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本編
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再びヴィヴィアンヌが目を覚ますと、部屋は明かりがなく薄暗かったが、カーテンの向こうは太陽の光で照らされて明るくなっていた。ベッドに寝転がっていたヴィヴィアンヌはむくりと上体を起き上がらせ、辺りを見回す。
(……あれ?)
ヴィヴィアンヌの目に映ったのは意識を失う前に見た王妃の部屋ではなく、見知らぬ部屋だ。ヴィヴィアンヌが住んでいた小屋よりは遥かに上等だが、城に比べればそれほどでもない。
「……あ、騎士さま」
ヴィヴィアンヌが横たわっていたベッドのすぐそばには椅子が置かれ、そこにオリヴィエが座っていた。半分眠っているのか、腕を組み、目を閉じてうつむいているオリヴィエの頭はゆらゆらと揺れている。ヴィヴィアンヌがそっと手を伸ばして頭を支えると、オリヴィエは目を見開いて顔を上げた。
「ヴィヴィ!?」
「騎士さま! 私、すごいんだよ。二回も、時間をとばしちゃった」
「えっ、……いや、それは……」
王妃の呪いを解こうとして気づけば夜になり、うまくいったとよろこんで気を失ったら朝になっていた。どちらもそうそう起きることではないだろう。
(そうだ、血が!)
ヴィヴィアンヌは鼻血を出したことを思い出して自分の鼻をこすり、手の甲を見る。そこに血の跡はなく、見れば着ていたドレスも着替えていることに気づいた。
「あれ?」
ヴィヴィアンヌがいつの間にか着替えていた簡素な白いリネンのワンピースの裾を持ち上げると、オリヴィエはわずかに頬を赤らめる。
「あー……えっと、着替えさせたのはメイドだから、大丈夫」
「メイド?」
「女性の使用人のことだよ」
「シヨウニン?」
「あー……この家のことを、色々と世話してくれている人のことだよ」
ヴィヴィアンヌは首をかしげる。城で王妃の呪いを解こうとし、その場で倒れた。だというのに、なぜ別の場所で寝ていたのか。
「ヴィヴィ、ここは僕の家なんだ」
「騎士さまの家?」
ヴィヴィアンヌの疑問を察したように、オリヴィエは彼女が倒れた後のことを話し始める。ヴィヴィアンヌが倒れたのは、急性魔力欠乏症のためだった。
魔力欠乏症は目眩や疲労感、症状が重い場合は意識を失うこともある。今回はヴィヴィアンヌが呪いを解くために短時間で大量の魔力を使ったため、症状が表れてしまったようだ。特に、ヴィヴィアンヌのように一般人とは比べ物にならないほどの魔力を擁しているものは症状が重くなりやすい。治療法は唯一つ、ゆっくりと休んで魔力の自然回復を待つことだ。
「よかった、本当に……ヴィヴィは二日も目が覚めなかったんだ」
「……えっ、あれから二日も経っているの?」
初日は王城の一室でヴィヴィアンヌを休ませていたが、翌日にはオリヴィエが王都に所持している屋敷に移動した。ただ休ませることしかできず、オリヴィエはヴィヴィアンヌが倒れてからずっとつきっきりだった。
「王妃さま、あれからどうなったの?」
「時々、意識が戻っているよ。おかげで少し回復されているようだ。……ただ、完全に呪いが解けたわけではないから、安心はできないけれど……」
「そっか。じゃあ、私、これからもがんばるね!」
あの呪いをどうにかできるのは、魔女の血縁であるヴィヴィアンヌだけだ。後顧の憂いを断つためにも、今後も解呪を試みる必要がある。
(……これからもヴィヴィに解呪してもらうのは、避けられないだろうな……)
王はヴィヴィアンヌを手放しはしないだろう。少なくとも、王妃の呪いが完全に解けるまでは。オリヴィエはわかっていても、意識を失い目覚めなかったヴィヴィアンヌのことを思うと、これ以上無理をさせたくなかった。
「……ヴィヴィ。つらかったら、無理をしなくていい」
「えっ、どうして?」
ヴィヴィアンヌは鼻血を出したり意識を失ったりしたが、それをつらいとは思わなかった。ただオリヴィエによろこんでほしい、その思いだけでがんばった。そしてオリヴィエがよろこんだ、それがなによりもうれしかった。
「……君の体を、一番に大切にしてほしい。僕は……ヴィヴィが倒れたとき……心臓が止まるかと思った」
「えっ」
オリヴィエはヴィヴィアンヌの手を取り、祈るように自分の額をあてる。その手も、その声も震えていた。
オリヴィエの姉である王妃は幸せの真っ最中に呪いが発動して倒れ、そのまま目覚めなかった。オリヴィエはそのときのことを思い出し、最愛のヴィヴィアンヌまでそうなってしまうのではないかと血の気が引いた。その場にいた魔法使いであるヴィルジールがヴィヴィアンヌの容態を確認し、呪いではなく魔力欠乏症だと判断したが、こうしてヴィヴィアンヌが目を覚ますまでひとときも安心できなかった。
「……うん。次は気をつけるね」
ヴィヴィアンヌは呪いを解くのは初めてだったため加減がわからず、制限できずに今回のようなことになってしまった。気をつけなければと思いつつも、ヴィヴィアンヌは少しうれしかった。オリヴィエがこれほどにヴィヴィアンヌを心配し、大切に想っていることを知れたからだ。
「……僕は……ヴィヴィになにもしてあげられていないな」
「えっ、どうして? 私、騎士さまに色んなこと、いっぱいしてもらっているよ」
「……そうだと、いいな」
オリヴィエは顔をあげ、自嘲するかのように苦笑いする。ヴィヴィアンヌがそう言っても、オリヴィエには自覚できるほどのものがなかった。ヴィヴィアンヌに命を救われ、介抱され、こうして呪いを解くために協力を得てとさまざまなことで助けられたが、それに見合うだけのなにかを返せていないと思っている。
だが、ヴィヴィアンヌはそうは思っていない。ヴィヴィアンヌこそ、オリヴィエから十分すぎるものを受け取っていると感じていた。
「騎士さまは、森の外には色んなものがあるって教えてくれたし……」
森の中で一人生きていたヴィヴィアンヌにとって、外の世界の話は衝撃的だった。祖母は外の世界について語ることは多くなかった。話をすれば、ヴィヴィアンヌが外の世界に興味を持ってしまうとわかっていたからだろう。
「空が広いってことを、教えてくれたし……」
ヴィヴィアンヌが森を出て初めて見た空はあまりにも広かった。森の中から見上げるだけではその広さを知ることはなかっただろう。ヴィヴィアンヌにそれを教えたのは、彼女に手を差し伸べたオリヴィエだ。あの一歩を踏み出せたのは、オリヴィエの手があったからだ。
「それに……」
「……それに?」
「騎士さまは……オリヴィエは、ずっと一緒にいてくれるでしょう?」
ヴィヴィアンヌは頬を赤らめ、満面の笑みを浮かべる。それこそが、ヴィヴィアンヌにとってはなによりもうれしいおくりものだ。
ヴィヴィアンヌは森の中で孤独に生きていた。いや、自分が孤独だとすら思っていなかっただろう。だがオリヴィエと共に日々を過ごし、一人では感じられなかったさまざまな感情を覚え、そこから生まれる幸せを知った。
「ヴィヴィ……」
「騎士さま。これからもずっと、一緒にいてくれるでしょう?」
「……ああ、もちろんだ」
オリヴィエは手を伸ばし、ヴィヴィアンヌの頬に触れた。唇を重ねると、ヴィヴィアンヌはうっとりとした表情を浮かべる。
「……騎士さま、もっとちょうだい」
ヴィヴィアンヌは目を閉じ、唇を差し出した。誘われるがままにオリヴィエは唇を重ね、そのまま何度も口づけ合う。どちらからともなく舌を差し出し、甘く交わらせ、部屋の中には二人の息遣いと舌の絡む音が響いた。
唇が離れ、ヴィヴィアンヌは物足りなさに息を吐く。下腹部に手を当て、そこが甘くうずくのを感じながら上目にオリヴィエを見上げた。
「ヴィヴィ……」
「騎士さま、私……」
ヴィヴィアンヌが言葉を続けようとしたその瞬間、それを遮るかのようにぐぅっと腹の音が鳴る。ヴィヴィアンヌは目を丸めて自分の腹に目を向け、オリヴィエも目を丸めて目を向けた。
「へへ……お腹、空いちゃった……」
気恥ずかしそうに笑うヴィヴィアンヌがあまりにもかわいく見えて、オリヴィエは悶える。だが眠っていたこの二日間、ヴィヴィアンヌはなにも食べていないことを思い出してすぐに食事を用意した。
(……あれ?)
ヴィヴィアンヌの目に映ったのは意識を失う前に見た王妃の部屋ではなく、見知らぬ部屋だ。ヴィヴィアンヌが住んでいた小屋よりは遥かに上等だが、城に比べればそれほどでもない。
「……あ、騎士さま」
ヴィヴィアンヌが横たわっていたベッドのすぐそばには椅子が置かれ、そこにオリヴィエが座っていた。半分眠っているのか、腕を組み、目を閉じてうつむいているオリヴィエの頭はゆらゆらと揺れている。ヴィヴィアンヌがそっと手を伸ばして頭を支えると、オリヴィエは目を見開いて顔を上げた。
「ヴィヴィ!?」
「騎士さま! 私、すごいんだよ。二回も、時間をとばしちゃった」
「えっ、……いや、それは……」
王妃の呪いを解こうとして気づけば夜になり、うまくいったとよろこんで気を失ったら朝になっていた。どちらもそうそう起きることではないだろう。
(そうだ、血が!)
ヴィヴィアンヌは鼻血を出したことを思い出して自分の鼻をこすり、手の甲を見る。そこに血の跡はなく、見れば着ていたドレスも着替えていることに気づいた。
「あれ?」
ヴィヴィアンヌがいつの間にか着替えていた簡素な白いリネンのワンピースの裾を持ち上げると、オリヴィエはわずかに頬を赤らめる。
「あー……えっと、着替えさせたのはメイドだから、大丈夫」
「メイド?」
「女性の使用人のことだよ」
「シヨウニン?」
「あー……この家のことを、色々と世話してくれている人のことだよ」
ヴィヴィアンヌは首をかしげる。城で王妃の呪いを解こうとし、その場で倒れた。だというのに、なぜ別の場所で寝ていたのか。
「ヴィヴィ、ここは僕の家なんだ」
「騎士さまの家?」
ヴィヴィアンヌの疑問を察したように、オリヴィエは彼女が倒れた後のことを話し始める。ヴィヴィアンヌが倒れたのは、急性魔力欠乏症のためだった。
魔力欠乏症は目眩や疲労感、症状が重い場合は意識を失うこともある。今回はヴィヴィアンヌが呪いを解くために短時間で大量の魔力を使ったため、症状が表れてしまったようだ。特に、ヴィヴィアンヌのように一般人とは比べ物にならないほどの魔力を擁しているものは症状が重くなりやすい。治療法は唯一つ、ゆっくりと休んで魔力の自然回復を待つことだ。
「よかった、本当に……ヴィヴィは二日も目が覚めなかったんだ」
「……えっ、あれから二日も経っているの?」
初日は王城の一室でヴィヴィアンヌを休ませていたが、翌日にはオリヴィエが王都に所持している屋敷に移動した。ただ休ませることしかできず、オリヴィエはヴィヴィアンヌが倒れてからずっとつきっきりだった。
「王妃さま、あれからどうなったの?」
「時々、意識が戻っているよ。おかげで少し回復されているようだ。……ただ、完全に呪いが解けたわけではないから、安心はできないけれど……」
「そっか。じゃあ、私、これからもがんばるね!」
あの呪いをどうにかできるのは、魔女の血縁であるヴィヴィアンヌだけだ。後顧の憂いを断つためにも、今後も解呪を試みる必要がある。
(……これからもヴィヴィに解呪してもらうのは、避けられないだろうな……)
王はヴィヴィアンヌを手放しはしないだろう。少なくとも、王妃の呪いが完全に解けるまでは。オリヴィエはわかっていても、意識を失い目覚めなかったヴィヴィアンヌのことを思うと、これ以上無理をさせたくなかった。
「……ヴィヴィ。つらかったら、無理をしなくていい」
「えっ、どうして?」
ヴィヴィアンヌは鼻血を出したり意識を失ったりしたが、それをつらいとは思わなかった。ただオリヴィエによろこんでほしい、その思いだけでがんばった。そしてオリヴィエがよろこんだ、それがなによりもうれしかった。
「……君の体を、一番に大切にしてほしい。僕は……ヴィヴィが倒れたとき……心臓が止まるかと思った」
「えっ」
オリヴィエはヴィヴィアンヌの手を取り、祈るように自分の額をあてる。その手も、その声も震えていた。
オリヴィエの姉である王妃は幸せの真っ最中に呪いが発動して倒れ、そのまま目覚めなかった。オリヴィエはそのときのことを思い出し、最愛のヴィヴィアンヌまでそうなってしまうのではないかと血の気が引いた。その場にいた魔法使いであるヴィルジールがヴィヴィアンヌの容態を確認し、呪いではなく魔力欠乏症だと判断したが、こうしてヴィヴィアンヌが目を覚ますまでひとときも安心できなかった。
「……うん。次は気をつけるね」
ヴィヴィアンヌは呪いを解くのは初めてだったため加減がわからず、制限できずに今回のようなことになってしまった。気をつけなければと思いつつも、ヴィヴィアンヌは少しうれしかった。オリヴィエがこれほどにヴィヴィアンヌを心配し、大切に想っていることを知れたからだ。
「……僕は……ヴィヴィになにもしてあげられていないな」
「えっ、どうして? 私、騎士さまに色んなこと、いっぱいしてもらっているよ」
「……そうだと、いいな」
オリヴィエは顔をあげ、自嘲するかのように苦笑いする。ヴィヴィアンヌがそう言っても、オリヴィエには自覚できるほどのものがなかった。ヴィヴィアンヌに命を救われ、介抱され、こうして呪いを解くために協力を得てとさまざまなことで助けられたが、それに見合うだけのなにかを返せていないと思っている。
だが、ヴィヴィアンヌはそうは思っていない。ヴィヴィアンヌこそ、オリヴィエから十分すぎるものを受け取っていると感じていた。
「騎士さまは、森の外には色んなものがあるって教えてくれたし……」
森の中で一人生きていたヴィヴィアンヌにとって、外の世界の話は衝撃的だった。祖母は外の世界について語ることは多くなかった。話をすれば、ヴィヴィアンヌが外の世界に興味を持ってしまうとわかっていたからだろう。
「空が広いってことを、教えてくれたし……」
ヴィヴィアンヌが森を出て初めて見た空はあまりにも広かった。森の中から見上げるだけではその広さを知ることはなかっただろう。ヴィヴィアンヌにそれを教えたのは、彼女に手を差し伸べたオリヴィエだ。あの一歩を踏み出せたのは、オリヴィエの手があったからだ。
「それに……」
「……それに?」
「騎士さまは……オリヴィエは、ずっと一緒にいてくれるでしょう?」
ヴィヴィアンヌは頬を赤らめ、満面の笑みを浮かべる。それこそが、ヴィヴィアンヌにとってはなによりもうれしいおくりものだ。
ヴィヴィアンヌは森の中で孤独に生きていた。いや、自分が孤独だとすら思っていなかっただろう。だがオリヴィエと共に日々を過ごし、一人では感じられなかったさまざまな感情を覚え、そこから生まれる幸せを知った。
「ヴィヴィ……」
「騎士さま。これからもずっと、一緒にいてくれるでしょう?」
「……ああ、もちろんだ」
オリヴィエは手を伸ばし、ヴィヴィアンヌの頬に触れた。唇を重ねると、ヴィヴィアンヌはうっとりとした表情を浮かべる。
「……騎士さま、もっとちょうだい」
ヴィヴィアンヌは目を閉じ、唇を差し出した。誘われるがままにオリヴィエは唇を重ね、そのまま何度も口づけ合う。どちらからともなく舌を差し出し、甘く交わらせ、部屋の中には二人の息遣いと舌の絡む音が響いた。
唇が離れ、ヴィヴィアンヌは物足りなさに息を吐く。下腹部に手を当て、そこが甘くうずくのを感じながら上目にオリヴィエを見上げた。
「ヴィヴィ……」
「騎士さま、私……」
ヴィヴィアンヌが言葉を続けようとしたその瞬間、それを遮るかのようにぐぅっと腹の音が鳴る。ヴィヴィアンヌは目を丸めて自分の腹に目を向け、オリヴィエも目を丸めて目を向けた。
「へへ……お腹、空いちゃった……」
気恥ずかしそうに笑うヴィヴィアンヌがあまりにもかわいく見えて、オリヴィエは悶える。だが眠っていたこの二日間、ヴィヴィアンヌはなにも食べていないことを思い出してすぐに食事を用意した。
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