べるエテルネル帝国の皇帝が崩御し、若い皇子が即位した2年前から従属国が次々と姫や公女、もしくは美女を献上している。
既に帝国の令嬢数人と従属国から18人が後宮で住んでいる。
未だ献上していなかったプロプル王国では、王女である私が仕方なく献上されることになった。
後宮の余った人気のない部屋に押し込まれ、選択を迫られた。
欲の無い王女と、女達の醜い争いに辟易した新皇帝の噛み合わない新生活が始まった。
* 作り話です
* そんなに長くしない予定です
片想いの相手と二人、深夜、狭い部屋。何も起きないはずはなく
おりの まるる
恋愛
ユディットは片想いしている室長が、再婚すると言う噂を聞いて、情緒不安定な日々を過ごしていた。
そんなある日、怖い噂話が尽きない古い教会を改装して使っている書庫で、仕事を終えるとすっかり夜になっていた。
夕方からの大雨で研究棟へ帰れなくなり、途方に暮れていた。
そんな彼女を室長が迎えに来てくれたのだが、トラブルに見舞われ、二人っきりで夜を過ごすことになる。
全4話です。
嫌われ女騎士は塩対応だった堅物騎士様と蜜愛中! 愚者の花道
Canaan
恋愛
旧題:愚者の花道
周囲からの風当たりは強いが、逞しく生きている平民あがりの女騎士ヘザー。ある時、とんでもない痴態を高慢エリート男ヒューイに目撃されてしまう。しかも、新しい配属先には自分の上官としてそのヒューイがいた……。
女子力低い残念ヒロインが、超感じ悪い堅物男の調子をだんだん狂わせていくお話。
※シリーズ「愚者たちの物語 その2」※
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる